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灰色の世界で少女は色を灯す  作者: ハイバール ・レ
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Ep.1 little journey 「ヒナ鳥の小さな旅」

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄エピローグ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

とある研究室に放送が流れる。

「No.K-890、No.J-999の脱走を確認、直ちに捕獲部隊は出動せよ。」


薄暗い研究室の中にひとつだけ奥に照明が点らされていた。その下には一人の白衣を着た男が研究資料を片手に先ほどの放送で頭を抱えている様子だった。

「ハア、困ったな〜」

「999はともかく890は生き残れないな〜」

「二人とも貴重な実験体なのにどうしたもんかね〜」

「まあいい、999に890が受けるはずの実験をさせるか」

「あ、でも耐えれるかどうか...」

頭を抱えながらもどこか不気味な笑みを(こぼ)した。そして、誰かに向かって問いを掛けた。

「君ならどう耐える?質問に答えたら生かしてあげなくもない」

男の後ろには土台に四肢を頑丈に固定された痩せ細った中年男性がいた。その男性の目は骸と化している。

枯れた声で必死に男に懇願した。

「こ...ろ...せ」

その応えに数秒間無言を貫いた後ゆっくりと男性の方を向いた。

「耳まで聞こえなくした覚えは無いんだけどなー」

男は冷徹な眼差しを男性に向ける。

男性は何かを悟った様でその痩せ細れた体で涙を静かに流した。

そして白衣の男は意味深な言葉を口にする。

「燃やそう」

それを聞いた男性は今際の際で抗った。しかし骨と皮膚しか残ってないような体じゃどうすることもなかった。その結果男性は恐怖に駆られ心臓発作を起こした。

男性が息を引き取った事を確認した白衣の男は手に持っていた資料をデスクに置いて、狂気的な笑みを浮かべながら研究室から去った。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

極秘資料

通称:魔女

身長 : 1.83m / 年齢 : 不明 / 所有武器 : 不明

称号 : 破壊者

経緯 : 子供を中心に攫い人身売買を行う。基地を壊滅。*****と*******の真相を知る。



資料にある***は先程の白衣の男によってかき消されている。もうひとつ資料の下に手紙があった。

 ̄ ̄ ̄ ̄手紙 ̄ ̄ ̄ ̄

私の親愛なる友人へ

この手紙が着く頃には恐らく私はもうこの世界にはいないだろう。だから最後に頼みたいことがある。私の子供を君に預けたい、もし出来ないと言うのなら君の手で楽に"殺してやって欲しい"

この世界で子供が一人で生きて行く事がどれ程残酷で無謀な事なのか、君がよく知っているはずだ。もしも、俺の子が私の事に着いて聞かれたら"ロクでもないクズだった"と返せばいい。まだまだ話したいことはあるが最後に君と出会えたこと心から良かったと今も思ってる。また同じ世界で会う事を願っているよ。


✕✕✕より


この手紙は不思議なほどに綺麗な状態を保っている。まるで今新しく生産された紙と錯覚させるほどに純白である。

この手紙はどことなく呆気ない気がする。


扉の奥から大勢の足音が鳴り響く。

「Dは直ちに被検体の部屋を調べろ」

「了解」


足音は徐々に遠ざかって行く。

そして、果てしなく壮絶な物語が始まった。






 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄第一話 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


とある森の中


一人の少女がいた。

安らかに眠っているようだ。

少し灰色がかった服を来ており、髪は少女の足まで届くほど長く所々跳ねている。もふもふで周りの景色に溶け込むような灰色の髪をしている。


少女は夢を見ていた。

「. . . . .」


誰かの優しい声が夢の中で囁いている。

「. . . . . . . っ」

「. . .ぁさん」

少女が寝言とともに目を覚ました。ぼやけた世界に閉じ込められた瞳は水の様に美しく透き通っている。


周りを見渡すと冷たい岩石で囲まれていて、少女の手元近くに木製のボウルを見つけた。

少女はそのボウルをじっとみつめ始め、何か思い出せそうで思い出せない。寝起きというのもあったせいなのか少女は一点を見つめる。視線の先には灰色な木々とその間に一本の細い通り道があった。少女は無意識に誰かを探しているようだった。しかし、思い出せない。彼女は立ち上がりやがて一歩一歩と歩み始めた。そして薄暗い洞窟を後にする。


その時の不穏な空気が洞窟の静けさにより一層際立った。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


その頃、少女は初めて見る外の世界に不気味に感じてるものの好奇心の方が(まさ)った。空は薄暗い灰色の綿飴で覆われ、似たような葉が生えていない木々が森の奥まで続いていた。一言で説明すると統一して辺り一帯が灰色の景色で広がっている。歩いていると、道の真ん中に、何かを見つけた。


そこには白い枕みたいな愛くるしい動物が横に伸びていた。


初めて見る生き物に目を輝かせて、好奇心のあまりぴょんぴょん飛びながら目の前まで急接近。我慢できず白いお友達の体を突つく。


その白いお友達は柔らかい少女の指の感触に驚いて木影に隠れて森の奥へと行ってしまった。少女は無邪気に走って追いかけたけど足の裏側が痛くて走るのをやめた。


少し進んで行くとそこには小さな川があった。さっきの白いお友達は恐らく喉が渇いていたのだろう、川の水を飲んでいる。少女は何やらまた目を輝かしているようだ。どうやらその白いお友達の横に沢山の動く白い枕をみたのだろう。

白い枕達は抑えきれない声を聞き取って少女の存在に気付いた。白い枕達は走り出したと思ったら少女に対し大勢で飛び掛かった。急に飛び掛けられた少女は後ろに(つまず)いてしまい、仰向けになりながら白い枕達に埋もれてしまった。

少女はくすぐったいのか笑みをこぼす。


時は過ぎ、いっぱい遊んだ少女と友達はやがて遊び疲れて眠くなってきた。眠りに付こうとした。しかし、彼女は通った時の道に違和感を感じた。ここへ来る途中を思い返す。


ゆっくりと歩いてきたからここの景色を鮮明に覚えているから分かる。木が増えている?

少し不気味に感じつつ、友達も遅れてその異変に気付く。一本だけ周りと同じ灰色だけど何かが違った。白いお友達がその一本の異様な木に回り込んでいた時、近づくごとに気づいてしまった。


それは木ではない”ナニカ”であることに。遠くから見ると他の木とほぼ変わらない。しかし、近づく度に違和感が増してゆく。なぜなら木というより動物の皮膚に近い。急いで仲間と少女にこのことを伝えようとしたが手遅れだった。木に擬態していた”ナニカ”が動いた。そして少女と前にいた白いお友達以外の白い枕達は”ナニカ”の大きな手に捕まってしまった。そして、怪物は自分の頭の上にまで上げて落とした。下からは見えないが上から見ると怪物の頭上には穴があった。そこに枕達が次々と飲み込まれていった。


少女と生き残った一匹のお友達はすでに走っていた。遠くへ、 安全な住処(すみか)を探して。

その”何か”は物足りなかったらしい。やがて、1番体の大きかった少女を追いかける。少女は必死に逃げて、走ったが距離は縮まる一方だった、、、どんどん近づいてくる足音に堪えていた恐怖が一気に少女の心を侵食する。

「いやあああ!」

”ナニカ”は知性を持っているのかわからないが少女と散歩しているように見えたのは気のせいだろうか?”ナニカ”はその気になればいつでも少女を捕らえられる。なのにそうしなかった。単に気まぐれなのか?それとも、、、いずれにせよ恐ろしい光景に変わりない。少女は必死に走っていた。

痛みも忘れて動かしていた足が遂に限界に達し反射的に引っ込んでしまった。そのせいでバランスを崩して転んでしまった。


少女はこの瞬間初めて死を悟った。そしてその”何か”は少女を逃がすわけもなく終わらせようとした。少女は恐怖のあまり目をつぶって手をかざす。

「うっ」

バチンッという爆音とともになにか地面をジリジリと削るような音が響く。


いつまで経っても”何か”の唸り声が響くだけで何も起きない。目を開けると怪物は太い糸に絡まって身動きが取れず地面と平行になっていた。怪物は罠に引っかかったようだ。


怪物の姿に困惑するも助かった。その場から必死に離れようとしたけれど、足がもう動かせない。絶望という感情が胸の奥底から溢れ出す。少女の体全体が恐怖に支配された。恐怖という歯車だけで腕を動かして木の裏まで這いつくばろうとする。


そしてその時がやってくる。


後ろのほうに何かかすかに聞こえてきた。

それは聞き覚えのある声だった。少女は心を落ち着かせたかったのかもしれない。

もう一度振り返ったその瞬間。



「グシャ」



と鈍い音が森中に広がる。少女は何が起こったのか理解できなかった。そして徐々に左目が何も見えないことに気付く。”何か”の細長く尖った指が少女の左目を突き刺さっていた。


”ナニカ”は手を引っ込める。その指の先には血に覆われた球体が刺さっていた。

「ああああああ!!!!!!」

少女は痛みとともに酷く混乱する。


聞き覚えのある声はあの白い友達の声だった。しかし、その声は怪物の頭にある穴に飲み込まれた白い枕達の声だった。


怪物が追いかけてきたとき声は何も聞こえなかった。だが不運と言うべきか、怪物の頭が少女の方向を向いていた。白い枕達は必死に助けを求めて鳴く。少女は自分の左目に冷たい空気が侵入してくるのを感じ取った。少女の体は疲労で頭が真っ白で荒い息を吐く。

少女は何もかももう限界だった。

「や、やめてよお、、、うう」

か弱い声を震わせながら朧げな景色の中、少女は必死に木の裏まで這いつくばった。少女はやっとの思いで木に隠れた。


怪物は唸り声を上げながら暴れる。少女は必死に両手で声を抑えていた。もうここにはいないよと伝えるために。

そして彼女の意識が段々と遠のいて行く。

やがて少女は静かに深い眠りに着いた。





数分もしないうちに大きな人影が現れる。そして、その人影に気付いた”ナニカ”は急に咆哮をあげ必死にその場から逃げようと暴れ始めた。その人影は暴れている怪物を見るやいなや持っていた何らかの武器で”ナニカ”をたったの数秒で殺した。人影は立ち去ろうとしたが、ふと右方向の木陰に何かが揺れるのを見た。目を凝らすと、灰色の髪が風に揺れている。近づいて確認すると、そこにいたのは四歳ほどの少女だった。


目から血が流れていて、頬を伝って土で汚れた服を赤く染めている。人影はその光景を目の当たりにしてこう口にした。

「巣から落ちたヒナ鳥. . . 」


そう呟きながらも、彼は少女のかすかに動く唇を見逃さなかった。微かな呼吸音が耳に届く。

「. . . ぅぅ」

かすかに息していることに気付いた男はその少女の目に包帯を巻き持ち上げる。男の脳裏に女性が浮かんだ。そして男は考え直して背中で抱えることにした。その場から離れて深い森の中へと消え去った。

つづく

小さい頃に妄想から始まった物語です。頭の中で映像として流れているので文字にして小説にしました。

まだまだ未熟な表現しかできないが努力を重ねます。続きは楽しみに待っていてください。

完成度60%


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