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俺思う、ゆえに俺あり!  作者: ミスター小町
オリエンテーリング編
20/113

公園のトラウマ

そのコインの裏にはパスワードが彫られており、アプリに入力すると次のチェックポイントが表示された。


 「次は……海浜水族館?」


 「おお、ちょっとテンション上がるな」


 「てことは、ポイントごとに問題出たりすんのかな?」


 「うわ、また変なクイズ来たらどうしよう……」


 メンバーがワイワイ言いながら歩き出す。


 道には、まだ4月末だが初夏の様な陽気が満ちていた。柔らかな陽射しに新緑がきらめき、潮の匂いが風に混じる。ベビーカーを押す家族連れ、犬の散歩をする年配の夫婦、そして同じくオリエンテーリング中の生徒たちの姿がのんびりとした時間を彩っていた。


 水族館に向かって歩いていると、沙羅が俺の隣にぴたりと寄ってきた。


 「……ねぇ、覚えてる? 昔、この公園でバーベキューしたこと」


 言われて、思い出す。あれは、俺が小3で沙羅が小2の頃。

 うちの家族と沙羅の家族、総勢6人でこの公園に来て、近くでバーベキューをした。

 肉を焼いて、スイカを割って。俺と沙羅は、食後にふたりで公園内を探検していた。


 その時だった。急に雷鳴が響いた。


 「雷鳴ったな、雨はまだ降ってないけどこっちに来そうだな。」


 そう言って、大人たちは急いで撤収作業を始めたが——


 沙羅だけが、怖い物知らずのまま、どこかへ走っていった。

 「あぶないから戻れ!」という声も届かず、沙羅は大きな木の方へ。


 「沙羅! 木に近づくな!」


 俺は必死で追いかけた。


 その瞬間だった。

 空が真っ白に光り、雷が、沙羅の目の前の木に直撃した。


 バチィィィン!!


 目の前で、枝に止まっていたカモメが雷に撃たれ、黒い影になって落ちた。


 沙羅は、その場にうずくまり、震えていた。

 おそらく沙羅はカモメが雷に打たれるところを見ていたんだろう。


 「……大丈夫だから!」


 俺は沙羅を抱き寄せた。

 やがて、家族が駆けつけた。


 ——その日以来、沙羅は雷に極端に弱くなった。


 屋内にいれば大丈夫だが、屋外で雷が鳴ると、過呼吸になるほど怯える。

 俺にとっても、忘れられない日だ。


 そして今、その時の木の前に、沙羅が足を止めていた。


 「……懐かしいね」


 俺は無言でうなずいた。

 言葉はなくても、あの日のことは、二人とも覚えている。

 数秒後、沙羅は「行こっか」とだけ言って、また俺たちのチームに戻っていった。


 海浜水族館までは、もうすぐだった。

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