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ありふれたタイムスリップ――告白のやり直し

作者: チョイハチ





「突然ごめん。君との結婚生活を続けるか、終わらせようか迷っているんだけど、相談に乗ってくれないだろうか?」




「は? え? どういうこと?」



「いや、突然の事で驚くのは無理もないと思うのだけど、俺の話をじっくり聞いて良く考えて欲しい」



「……えっとぉ」



「うんうん、言いたいことはわかる。だけどまずは俺の話を聞いてほしい。いきなりの電話でびっくりしていると思う。それに現状も全く理解できていないと思う」



「……」



「だけど、落ち着いて聞いてしっかりと判断してくれ。君と俺との結婚について」



「……」



「沈黙は肯定と捉えて。まずは()()()()から始めようか」




「……そうですね。突然()()()()()()人から電話が掛かってきて混乱しているので自己紹介お願いします」



「あぁもちろんだよ――」





 俺の名前は戸倉修二、三十歳。どこにでもいる()()()()()()()だ。



 そして、今電話越しで絶賛混乱中の彼女は将来俺の嫁さんになる、旧姓吉田咲良。



 俺達は二十二歳で出会い、二十五歳の頃に結婚し一人の子供に巡り会えた。


 だけど、子供が生まれてからは夫婦間の関係は冷えて行った気がする。お互い子供を第一考えてるのだが、色々な点で衝突してしまうようになり、気付けば子供を通して会話するようになっていた。



 もちろん、二人で過ごす時間もあってその時は仲良くできるのだが、すぐに些細な事で喧嘩になってしまう。


 お互い子供を愛している、だから離婚という決断はくだせない。



 ……だけど、子供の為と言いつつその子供の前で喧嘩をしてしまうこの状況。……これでいいのだろうか? そんな自問自答が何日も何日も続いていた。



 そんなある日、お互いのイライラが溜まってしまい口論に、幸い子供が寝た後だったのだが……実のところそれが幸いだったかはわからない。子供がいないからとお互いいつもより口汚く言いあってしまった。



 どちらからともなく、最終ワードの離婚という言葉を出てしまっていた。


 

 イライラの頂点に達してしまった俺は、ベットに潜り込み、もうどうにでもなれ! と、毛布を顔まで被った。



 あぁ、昔はもっと可愛い奴だったのに……もっと優しかったのに……なんで今はあんないイライラする事ばかり……あいつはなぜあんなに変わってしまったんだ?


 いや、きっと俺もそうなんだろう……



 子供がいなかったら……本来であれば、口にするのにも憚られるワードではあるが、子供がいなければ本当に離婚してしまいたい。今俺は本気でそう思っている。


 だけど、なんの理由もなしに離婚などしたら男親である俺が親権を取れる可能性ほぼない……


 離婚なんてできない。愛する子供と離れるなんて無理だ……



 ……やっぱり明日謝ろう。いつものように謝っていつの日か昔のように戻れるまで頑張ろう。

 

 今はお互い余裕がないだけで、もう少ししたらきっと――




 はぁー、()()()あの人に告白できていたらもっと別の未来になっていたのかな? それだけが俺の人生の後悔……でもあの人と付き合って結婚してたら今の子供に会えないのか……



 はぁー、んなこと考えても無駄だ……とりあえず寝て明日謝ろう……




 そうやって、明日の自分に全てを託して寝る。と……過去へ飛んでいた!



――



「修二! 起きなさい! 早く起きな!」



「ん? ……んん? ……母さん? ……え?」


「あんたは、また寝ぼけて!」


「ええ? なんで母さんが俺の家に?」


「はぁ? なにが俺の家よ! この家はお父さんとお母さんが働いて建てた家でしょうが! あんたは本当に寝起きが弱いんだから。お母さんがさっき言った言葉も覚えていないでしょう?」



「は? え……えっと」


「今日は入社式でしょ? さっさと支度して行ってきな! あんたも今日から社会人だよ!」



 えええぇぇぇ! どういうこと? 今日から社会人? は? ゆめ?


 今日からってことは、八年前に戻ってる? リアルドリーム? なんなのこれ?


 俺は促されるままスーツに着替えて家をでた。


「……あんた、なんかスーツ着慣れてる感があるね? 何かしら? こないだ来たお父さんの部下の人と同じ雰囲気感じるわ。でもあの人三十前後って言ってたし……ちょっとあんたいきなり老けすぎじゃない?」



 そりゃそうだ……八年間ずっとスーツきて仕事してたんだから……


 とりあえず出発して、八年間働いている会社の入社式に新入社員としてやってきた。


 矛盾Max……


 そして、通勤途中で気付いた……



(これ、絶対にゆめじゃねぇ……どう考えてもゆめじゃねぇ)


 だって全然覚めないし、風は冷たしコーヒーはうまいし。めっちゃリアル……



 これはあれか? タイムスリップってやつ? いま流行りのタイムリーパー? ガチで?


 

 人生のやり直し?



 ……いや待て。一旦落ち着こう……どう考えても過去に戻っているけど、まずは落ち着いて一日過ごしてみよう……


――




 ガチのやつぅうううう! これはガチのタイムスリップゥううう!


 まじか? どうする? どうしよう?


 なにする?


 宝くじ? 競馬?  

 いや、宝くじの番号なんかわからんし、そもそもギャンブルしないから競馬もわからん


 株か?


 いや、株はなんとなくはわかるが、原資がねぇ、後回しだ。



 なら――

 

 ……告白しに行くか



 俺の人生の後悔と言えば、当時仲が良くいつも遊んでいて、好きだった飛鳥に告白できなかったことだ。


 自意識過剰ではなく告白していたら付き合えていたはずだ。


 だけど、距離という……遠距離という敵にビビってしまって告白できなかったのだ……今思えば本当に情けない…… 


 飛鳥が福岡に、そして、俺が東京に就職が決まった。飛鳥が福岡へ行くときも見送りに行った。その時が最後のチャンスだったのに俺は結局何も言えずにわかれてしまった。


 その後疎遠になり、咲良と出会い結婚。



 もし! もしも……もし飛鳥と結婚してたら? そんな妄想をしてしまった事は一度や二度ではない……最低な妄想だとわかっていても、度々思ってしまうのだ……



 もっと幸せだったのではないか? と……


 だけど、今は過去へと戻ってきた。


 ならやり直してもいいんじゃないか?


 飛鳥はこの時代では、福岡に行ったばかりだ……連絡はすぐに取れる。


 ……帰宅したら電話しよう



――



 帰宅し、どう言おうか色々考えた、考えて考えて、もう一度考えてを繰り返すといつの間にか朝になっていた……ビビったがまじで朝になっていた……


 結局それから二日ほど経ち、本当に電話しようと思った時今更になって、愛する子供の事に気付く。


 なぜか当たり前のように飛鳥と結婚しても、息子の圭介が産まれると思っていた、だけどそれは絶対に違う……だって圭介は咲良との子供で、仮に飛鳥と結婚して子供が産まれるなら全く別の子供が産まれるんだ……


 なら、告白なんてできない。圭介は失えない……それは絶対にむりだ



 やはりこのまま普通に過ごして咲良と出会って結婚しよう……今の記憶があればもっと上手く付き合えるはずだ。そうだ……そうしよう。給料の全額をこれから上がる有名所にブッコミまくれば、俺は大金持ちになってるはず。

 んでそのうち、咲良と出会って



 ……


 ……


 ……


 あれ? でも、待てよ? 俺いつ咲良と出会ったっけ? 出会いのきっかけは覚えてる。


 職場の先輩に合コンに誘われて付いて行って、そこで出会った。それから二人で合うようになって付き合ったんだ。



 だけど、それがいつの合コンかわからん! ちなみに俺はその先輩に毎日のように合コンに誘われていた。だけど、気乗りしなくて断ってたんだ。だがその日は、仕事の合間に言われて急いでいたから思わず、わかりました! って言ってしまったんだよな……その時来てたのが咲良で、話が合って……



 やべぇまったくいつだったか覚えてない。完璧なタイミングで咲良と会って結婚しないと圭介に会えないのに……


 ……完璧なタイミング?


 ん? あれ?


 ちょっと待てよ? 全部が同じじゃないと圭介に会えないって事か? あれ? そうなるよな?



 医学的な事はわからんけど、当たり前の話、圭介のもとになる精子と卵子って一度しかないってことだよね? そしてそのタイミングで性生活をしてないと圭介は産まれないよな? その日その時だけって事よね? 俺と咲良の子供は圭介って決まってるわけないもんね? だから二人目は圭介と違う子供が産まれるわけで、精子と卵子が違っていたら別の俺達の子供が産まれるってことだよな?



 え? そんなの無理じゃね? 映画や漫画ならその通り圭介が産まれそうなものだけど、これから圭介が産まれるまでの何年間か同じように生活して同じタイミングで性生活するなんて絶対に無理だぞ?


 それに自慰行為だって、関係してくるよな?


 

 幸い、入社してからの二週間程は慣れない業務のせいで一人でしてなかった事を記憶してるけど……



 この先のことなんて全く覚えてないよ! 


 それに、食生活とかも関係してた気がする。


 睡眠だって……



 あれ? これ詰んでない? タイムスリップした時点で圭介に会えなくなってるよね?



 マジかよ……んじゃ咲良と結婚しても圭介の兄妹? が産まれるって事か?


 圭介には会えないのかよ……


 俺はそれから更にニ日程悩み、咲良に電話することにした。



――



 当時の携帯に咲良の番号はないが、何度も掛けた番号だ、流石に覚えている。


 そして混乱中の咲良に自己紹介し、俺がタイムリーパーだと伝えた。


 普通そんなこと信じられるわけない。



 だが、結婚前一緒にタイムスリップを題材にした映画を見た時


「もし、俺がタイムスリップして咲良に会いに来た場合、どういったら俺が本当にタイムリーパーだって信じられる?」


 なんて質問して、お互いが自分しか知らない……これを知っていたらタイムリーパーだと信じられる情報を言い合っていたのだ。


 そして、俺はその全てを咲良に伝えた


「……噓でしょ? 今言ったの、本当に私しか知らない情報なんだけど。絶対に誰も知らない事だけ……」




「あぁ、そうだろうな……俺も情報としては知っているけど、意味は全くわからない単語の羅列だから」




「そりゃそうよ……今言ったの全部私の妄想の中での事なんだから……絶対に誰も知らないもの……」



「そっか……んじゃこっからは俺がタイムスリップしてきたことを前提として聞いて欲しい――」





 それから俺の考察、推論を話して聞かせたい。咲良は真剣に聞いてくれていた。


 時折頷き、納得しているようだった。


 全てを話し終え、一息つくと咲良はこう聞いてきた




「あなたは私と結婚して幸せになれなかった?」





 胸がズキッとした……どう言えばいい? 幸せじゃないと言えば、間違いなくうそになる……



 かと言って、大喧嘩した事を、ギスギスしていた頃を思い出せる俺からすると……



 離婚を考えてしまったあの時の気持ちを考えると……





「幸せだったよ……咲良の事を本気で愛していた……その気持ちに噓はない……だけど、喧嘩ばかりの日々に、どうすれば仲良くなれるか? どう伝えれば円満になるか? 愛する我が子の前で喧嘩してしまう俺達は……なんて考える日々に少し疲れていたのかもしれない……」




「うん……」



「咲良との結婚を後悔したことはないんだ……君のおかげで圭介という宝物に出会えた……本当に感謝している……」



「うん……」



「だけど、俺がタイムスリップしてしまった事で圭介に会える事はほぼ間違いなく不可能になってしまった、もちろん咲良と結婚して子供が産まれれば圭介の妹か弟はできるだろう……だけど、その愛すべき子供を圭介と比べてしまったら? そんな事を考えると怖くて仕方ない……」



「うん……」




「だから、どうしていいかわからなくなってしまって、君に相談してしまったんだ……最低な相談でごめん……」



 咲良は少し考えさせて。と言って数分無言になった。




 ……



 最低だ…… 


 



 ……俺は本当に最低だ、なにも知らない咲良からしたら……俺の事をまだ知らない咲良からしたら……将来そんな事を思うような旦那と結婚したいなんて思わないだろう……




 それを見越して相談してるようなもんだ……


 咲良に決断してもらって、咲良の責任にして欲しかったんだろうな……



 クソだ……


 

 いつもそう……重要な決断は咲良に任せていた……




 そう考えると、そんなクソな俺から咲良を解放してあげられるとも考えられるのか? 

 

 ……いや、その考えだって自分を正当化しようとしているだけだ


 そうこうしているうちに咲良が口を開いた



「どうなるかわかんないけど、その飛鳥って人に告白してきなよ。その後悔があるから、タイムスリップなんて起きたんじゃない? まずはそれを片付けてきたら?」



「……」



「もしさ……もしも本当に私とあなたが結ばれる運命で、飛鳥さんて人と付き合ったとしても、結ばれる運命ならさ……どっかで出会うんじゃない? そして、圭介君が産まれるんだよ……きっとね」


「あぁ、そうかもな……」


「いってらっしゃい……頑張ってくるんだよ」




 俺は涙に震える声で、行ってくると言って電話を切った。





 そうして、少し気を落ち着かせて飛鳥に電話した。




――



 心の中でぐるぐる思考が回転し続けるなか、飛鳥はすぐに電話にでてくれた。


「もしもし……」



 久々にこの声を聞けた。

  

 久しく感じていなかった。甘酸っぱい感情が沸き上がってきたのがわかる。


「あ、俺だけど」


 声がうわずる。


「うん……」


 次はなんていう? 元気だったか? 仕事はどうだ? いや……そんな事いう必要はないか。


「あのさ――」「()()なの」


「え?」


 予想外の、というか、全く意味のわからない言葉に戸惑う俺に飛鳥は更に続ける。


「私も()()()()()していたの……」


 え? 何年も? まだ離れてからそんな時間経ってないだろ



「なんで()()()、あなたからの告白を待ってしまったのか……なんで自分から告白しなかったんだろうってずっと後悔していた」


 は? 待って待ってどういうこと?

 もはや何も理解できず言葉を忘れている俺に飛鳥は続ける。


「あの時付き合ったとしても、どうなったかなんてわからないけど、それでもずっと後悔してたの……やり直したいって」


「え? ええ?」


「え? あ……もしかしてそういう電話じゃなかった? 私に告白とか、そういうのじゃない? え? ……じゃあなんで私記憶があるの……」


「え? いや違う! けど……そうじゃなくて……それに記憶がって……」


「良かった……でもどういう意味? 私との事で後悔があったってことだよね? それをやり直す為に()()()()()()()させてもらったんじゃないの?」



 タイムスリップさせてもらった?

 どういう……


「飛鳥はなんでタイムスリップの事知ってるの?」


「は? え? 修二なに言ってるの? そりゃ関係者になってるんだから知ってるよ……関係者には記憶があるって言ってたじゃない」


「……誰が?」


「誰がって()()でしょ?」


 は? 神様? どういう事? マジで意味がわからん……

 

 俺が本気で理解していないことを、理解した飛鳥は一から説明してくれた。


 ある日突然タイムスリップした。

 目を覚ますと神様がこう言った。

「タイムスリップした記憶がある人はこの件の関係者です。戸倉修二が八年前に告白出来なかったことを後悔してたのでタイムスリップさせてあげました。告白する権利があるのは戸倉修二のみ、期限五日間。関係者の方は少々お付き合いください。その間はボーナスタイムだと思って好きに過ごしてください。戻った時に反映できる事は反映させてあげます。戸倉修二がどのような決断をしようとも、五日過ぎるとその決断を基にした未来にもどります。改変が起こった場合、改変がされたこと、改変された過去を理解し、その後の生活が始まります。何もなければそのままかな? まぁ……タイムスリップした記憶はあるけど元に戻れます。矛盾点やらなにやらは神様が頑張って処理しますからご心配なく。ご都合主義です(笑)。それでは良いタイムスリップを」


 と、目覚めと共に言い残したという。


「え? それじゃあ、飛鳥は全部の記憶があるって事?」

「うん。だけど、私に告白の権利はなかったから修二からの連絡をずっと待ってた……」



 んん?


「修二……聞かせてほしい……」


 ちょっと待て……ちょーっと待って……関係者って誰だ?


 この件についての関係者って誰だ……


「飛鳥……その前に教えてくれ」

「なに?」


「この件の関係者って誰?」


「んっと、それは神様は言ってなかった。けど……修二ってさ、今付き合ってる人とか……奥さんとかいる?」


「あ、あぁ……」


「……だったらその人とかじゃないかな? 結局その人の未来にも関わってくることでしょ? それとか、他には――」


 それ以上は耳に入らなかった。


 なら、咲良が関係者じゃないわけない。


 なのに、なんで咲良は俺を見送ってくれたんだ? しかも知らない振りしてまで……俺が飛鳥を選んだらどういう未来になるかわかってるはずだよな? なのになんで?


 なんにしても子供に……圭介に会えるなら、これ以上は進めない……


「……飛鳥、すまない」


 俺は全ての事情を説明した。

 俺がタイムスリップを理解していなかったこと、結婚して子供がいる事、全て……


「そっかぁ……うん、うん。……わかった。……逆にそれでも私に告白するような人じゃなくて良かった。私の好きだった人がそんな最低な人じゃなくて良かったよ……これで私も心残りがなく進める……ありがとう……咲良さんと仲良くね」



 飛鳥()泣いていた。


 いつかの再会を約束し電話を切った



――


 そして、また咲良へと電話をかけた



「あれ? どうしたの? 告白の結果報告?」


「……ちげーよ、……なんで黙ってたんだよ」


「……お、全て理解したか」


「咲良もタイムスリップした事知ってたんだな?」


「そりゃもちろん。関係者ですからね」


「なんで黙ってたんだよ?」


「だってあんた、自分だけがタイムスリップしたと思ってたじゃない?」

「あぁ、だって神様の声なんて聞こえなかったからな……」


 そうなのだ、俺は神様の声を聞いていない。その点がおかしい


「だと思ったよ。あなたって寝起き滅茶苦茶ボケてるじゃない? 起きてから十分以上は全然覚醒しないし、一応会話したりしてるのにその記憶ないでしょ?」


「うっ……」


「だから、神様の言葉も覚えてないんだろうなって気付いた。なら、知らないままにしてあなたの好きなように……後悔しないように行動させてあげようって思ったの」


「……だけど、その結果圭介が産まれない未来になったかもしれないだろう? 咲良はそれで良かったのかよ? ……まぁ知らなかったとはいえ、俺が言えたことじゃないけどさ……」


「そんなの絶対に許容できない」

「ならなんで――」


「あなたが、告白しようとしたら、その人とタイムスリップの話になるのは自然な事でしょ? だからその時あなたは私もタイムスリップしたことに気付く。……それはまた圭介に会える未来を選択できるって事、逆にあなたの決断次第で圭介に会えなくなってしまうという事を理解できたはず……」


「うん」


「そこで、飛鳥さんを選ぶ程バカじゃないって思った。万が一にも圭介に会えない未来をあなたが選択するとは思えなかった」


「だけど、万が一が起こっていたら……」


「そんなあなただったらこっちから願い下げだよ!」


「そしたら圭介は……」



「はぁー、神様が言ったのよ? あなたの決断を基にした未来になるってね? そして改変が起きてもそのことに関しては記憶があるって言ってたわ。なら、圭介の記憶があるって事よね? そんな状態で圭介のいない未来に戻ってみて? 私絶対に後悔する。あなたを止めなかった事を……その後悔はあなたの告白ができなかったとかいう、そんな()()()()()なもんじゃない、そんな後悔でタイムスリップできるなら私の後悔でタイムスリップできないわけがない。いや……絶対にしてみせるわ……まぁだから問題ないのよ」



「……ははは、確かにそうだね。俺のこんなしょうもない後悔でタイムスリップさせてくれるなら、咲良の後悔でタイムスリップできないわけがないよな……」


「そういうこと、だから、例えあなたがどんな決断をしようとも、圭介に会えない未来にはならないって思ってたのよ」



「ごめんな……」


「いいのよ。私だってキツくあたってたこと沢山あったし、あなたの本音が聞けて良かったって思ってる……」


「またやり直させてくれるか?」


「もちろん……」


「ありがとう……」

 

「……だけど、条件がある」


「何?」


 その条件は可愛いものだった。


 庭の草むしりを月一回必ずする。

 咲良の趣味の家庭菜園を手伝う。

 今まで家の掃除は月に四回で各自二回ずつとしていたが、今後は咲良が一回俺が三回にする。

 交渉中のお小遣いは上昇は現状維持の二万円。

 

 

 こんな感じだ。ちなみに我が家の庭は本当に狭い。だから趣味の家庭菜園だってたいした広さじゃないから手伝ったとしてもたかが知れてる。それに家自体も広くないから掃除にしても一回担当が増えようが大した手間にもならない。

 お小遣いもまぁ、上がればいいなぁ程度の交渉だったから別に良い。


 そんな事で今後円満に過ごせるなら安いもんだ、そう思い返事をすると、俺にも神様の声が聞こえてきた


「約束の五日過ぎたので未来に戻す」


 と、至ってシンプルに



――



 目を覚ますと、横には圭介が寝ていた。


 俺はあふれ出す感情を抑えられず圭介を強く抱きしめてしまった。


 幸い目を覚まさなかったが、すぐ横で目を覚ました咲良は、さっと起き上がり部屋の外へ。窓から外を眺めてにやりと笑った


「約束は守ってよ?」


「あぁもちろん」


「計画通り……じゃあ、修二()()()()()()()()()()を見に行きましょう? 掃除やら草むしり、家庭菜園が忙しいわよ?」


「は?」



 俺はまたもや理解不能なまま()()()()()()()を出る。


 ん? 見慣れない? 家に戻って来たのに見慣れないってどういうこと?



「あれ? なんか家違くない? めっちゃ豪邸になってない? それに庭とかクソ広いんだけど? あれ? 良く見たら家庭菜園なんてレベルの物じゃなくて、畑みたいなものが見えますけど?」



「ふふふ」

「咲良……さん? どういう事ですか?」


「私も過去に戻ってダラダラしてたわけじゃないのよ。神様がボーナスタイムって言ってたし、反映できることは反映させてあげるって言ってたから――」


「言ってたから?」


「自分にメッセージを残したの、絶対に買うべき株とか暗号資産、まぁ要するに将来大金持ちになる為の方法よ。幸い自分から自分への書置きだから素直に信じて実行したみたいね。さすがは私だわ。……うんうん、だんだん記憶が補完されてきた。やっぱり私の予想以上にがんばってくれたようね」

「あれぇーなんか俺もあれからの記憶が補完されてきたな……」



 ……おぉーさすがしっかり者の咲良様。

 

 えげつない金持ちになってらっしゃる




「ということは?」

「そう……ということは……」



「この大豪邸であの約束を果たさないといけないってことぉ!?」



「イエス」


「……こんだけ金持ってるんだし、家政婦さんとか、業者さんに頼んだ方が……」


「約束は? ほぼ浮気と言って良い様な事を許してあげているというのに、その約束を反故にするってことぉ? そう言ってるの?」


「……いえ、そのような事は……」


「そうよねぇ? あなたが、告白するのに期限ギリギリまでグダグダしている間に、私は未来の生活の為に一生懸命がんばって蓄財ノートを書いていたのよ?」



「はい……」


「なら……」



「はい! がんばりますよぉお!」


「それで良い。……あ、ちなみに年収は億超えしてるけど、約束通りお小遣いは現状維持だからね? プッ……年収億越えなのに、お小遣い二万円の旦那……」




「……ノォォオオー」



 飛び切りのしてやった顔&ドヤ顔に何も言えない俺は素直にしたがい。約束を果たすのだった。




 きっとこれからも沢山の喧嘩をするだろうが、もう後悔をすることはないだろう。




 ……ないはず。










「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひ感想、ブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!していただけると自分でもビックリするくらいモチベーションが上がります! 


ちなみにですが、コメントなどを初めて貰った時は、飛び跳ねる程嬉しかったです


ぜひよろしくお願いします!




明日十九時過ぎに新作を連載スタートします、応援お願いします。絶対に完結するので安心してご覧ください。




主人公がブリっ子に一目惚れしてドタバタするラブコメです。


実体験を基に書いてます(笑)


絶対に当事者にはわからない程、いじってますけど。


是非、本作の左上の作者名”チョイハチ”をタップして下さい。明日の十九時以降の作品欄に新しい作品が載ってるはずなので読んでみてください。



お待ちしております。

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