いい汗かいた
俺たちは先ほど場所が変わったチェックポイントへ移動することにした。だが、あと100メートルという地点まで近づいたとき、またしてもチェックポイントの場所が地図上でスッと別の地点へ移動してしまった。
「これは……私の出番だね」
そう言った朝比奈先輩が、俺に荷物をぽんと渡してきた。
「ちょっと持ってて、岳人くん!」
そしてスマホ片手に、軽やかに林道を駆け出す。
「私も行きます!」
沙羅もすぐさま立ち上がり、俺に自分の荷物を投げ渡す。
「岳人!お願い!」
「ちょ、うわっ……!」
そんなふたりに続くようにして、新井先輩と島田までもが走って行ってしまう。
「おい、俺まで荷物番かよ……」
気づけば残されたのは、俺と鈴木だけだった。
「……で、どうすんのよ」
鈴木が肩をすくめて俺に言う。
「とりあえず、スマホで状況確認してみる」
俺は地図アプリを開いて、仲間たちがどこにいるのかを確認する。
「……ねぇ、それ任せていい?」
鈴木はそう言うと、リュックを開けて爪のメンテナンスを始めた。
「おいおい、のんびりしてんな……」
「走るのはあんたたちの役目でしょ? 私は冷静な判断係」
「いや、それただの荷物番……」
そんな会話を交わしていると、スマホの画面上で、朝比奈先輩と沙羅の位置を示す光点がぐんぐんとチェックポイントに近づいていく。
「……あと50メートルだ」
俺が呟いた直後、チェックポイントのアイコンがまた別の場所へと飛んだ。
「またか……」
「これ、近づいたら逃げるパターンじゃない?」
「……だよな」
その後も、数十メートル以内に近づくたびにチェックポイントが移動している様子が地図に表示される。
「ん? 今度は……」
俺は画面を凝視する。
「……周遊歩道に出た?」
「え?」
鈴木も気になったのか、メンテナンスの手を止めて俺のスマホを覗き込む。
「ほら、これ。チェックポイント、今この太い道の上に出てる」
「……動いてるじゃん、これ。しかも、さっき私たちが歩いてた道?」
「そうなんだよな。なんで今さらそこに……」
そのとき、足音を立てて戻ってきたのは島田だった。
「うわー、完全に置いてかれましたー! 沙羅ちゃんも朝比奈先輩もめっちゃ速くて! あと、帰宅部の新井先輩にも! くそぉ!」
「はは……ま、どんまい」
「情けないわね」
鈴木がクールに言い放つと、島田が泣きそうな顔でこっちを見た。
さらに少し遅れて、今度は新井先輩が汗だくで帰ってくる。
「はぁ……ぜえ……なんだよ……これ……」
言葉にならないうめきに、鈴木が冷ややかに言い放つ。
「そこで寝てなさい、先輩」
「なんか……ひどくね……?」
そのやりとりの最中、朝比奈先輩と沙羅が爽やかな笑顔で戻ってきた。
「いやー、いい運動になったね、沙羅ちゃん!」
「はいっ! やっぱり汗かくって気持ちいいです!」
「で、結局チェックポイントはどうだったんですか?」
俺が尋ねると、朝比奈先輩は首を振った。
「うん、近づいても何もなかったよ、残念ながら」
俺はスマホを見せた。
「今はね、ほら。公園の周遊歩道上を移動してる」
「それって、つまり?」
「道沿いに戻って、追いかければいいってこと」
「じゃあ、行こっか!」
皆が荷物を持って動き始める。
島田はふらふらと立ち上がり、新井先輩はまだ息を切らしている。
「うわ、きもっ」
朝比奈先輩の遠慮ない一言に、島田が突っ込む。
「先輩、ひどいっすよ!」
そんな賑やかなやり取りの中、俺たちは次なるチェックポイントを目指して歩き出した。




