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残党兵たちへの違和感 3

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 ミランダに髪を乾かしてもらい、ソファでゆっくりとハーブティーを飲んでいると、ルーファスが入浴を終えてバスルームから出てきた。


「なんだ、休んでいてよかったのに」


 視線でベッドの方を指されて、ヴィオレーヌはどうしてか少し落ち着かない気持ちになる。

 ルーファスが、がしがしとタオルで髪を拭きながらヴィオレーヌの隣に座った。

 ミランダがルーファスの分のハーブティーも用意して、気を利かしたのか、一礼して部屋から去って行く。


「昨日はろくに寝ていないんだ。少し休め」


 残党兵の拠点で、小一時間ほど仮眠は取ったけれど、あの程度では疲れは取れない。

 横になりたい気持ちは山々だが、同じベッドを使うと思うと妙に緊張した。

 これまでも同じベッドで休んでいたというのにおかしなものだと自分でも思う。

 ハーブティーをちびちび飲みながら躊躇っていると、ルーファスがちょっとだけ意地悪そうな顔をして口端を持ち上げた。


「連れて行ってほしいなら、抱えて連れて行ってやるぞ」

「け、結構です!」


 そんなことをされれば、心臓が壊れかねない。

 ヴィオレーヌは慌ててハーブティーを飲み干すと、そそくさとベッドに向かって布団の中にもぐりこんだ。

 こうなれば、ルーファスが来る前に寝入ってしまうに限る。

 そう思ったのだが、疲れているのになかなか寝付けない。


 髪を拭き終えたルーファスが隣にもぐりこむ気配がして、ヴィオレーヌはびくりと肩を震わせた。


「そんなに緊張しなくても、疲れている妻に手を出すほど鬼畜じゃないぞ」


 笑いながら、腕を伸ばしたルーファスがヴィオレーヌを抱き寄せる。

 危うく悲鳴を上げかけて、寸前のところで飲み込んだヴィオレーヌが目を白黒させていると、彼女を腕の中に抱き込んだルーファスの手がゆっくりと後頭部へ回された。

 ヴィオレーヌの紫がかった銀髪を、ルーファスの大きな手が透くように撫でていく。


「さすがに夜通し歩き回ったのは疲れたな」

「そう……、ですね」


 頭を撫でられ、ぽんぽんと背中が叩かれる。

 その優しいリズムに、ヴィオレーヌの瞼が重くなった。

 体が鉛のように重く感じる。


 考えてみれば、森の中を歩いて残徴兵の拠点まで向かい、戦って、崖から落ちて大怪我をし、また森の中を歩き回った。ほとんど休む間もなく、夜明けとともにダンスタブル辺境伯城へ向かってまた歩き出したのだ。肉体の疲労は相当なものである。

 さすがにポーションで肉体疲労までは回復しないので、こればかりはゆっくりと休むしかない。


 湯上りの、少し高いルーファスの体温が気持ちよくて、意識がだんだんと遠のいていく。


 眠りに落ちる前、何か温かくやわらかなものが、額に触れたような気がした。





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