Ep.3 family「家族」
青年「大丈夫. . .大丈夫だから」
青年は少女を抱え、よしよし頭を撫でて窓のほうへ歩く。
青年「おっさん、朝食できたよう」
窓の外を見ると一人の大柄の男性が薪を斧で真っ二つにしていた。
大柄な男は頷いた後に持っていた斧を木に刺し、家の中に入った。
少女は大柄な人を見て、少し怖いと感じつつも、少し心が軽くなったのを感じた。
男は2メートルを超えており20歳後半の見た目で、その瞳には空洞と言っていいほど瞳孔が黒で染まっている。いや、無いのかもしれない
男は無言のまま椅子に座り、皆が椅子に座ったのを確認し、食前の祈りを始めた。
全員手を合わせる。
父よ、
あなたのいつくしみに感謝して
この食事をいただきます。
ここに用意されたものを祝福し、
わたしたちの心と体を支える糧と
してください。
わたしたちの主イエス・キリストによって。
アーメン。
青年「アーメン」
少年「エーメン」
少女「メン」
青年「それじゃ、頑張った分、たくさんお代わりしてね」
青年はにっこり笑って、みんなの皿に料理を乗せた。
少年「モグモグ、おいしい!」
少女「ふぅふぅ、ハムハム、おいしい!」
大柄な人「. . . .ん 」
少年と少女はあまりのおいしさに食べつくしてしまった。
少年少女「おかわり!」
青年「はい、どうぞ」
子供たちはそれからも何度もお代わりして、完食しました。
「ふう、おなかいっぱいだね。」
青年はそう話すと、少年と少女が顔を合わせる。
今まで、左目が隠れてて気づけなかったが、少女の失ったはずの目がそこにはあった。
少年「すごい、目の色が違う」
少女「め?」
自分の目を触ってみる。
「わっ」
少女はなぜだか知らないが勝手に目が治ったと思いこんでいた。
その二人の会話を眺めていた青年が口を動かす。
青年「その目はね、昔の魔法使いが作った魔法の目だよ」
少女「まほう?」
青年「不思議な力を持っているってことだよ」
青年は少女の記憶を思い返させないように、魔法という言葉を使ってわかりやすく説明してくれた。
少年「ああ!ぼく知ってる!ロストテクロジーでしょ?」
青年「惜しい、ロストテクノロジー」
少年は残念そうに下を向いた。
青年「その目はね、おっさんがつけてくれたんだよ」
そして、大柄な人の方を見る。
大柄な人「. . . . 」
大柄な人は食器を片付け、皿を洗い始めた。
少年は大柄な人の隣に移動した。
少年「ぼくがやる日だよ」
大柄な人は無表情のまま手を止めて、また仕事をしに家を出ようとした。
青年「無口で照れ屋さんだったっけ?」
大柄な人は無言で青年の目を見つめた。
青年「うっ」
その時、少女が慌てて大柄な人の方へ歩み寄った。
「おじちゃん、ありがとう!」
そう少女は感謝を伝えて 大柄な人の足に抱きついた。
おじさんは無表情のままだったが、ほんの少し肩が緩んだのを少女は感じ取れた。
「エヘへへ」
少女は嬉しそうに、テーブルに戻ってお片付けの手伝いをした。
少年「ちょっゆっくり!」
パリィィンっと皿が割れる音が家中に響く。
そんな音に目もくれず大柄な男は外に出る。
言葉を零す
「家族. . . 」
昔、ある好奇心旺盛な女性のことを思い出す。
「. . . . 」
大柄な男は自分の手首につけてあった腕輪にそっと口づけした。
つづく
次回
EP.4 puppet「傀儡と呼ばれる破壊者」