ATRI 水菜萌の後日談〜(ネタバレ注意)
私はATRIの話について、アニメ勢だったので原作を深くまでは知りません。そのため、所々で解釈がおかしい所もあるかもしれませんが、お手柔らかにお願いします。
また、気になって調べたら、どうやら原作では夏生と水菜萌は結婚すると知りました。
そのため、この後日談では、アニメ版の話と最終的に水菜萌と夏生が結婚することを前提に話を進めます。
アニメ版でATRIが夏生の事を水菜萌に託した時、それを断っていた水菜萌が、どういう心境の変化で夏生との結婚に至るのか、そのきっかけとなる部分を少し想像してみました。
改めまして、この後日談はATRIがエデンの管理人になった後の二人についての話です。(特に水菜萌視点で捉えました、そのため、恣意的な展開だと感じる場面や個人的な想像で描いた点も多くなっていると思いますが、ご容赦ください)
また、最後までアニメ(特に8話)を見てからだと、より楽しめるかもしれません。
エデンでATRIちゃんとお別れをし、ナツくんは島に帰ってきた。
水菜萌)帰ってきた後のナツくんは、平気そうにしていたけれど、やっぱりどこか…寂しそうだった。
そして、ナツくんが本土に行く日。
みんな)ナツ〜、あっちでも元気になー!
みんなが最後に声を掛け合う中、私も
水菜萌)ナツくん、アカデミーでの研究、がんばってね。私も、島で私にできることをやっていくから。一緒に頑張ろう!
夏生)水菜萌…、あぁ、ありがとな。
じゃあ、行ってくる。
こうしてナツくんは本土へと旅立っていった。
そして3年が経ち私も20歳になった頃、研究がひと段落ついたと、ナツくんが島に帰ってきた。
水菜萌)久しぶりだね、ナツくん。研究、順調そうで良かったよ。
夏生)あぁ、それなんだけどな…
話を聞いて少しだけ驚いた。ナツくんは世界を救う研究やロケットについてではなく、ヒューマノイドについての研究をしていたのだった。
でも、なんだか納得もできた。
水菜萌)やっぱり、ATRIちゃんのこと…
夏生)…まぁな。これが、今の俺が一番やりたい事なんだ。
水菜萌)うん、良いと思う!私は、ナツくんがやりたい事をするのが一番だと思うから。
はぁ〜、それにしてもナツくんがちょっと羨ましいな。本土でいろんな最先端の知識を学んでるんだよね?私もいつか行ってみたいな。
夏生)…その、よかったら今度、本土に来てくれないか?
水菜萌)えっ…?
夏生)いや、来たいなら、連れて行くもできるって話だ!それと、その…。今日、久しぶりに水菜萌が入れてくれた紅茶を飲んだ時、なんだか安心したんだ。
水菜萌)え、そうだったの!?
夏生)あぁ、本土での生活も3年だし、もう慣れたと思っていたが、やっぱりどこかで寂しいと思っていたみたいだ。
水菜萌)ナツくん…、分かった。その、それじゃあ私も本土に行ってみようかな。みんなの事もあるし、日帰りになっちゃうかもしれないけど。
夏生)そうか、…ありがとう。
こうして、私は時々、本土に行くようになり、ナツくんと会う機会も少しずつ増えていった。
ATRIちゃんのことがある手前、あまり一緒にいすぎるのはどうかとも思ったけど、あの時、私の入れた紅茶がナツくんの安心に繋がっていたと知って、すごく嬉しかった…。ナツくんの役に立てるなら、私は…。
そして、20代になって少しした頃、私たちの関係を大きく変える出来事が起きた。
夏生)悪い、少し研究資料を置いてくるから、そこで待っててくれ。
水菜萌)うん、分かった。
「ピピピ…」突然の電話、確認するとお母さんからだった。両親は本土にいたため、私が本土に行くようになってから、両親との仲も再び良くなってきていた。
水菜萌の母)水菜萌、あなたもそろそろ誰か良い人を見つけなさい。結婚だって考えても良い頃合いでしょ?
水菜萌)[結婚…]うん…そうだね。…、…分かった、それじゃあ。
夏生)今の電話、お母さんからか?
水菜萌)ん、わぁー!な、ナツくん、いつからそこに?
えっ、今来たとこ?良かった…。
夏生)…、待たせて悪かったな。それじゃあ、今日もありがとな。…ほんとにいつも日帰りでいいのか?
水菜萌)うん、私はやっぱり島が好きだから。
夏生)…そうか、じゃあ、もう行こう。そろそろ今日の船も少なくなってくるからな。
「ザザーッ」
外へ出ると、凄まじい大雨が地面を打ちつけていた。
水菜萌)台風…
夏生)すまん、俺が天気予報を見てなかったから。
水菜萌)ナツくんのせいじゃないよ。それに、天気は気まぐれだからね。
夏生)この様子だと、もう少しこっちにいた方がいい。俺は家に帰ればいいけど、水菜萌はどうする?
水菜萌)あっ、私は… 私は両親の家に泊まろうかな。
夏生)そうか、分かった。
水菜萌)[これで…いいよね…私は、ナツくんをサポートできれば、それで…]
水菜萌)じゃあ、まt…
夏生)水菜萌!
水菜萌)わっ、何? ナツくん。
夏生)実は…、少し話したい事があるんだ。だからその、一緒に来てくれないか?
水菜萌)えっ…それって…
[い、一緒にってナツくんの家に?そそ、それってお泊まりってこと!?わ、私、どうすれば…
でも、ナツくんから言ってくるなんて、きっとほんとに大事な話…だよね]う、うん、分かった。
夏生)本当か、じゃあ行こう!
10分後、私とナツくんはビジネスホテルの前にいた。
夏生)二人です。
ホテルスタッフ)二名様ですね。少々お待ちください。
水菜萌)[…まぁ、そうだよね。突然、自分の家になんて連れてこれないよね…]
ホテルスタッフ)お部屋はどうされますか?現在、○と○が空いております。
夏生)じゃあここの部屋で。
ホテルスタッフ)かしこまりました。
なんて感じで、部屋まで来ちゃったけど…
水菜萌) [えっ!?同じ部屋!?]
あの、ナツくん、その同じ部屋…
夏生)悪い、嫌だったか?
水菜萌)嫌…ではない、けど…
夏生)水菜萌? なんか、顔赤くないか? 大丈夫か?
水菜萌)えっ!だ、大丈夫、大丈夫。ちょ、ちょっと汗かいちゃったから、お、お風呂行ってくるね!
「バン!」思わず、勢いよくドアを閉めてしまった。
水菜萌)はぁ〜、[いきなり、色んなことがあって思わず動揺しちゃったけど、私、今、ホテルでナツくんと二人きり…なんだ…]
軽くシャワーを浴び、少し落ち着いた。
水菜萌)お風呂、上がったよ。先に入っちゃってごめんね。
夏生)あぁ。…じゃ、じゃあ俺も少し汗流してくる…
水菜萌)ん、うん… [ナツくん、今、私をみて目を伏せたような…。もしかして意識してくれてるのかな…]
夏生)待たせたな。
水菜萌)うん、私は大丈夫だけど、その、話っていうのは…?
夏生)あぁ、それか…俺も色々考えたんだが、その…うまく言えないな。結論から言うと…俺とパートナーになって欲しいんだ。
水菜萌)!? え、パートナー!? そ、それって…
「ズキッ」その時、やはりあの子が頭に思い浮かぶ
水菜萌)…ごめん、嬉しいけど、ナツくんにはATRIちゃんがいる。だから私は、ナツくんとそういう関係には…
夏生)…確かにな。俺の中で、ATRIはとても大きな存在である事は今後も変わらないし、俺はあいつを迎えにいってやらないといけない。でも、それを踏まえた上で、水菜萌に支えて欲しいと思っているんだ。
水菜萌)支える…あっ[ATRI)私がいなくなった後、夏生さんをお願いしたいのです]ん…、でも、ナツくんはATRIちゃんのことが好き…なんだよね? 私はその気持ちを大事にして欲しいの。
夏生)好き…か。確かに俺はATRIが好きだ。
そして、その好きは、水菜萌に対する好きとは同じではないと思う。
だが、ATRIがいなくなって、俺が本土に行ってから、俺のそばには水菜萌がいてくれただろ。…あっ、そうか…これもATRIのおかげかもな。
水菜萌)えっ?ATRIちゃん?
夏生)あぁ、少しの間だったが、あいつと一緒に過ごした時間を経て、気づいたんだ。いつのまにか当たり前に感じてしまいがちだが、自分のことを考えてくれる人の存在というものがどれだけ大切なのかを。
そして、水菜萌は、今の俺にとってそういう存在なんだ。好きとは違うのかもしれないが、一緒にいると心地がよくて、安心する…。だから… !?
おい、なんで泣いて…
水菜萌)ふぇ…?
意図せず涙がこぼれ落ちる。
水菜萌)あれ、私、なんで泣いて…
「ぎゅうっっ」[胸が…締め付けられる感じ、そっか… もう、吹っ切れたと思ってたけど、私…、まだナツくんのこと…]
水菜萌)ねぇ、ナツくん、ちょっとだけならいいかな…?
私はナツくんの隣に座り、肩に寄りかかる。
[せっかくナツくんが勇気を持って正直な気持ちを伝えてくれた。それなら私も…]
水菜萌)ナツくん、実は私…ATRIちゃんがナツくんと一緒にいる時、少し胸が苦しくなったりもしてたんだ。でも、二人は私なんかとよりも、特別な関係で結ばれていると思って、私はナツくんと一緒にいたいんじゃなくて、一緒に頑張っていたいんだって思ってたの。
夏生)…水菜萌
水菜萌)でも、今、ナツくんが私と一緒にいる時間が心地いいって言ってくれて、やっぱりすごく嬉しいって感じたの。
[あの時、ナツくんが初めて本土に行っちゃった時、私は泣かなかったし、何て声をかけるべきかも分からなかった。でも、今なら…]
水菜萌)フーッ…[自分の心に正直に…!]
水菜萌)…ナツくん、私はナツくんのこと、好きだよ。
頭が良くて、かっこよくて、みんなのために時間を動かそうと頑張って…、口では色々いうけど、ほんとはすごく純粋な所も…
夏生)…水菜萌、ありがとう…。だが、ATRIのことは…
水菜萌)忘れられないけど、いいのかって?
もちろんだよ。ATRIちゃんは私にとっても大事な友達だし、忘れるなんてできない。それに私はナツくんのそういう所も含めて…好き…だから。
水菜萌)…でも、ATRIちゃんには、なんていえば…
夏生)ふっ、別に内緒にする必要なんてないだろ、必要になったら、話せばいいんだよ。あいつだって、「夏生さんは隅に置けませんね」とでも言って笑ってくれるさ。
水菜萌)ナツくん… [謝らなくていいのかもしれないけど…ごめん、ATRIちゃん。結局、私はナツくんと…でも、ナツくんを任せてもらった以上、できる限りのサポートは続けてきた。それは、これからも変わらないよ。]
私は覚悟を決めて、ナツくんの方を向く。
ナツくんは、急に意識したみたいで、咄嗟に目を逸らした。
水菜萌)ふふっ、空、晴れたね。
夏生)ん…あぁ、もう落ち着いたみたいだな。
その、今日は話に付き合ってくれて、ありがと…
「うわっ!」
急に立ち上がったせいか、ナツくんは義足のバランスをくずしてしまったようだ。
「ドンッ」
水菜萌)んっ
夏生)ってて、悪い、大丈夫か 水菜萌…!
ナツくんは偶然にも私を押し倒していた、とってもドキドキしたけれど…もう何もできない私ではない。
水菜萌)ナツくん…
夏生)[不思議だ。近くで互いに目を合わせると、言葉を交わしていないのに、言葉だけでは伝えきれないものまでも伝わってくる気がする。心…か]水菜萌…
水菜萌)んむっ
…ナツくんとキスをした。胸が熱くなって、思わず涙が溢れ出る。
[ATRIちゃん…、きっとナツくんにとってATRIちゃんはすごく大切な存在で、心の支えなんだと思う。それに、私だけだったら、彼を支えられなかったし、私は、ATRIちゃん以上の大きな存在にはきっとなれない。
でも、それでも今は、ナツくんの近くにいられるというだけですごく幸せで…だから、ATRIちゃんの使命が終わるその時まで…私がATRIちゃんに代わって、ナツくんの足になる!そして、私は私なりにナツくんを支えていきたいって思うよ…!]
「ピピピッ」ナツくんのスマホに通知が来たようだ。
夏生)ん…? あっ!水菜萌!最後の船が来れることになったみたいだ!
水菜萌)あっ、そっか…
夏生)早くしないと、最後の船も行っちゃうぞ。
水菜萌)…うん、行こっか!
外の夜風は、なんだか少し冷たく感じたけれど、私の気持ちは晴れやかだった。
水菜萌)ねぇ、ナツくん。手、繋いでも…いいかな。
『水菜萌の後日談』fin〜
-My Dear Love-