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弱虫運び屋の右腕は殺人オートマタ  作者: 久芳 流
最終章 英雄の右腕

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第70話 堕ちる社長はニヤリと口角を上げる

 落ち着いた砂漠の中心で砂埃が舞っている。

 中心にいる張本人(サムエルさん)はピクピクと白目を剥きながら身体を痙攣させている。


「さ、戻るぞ」


 シルヴィアさんは刀を納めて振り返る。

 討伐隊としてはケーテン砂漠に人を放置しておくわけにはいかないが、シルヴィアさんもピーターさんもその原則を見ぬふりして帰る支度をしている。

 僕もそれに倣う。

 そもそも討伐隊でもない僕は助ける義理はないのだから。


「ふ……」


 だが。


「ふ……ざける……な……」


 彼はしつこくも起き上がった。

 鬱陶しそうにため息を吐き、シルヴィアさんは刀を握る。

 まだ反省し足りないのか、と。

 今度は本気でお灸を据えてやらなければ、と。


「まだ何か用か?」


「エルガスの運搬全てを担うフェデックの社長を痛めつけてただで済むと思うなよ……!

 今後、討伐隊の荷物は全て拒否だ!

 武器や防具、薬など全ての物資が足りなくなっても我が社は一切協力しない!

 そして訴訟もしてやる!

 法廷で完膚なきまでに叩きのめしてやる!

 示談も認めん! 謝罪してきたとしてももう遅いならな!」


 捲し立てるようにそう叫ぶサムエルさん。

 その醜くも痛ましい姿を見て、そしてその後ろを見かけてシルヴィアさんは静かに刀から手を離した。


「ふん。そうなっても討伐隊は問題ないよ。

 そもそもフェデックにはもう頼っていないしな。

 だから――」


「あれ? ぼっちゃんじゃないですか」


 サムエルさんの背後からそう呼びかける声が聞こえた。

 屋根のない四輪駆動車とそれに乗った5人の男女がいつの間にか現れていた。

 車のタイヤは砂漠や荒れ果てた地でも対応できそうなオフロードタイヤ。

 そして乗っていた5人はどこか風格があり、身につけている装備の質が高いことが伺える。


 それもそのはず。

 僕も彼らのことは知っている。

 それよりもなんでここに。という疑問の方が大きい。


「!? お前ら……どうして……?」


 サムエルさんも目を丸くして彼らを見る。

 運転をしていた男――青髪を逆立て頬がこけている――がサングラスをあげてサムエルさんを見る。


「どうしてって……これからエルガスに帰るところなんですよ」


「……!?」


「災害級の機械獣が出現したでしょ?

 そのせいで数ヶ月も隣町のジェイクで足止め食らってて。

 ようやく討伐されたって知らせがあったからさっそくエルガスに帰ろうってことになったんすよ」


 まさかその道中でぼっちゃんにお会いできるとは、と男は爽やかな笑みを浮かべつつ会釈していた。

 そんな姿にサムエルさんは唖然としていたが、やがて何かに気がついたようにニヤリと口角を上げた。


「ふふ……ははは! どうやら形勢が逆転したぞ! シルヴィアぁ!

 お前ら、降りてこい!」


 サムエルさんに呼びかけられ、訝しげな顔をして5人は顔を見合わせる。

 だが、やがて討伐隊の支部長がいることに気がつくと5人は車を降りて、サムエルさんの横に立った。


「運び屋会社フェデックの役員の登場だ!」


 勝ちを確信したようにサムエルさんは手を広げ、5人を見せつけた。

 そう。彼らはフェデックの役員だった。


「どうも。いつもお世話になっております。討伐隊支部長様」


 そしてフェデック随一の超有能な運び屋五人衆でもあった。

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