ハクセキレイ
クロマグロの数を当てて次のチェックポイントへ進めることになった俺たちは、もらったコインの裏に刻まれたパスワードをアプリに入力した。すると、スマホの画面に地図が表示され、新たな目的地が示された。
「よし、次は……東エリアの森の奥、バードガーデンか」
「また歩きか〜」と島田がぼやく。
「でも今の達成感すごい!」と沙羅は笑顔を見せる。
俺たちは海浜公園の東側へと足を進めた。さっきまでの道は、20人が横に並んで歩けるほどの広さがあったが、今は人がかろうじて並んで歩けるくらいの雑木林の小道に変わっている。
風が吹き抜けるたび、膝ほどの高さの笹がさらさらと揺れ、雑木林の間からはほのかに潮の香りが混じった。、小道の両脇には低木と小さな野草がちらほら顔を出している。道の途中、双眼鏡を首にぶら下げた人たちが木陰に立ち止まり、バードウォッチングをしている姿もあった。
「チェックポイントまで、あと200メートルくらいか」
「やっとだね、ちょっと疲れてきた」
鈴木の言葉に、朝比奈先輩がにこっと笑う。
「もう少しよ、がんばろうね。ね、智子ちゃん」
「え?……う、うん」
鈴木は少し驚いたような顔をしながらも、素直にうなずいた。
それを見て、俺は心の中で思う。チームメンバーが、少しずつ打ち解けてきた――そんな実感が、ほんのりと嬉しかった。
そんなとき、沙羅が道端に立ち止まり、近くにいた初老の男性に声をかけた。
「こんにちは!何か見えるんですか?」
「おや、こんにちは。ハクセキレイですよ。もうすぐ繁殖期ですから、あれはたぶん、雄と雌……つがいでしょうな」
「わぁ、かわいい……」
沙羅の声に、他のメンバーも足を止め、双眼鏡越しに鳥を見せてもらった。
「本当だ、なんか仲良さそうだね」
朝比奈先輩が感心したように言うと、鈴木も「へぇ……なんかいいもん見たかも」と静かに頷いていた。
その時だった。
「なんだこりゃー!!」
突然、背後から新井先輩の大声が響いた。
その瞬間、ハクセキレイのつがいがバサバサッと音を立てて飛び立っていった。
「ああっ……!」
「今の声で……」
「飛んじゃったじゃないですか!」
一斉に非難の視線が新井先輩に向けられる。
「ち、ちがうって!いや、ちょっと驚いただけで!でもさ、見てくれよ、これ!」
新井先輩はスマホの画面を見せた。
「チェックポイントの場所、変わってるんだよ!」
「え……?」
全員がそれぞれのスマホを確認する。
確かに、数分前まで表示されていたポイントのアイコンが、別の場所にずれている。
「なんでだ? さっきまでこの先だったよな?」
「うーん、なんか仕掛けがあるのかも……」
俺たちは顔を見合わせた。
その後、騒がせてしまった初老の男性に頭を下げ、新たな目的地を目指して再び歩き始めたのだった。




