表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弱虫運び屋の右腕は殺人オートマタ  作者: 久芳 流
最終章 英雄の右腕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/80

第69話 支部長の怒り

 うずくまるサムエルさんの前にシルヴィアさんは立った。

 頭を抱えて動いていないサムエルさん。

 そんな姿をシルヴィアさんは冷たい眼で見下ろしていた。


「生きているな? サムエル」


 言葉は疑問形ではあるが、これは確認でも何でもない。

 ただの事実を淡々と述べるようにシルヴィアさんの口調も冷たい。


 しばらく黙っていたサムエルさんだが、


「…………暴行罪だ……」


 こうしていても埒が明かないと思ったのか、起き上がりそう叫んだ。


「これは暴行罪だ! シルヴィアさん! なぜレオを捕まえない!? 現行犯だぞ!」


 シルヴィアさんを見上げるサムエルさん。

 興奮したように切れた口を大きく開け、血を飛ばしながら怒号を上げている。

 けれどその訴えは、僕はおろかシルヴィアさんにも届いていなかった。


「顔を見てみろ! 血だらけだ! 服も汚れまみれ! この服がいくらすると思っている!?

 早く捕まえて、弁償させろ! 慰謝料もふんだんに払わせないとこれは済まされないぞ!!」


「無理だな」


 興奮するサムエルさんに一蹴するシルヴィアさん。

 だがその言葉はサムエルさんにとっては油のようで、


「はぁ!?」


 更に顔を真っ赤にさせて叫ぶ。だが、シルヴィアさんは意に介していない。


「あいにく我々は警団ではないからな。罪を犯した者を捕まえる義務はないよ」


「!! あんたらは我が社に恩があるはずだ!」


「知らないな。仇はあるがな」


「忘れたのか!? 我が社のオートマタをここに派遣しただろう!

 あぁ。そうだ。災害級の機械獣を倒せたのはそのおかげだろう? だから――」


()()()?」


「ッ――!」


 シルヴィアさんの眼が鋭く光り、サムエルさんの言葉が詰まる。


「サムエル。貴様。おかげと言ったか?」


「あ……あぁ! そうだ。我が社のオートマタの力で機械獣を倒せたんじゃないか。

 見てみろ! これが証拠だ」


 サムエルは手を目一杯広げ、ケーテン砂漠を指し示した。


「災害級がきれいさっぱり消えている。きっと我が社のオートマタが粉々にしたんだ。

 オートマタに内蔵されているビデオを見ればはっきりする! 見事な迎撃能力だっただろ?」


「はぁ……」


 口角を大きく上げて笑うサムエルさんに、シルヴィアさんは全ての空気を吐き出すように大きなため息を吐いた。

 その異様なまでの呆れ顔にさすがのサムエルさんも怯んだ。


「な……ど、どうした?」


「愚か愚か、とは思ってはいたが、まさかここまでとは、な」


「はぁ?」


「粉々になったのはむしろ貴様のオートマタの方だよ」


「!?」


「災害級の砲撃で一発で壊れた。それにそのせいで討伐隊にも多大な損害が出た。

 死者も出て、災害級の機械獣討伐に()()()の助けも必要になったんだ」


 そう言ってシルヴィアさんは横目で僕を見た。

 災害級の機械獣の砲撃により野営地が悲惨な目にあった。

 たらればだけど、もし野営地の機能が崩壊しなければ、確かに僕が出る必要がなかったし……ライトも死ぬ必要はなかった。


「レオのことを暴行罪というなら、貴様も公務執行妨害といえるんじゃないか?」


「う、嘘だ。そんな……僕の優秀なオートマタが? そんなことあるはずがない!」


「本当のことだ。優秀どころか役立たずだったよ。いや、役に立たないも言い過ぎだな。

 何もできないわけじゃなくて、状況を悪化させることはできたんだからな。

 嘘だと思うなら自慢(オートマタ)のビデオで確かめてみるといい。

 バカな貴様でもわかるほどの損害を招いたんだからな」


「…………まさか……そんな……」


「そんな貴様に恩なんて当然あるわけがない。むしろ大切な仲間を殺した罪で私刑にしたい気分だよ」


「ヒィ……ッ!」


 カチッとシルヴィアさんは刀の柄を掴む。

 その瞬間、素人でもわかるほどの殺気がこの場を支配する。

 向けられた張本人はたまったもんじゃないだろう。


 一瞬にして冷や汗をかき、後ろに下がっている。


「ま、待て! こんなところで僕を殺すつもりか……!?」


「ふん。貴様の命などこれっぽっちも欲しくはない。

 だが……これくらいは仕方がないよな?」


「も、目撃者がいるんだぞ! そんな場で僕を痛めつけるのか?」


 そう言って僕やピーターさんを見るサムエルさん。

 でも忘れたのかな。


「いいや。見てないっす」


 ここにはサムエルさんの味方は誰もいないことに。

 ピーターさんはそう言ってそっぽを向く。


「これから誰がどうなるっていうんですかね?」


 ピーターさんも討伐隊。

 サムエルさんのオートマタによってそれなりに被害を受けたし、仲間もやられたんだ。

 味方になるはずがない。


「僕もわかりません」


 そして僕も。


「!? 待て待て待て! あのオートマタにもカメラが仕込んであるんだ!

 ビデオを確かめればわかるぞ!」


「ピーター」


「了解っす」


 サムエルさんの言葉を受けて、シルヴィアさんは一言そう命令すると、ピーターさんはオートマタ目掛けて狙撃。

 オートマタは一発で核を突かれたのか、すぐに爆破した。

 その行動の速さにサムエルさんは唖然とした表情を見せる。


「これで誰も何もわかりません」


「シナリオはこうだな。

 討伐隊の様子を見るためにケーテン砂漠に赴いた貴様は機械獣の残党に襲われ、乗ってきたオートマタが壊され自身もひどく怪我をした。

 どうだ?」


「…………い、や……」


「よろしい。報告書にはそう記載しておくよ」


 そしてシルヴィアさんは鞘を嵌めたまま刀を取り出すと、


「歯を食いしばれ!」


 サムエルさんの顎めがけて、最大瞬間脅威レベル:災害級の力を思う存分発揮した。

 サムエルさんは宙を浮き歯は欠け、頭から砂漠の中心に落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ