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弱虫運び屋の右腕は殺人オートマタ  作者: 久芳 流
最終章 英雄の右腕

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第74話 凱旋パレード

 サムエルさんの処罰が決まった後。

 どんなに喚いても効果がないと判断したサムエルさんは逃げようとしたが、


「ダメっすよ」


 ピーターさんが押さえつけた。


「自分がしでかしたことなんですから……最後まで責任取りましょうよ」


 冷静に言っているように見えるが、


「イ、イタイ……ッ!」


「みんなの方がもっと痛いんすよ!」


 その本心は怒りで煮えたぎっていた。

 そりゃ仲間がサムエルさんのオートマタのせいで悲惨な目に合ったんだから当然といえば当然だ。

 その迫力にサムエルさんも口を噤み、ようやく観念したように抵抗しなくなっていった。


「帰るぞ」


 そういうわけでシルヴィアさんの指示のもと、撤退の準備が開始され、災害級の機械獣討伐作戦はこれにて終了となった。



 帰りは行きとは違いだいぶゆっくりだった。

 負傷者も多くいたし、回復に時間をかけたのもある。

 機械獣の襲撃から避けるため大回りのルートを選んだし、荷物もかなり多かったからそれで足取りが自然と重くもなっていた。

 とはいえ、行きの頃よりかは緊張感はない。

 そればかりか夜には酒を呑んでは踊りのドンチャン騒ぎ。

 いくら災害級の機械獣を倒せたとはいえ、多くの死者を出したのだ。

 まさかこんなにバカ騒ぎしてもいいものか、と呆然として見ていたのだけど、真っ赤な顔をしたピーターさんが言っていた。


「レオくん! 何してんだよ〜……呑まないのか?」


「なんというかびっくりしちゃって……。

 そのいいんですか? こんな……」


「不謹慎だってか?」


「あ、いえ……はい」


「ははは! レオくんは正直だなぁ! でも良いんだよ!

 こういう時こそ騒ぐんだ。俺たちは偉業を成し遂げた。

 それなのにしょぼくれてちゃ逝ったあいつらに失礼だ」


「!!」


「だから呑んで騒いで踊れ! それが俺たちなりの追悼だ。

 レオくんこそ今回の作戦の立役者なんだからさ!」


「いや、でも僕、お酒はちょっ――」


「ほらほら! 一気一気!」


 有無を言わさず呑まされた。


 そういう宴会が毎夜続けられた。

 そしてシルヴィアさんもエースさんもその宴会には参加していた。

 シルヴィアさんは酒に強く、樽いっぱい呑んでも酔うことはなかった。

 派手に笑い、時には大泣きし、翌朝にはグロッキーなのに、帰りの夜は常に馬鹿騒ぎを続けた。


 そんな馬鹿騒ぎをしていたのもあって、ようやくエルガスの壁が見えたのは3日後だった。

 5日くらいしか経っていないけど、なんだかすごい懐かしい。

 エルガスの空気が恋しい。


「レオ〜!」


「!!」


 エルガスの入り口近くでそう手を振る女性の姿が目に見えた。

 その揺れる金色の髪にキツネのような細い目を大きくしてこちらに笑みを浮かべている。

 その横に小さな背を目一杯、伸ばして元気に手を振るハツラツな顔。


 その2人が見えた瞬間、僕は自然と走り出していた。


「キャリ姉! ニコちゃん!」


 ちょっとしか経ってないのにすごく久しぶりに感じる。

 でも帰ってくるなんて連絡していなかったのに。


「どうしてここに!?」


「どうしてって……シルヴィアに連絡したからだよ」


「……え?」


「ほら。レオ達が野営地に向かう時、シルヴィアから連絡先貰ったでしょ?

 災害級の機械獣が倒されたってニュースを聞いた時、やったねって連絡したんだよ。

 そしたら今日帰ってくるっていうから待ってたんだ」


 確かに。何かあった時のためにってシルヴィアさんがキャリ姉に野営地の連絡先を渡していたな。


「それにしても聞いた以上に派手にやったね……」


 キャリ姉は僕の右腕を見る。

 その話も聞いていたのか。

 僕は右肩を優しく触る。


「うん……ライトが頑張ったんだ」


「そっか」


「――ッ!」


 その瞬間、急にキャリ姉が抱きついてきた。

 身体を締め付けるように強く、正直苦しい。


「な、何ッ!? く、苦しいよ……キャリ姉……」


 突然のことで何がなんだか。

 真意を聞こうと背中をポンポンと叩き解放してほしい旨を伝えるが、一向に離してくれず。

 少し離れようともがいていると、


「!」


 キャリ姉の手が優しく僕の頭に触れた。


「がんばったね」


 あぁ。そうだ。


「う……く……」


 僕はもう帰れたんだ。ライトのおかげで。

 僕は生きて帰ってこれたんだ。


「うぅ……」


「あれ? おにいちゃんどうして泣いているの? どこか痛むの?」


 なんでもないよ。ニコちゃん。

 エルガスの空気を吸って、キャリ姉やニコちゃんに会えて気が緩んだだけだから。


 キャリ姉が優しくこう言った。


「おかえり」


「……た……だい……ま……ぁあ……」


 キャリ姉の優しさを僕は素直に受け入れた。

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