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【書籍化】運良く人生をやり直せることになったので、一度目の人生でわたしを殺した夫の命、握ります  作者: 狭山ひびき
運命共同体の夫が、やたらと甘いです

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帰還とそれから 3

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 取り調べの結果、ファーバー公爵は六年前にマグドネル国が起こした戦争にも加担していたらしいことがわかった。

 というより、最初から、ファーバー公爵が練った計画だったらしい。

 もろもろ細かな理由はあったが、要約するとファーバー公爵の目的はルウェルハスト国の王位の簒奪だったそうだ。


 まず、マグドネル国をそそのかしルウェルハスト国を攻めさせ戦争に発展させ、混乱に乗じてルウェルハスト国内での自身の権力向上を図る。

 アラベラをルーファスに嫁がせたのも、ポーションの製造販売を独占状態に持って行ったのも、すべては自分のルウェルハスト国内での地位を確固たるものにするためだった。

 マグドネル国との戦争が終結したのちも、密かにマグドネル国と連絡を取り続けていたという。


 もともとファーバー公爵が連絡を取り合っていたのはマグドネル国の王ではなく宰相で、最終的に国王と王太子を切り捨て第一王女を擁立する方向で話が進んだのだというが、このあたりについてはマグドネル国王と王太子が殺害されたという話をアルベルダの魔術の手紙で聞いていたのである程度想像がついていた。


 ファーバー公爵の最初の計画では、戦争が終結したのち、嫁いで来たヴィオレーヌを蹴落とした後でアラベラをルーファスの正妃につけ、折を見て国王を殺害。ルーファスの摂政として実権を握りつつ、アラベラとルーファスの間に跡継ぎができたタイミングでルーファスを殺し、中継ぎの王として自分が立つつもりだったそうだ。


 だが、嫁いで来たヴィオレーヌが想定外にルーファスに受け入れられていたため、当初の計画に支障が出た。


(まあ、受け入れられていたというか、生殺与奪の権利をわたしが握っちゃったから、やむを得ずというか、そんなところなんだけど)


 はたから見たら、本当のところなどわからない。

 周りの人間にはルーファスがヴィオレーヌのことを気にかけているように見え、もっと言えば第二騎士団の騎士たちもヴィオレーヌに心酔していた。

 このままヴィオレーヌの好きにさせておくのは問題だと、ファーバー公爵は計画の変更を余儀なくされる。


 考えたファーバー公爵は、ダンスタブル辺境伯領とマグドネル国の国境付近に残し、何かが起こったときの手ごまにすべく密かに支援を続けていた残党兵たちの存在を思い出した。そして、ルーファスとヴィオレーヌをダンスタブル辺境伯領へ向かわせるように匂わせ、一度王都から引き離す。

 その隙に王都で騒ぎを――すなわち、王妃ジークリンデの毒殺騒ぎを起こし、犯人をヴィオレーヌに仕立て上げることでヴィオレーヌの立場を地に落とすように画策する。


 ジークリンデについては、死んでくれていたらなおよかったが、生きていようといつでも始末できるのでどうでもよかったとファーバー公爵は言ったそうだ。

 それを聞いた国王が激怒し、ファーバー公爵に殴り掛かったため、大変だったとルーファスが肩をすくめていた。


(でも、お義母様の毒殺未遂事件でも、わたしの立場を危うくすることはできなかったのよね)


 ジークリンデが生きていたことが幸いしたともいえる。

 大司祭がヴィオレーヌが王都に帰るまでにジークリンデを持たせてくれていたおかげもあっただろう。


 戻って来たヴィオレーヌ自らがジークリンデを癒し、その力を見せつけたことで、国王はヴィオレーヌへの疑いを解いた。

 大司祭の働きもあってせっかく広めたヴィオレーヌの悪評が払拭されていく中、逆に実行役に使っていたメイドが捕らえられてアラベラの侍女までたどり着いてしまう。

 幸いにして迂闊なところのあるアラベラは計画に関与させていなかったため、公爵家の指示だとまではたどり着かれなかったが、アラベラは軟禁状態になり、一気に立場が悪くなった。


(そこで、本当ならばもっと計画的にことを進めるつもりだったけど、全部をすっ飛ばしてマグドネル国と共謀してルウェルハスト国に攻め入った。戦後でまだ立て直っていないルウェルハスト国の兵力を考えると、ファーバー公爵軍とマグドネル国軍をあわせた場合、力の差は五分五分。後手に回る分、ルウェルハスト国の方が不利で、慌てふためいているうちにダンスタブル辺境伯領は陥落。そこを足掛かりに一気に王都を攻め落とす作戦だった、と)


 ヴィオレーヌは戦略的なことはよくわからないが、ルーファスに言わせると悪くない作戦で、実際、勝率は高かっただろうと言っていた。想定外の因子――ヴィオレーヌがいなければ、だが。

 ファーバー公爵の敗因は、ヴィオレーヌの力を正しく理解していなかったことだろうとルーファスは言った。


 それは買いかぶりだと思うが、確かに、ヴィオレーヌはともかく、モルディア国がマグドネル国に攻め入るとは想定していなかったとは思う。

 モルディア国とともにマグドネル国を挟み撃ちにし、さらにヴィオレーヌの魔術でマグドネル国軍を蹴散らした結果、びっくりするほどあっけなく、二度目の戦争が終結したというわけだ。


「ヴィオレーヌをマグドネル国の王女のかわりに俺に嫁がせると決めた時点で、負けが確定していたんだ」


 とルーファスは言ったが、そんなことはないだろう。

 一度目の人生で、ヴィオレーヌはあの日、ルーファスの指示で殺されていた。

 おそらくそのあとに戦争が勃発したはずで、その結果次第では、ファーバー公爵の思惑通りに進んでいた可能性もある。

 少なくとも、人生のやり直しがなければヴィオレーヌは魔術も聖魔術も剣術も身に着けていなかったので、あの日運よく生き残れたとしても、今の結果にはなっていない。


 だが、それを言ったらきりがないし、結果を見れば丸く収まったので、これでいいのだ。

 マグドネル国との同盟を破棄したモルディア国は、正式にルウェルハスト国と同盟を結ぶことが決まった。

 これで堂々とお互いの国を行き来できるようになったので、ヴィオレーヌも、時間が許せばいつでも家族に会うことが可能になった。


 何はともあれ、ファーバー公爵家の計画は破綻し、もうじき公爵とその家族の処刑が確定するという。

 ファーバー公爵家派閥の貴族にも、計画への加担具合によって厳しい処罰が下るそうだ。


 最初にマグドネル国がルウェルハスト国へ攻め入った時から考えると六年以上。


 長きにわたる戦争が、ファーバー公爵捕縛により、本当の意味でようやく終結したのである。






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