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弱虫運び屋の右腕は殺人オートマタ  作者: 久芳 流
第1章 右腕は殺人オートマタ
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第7話 殺人オートマタ 後編

「――なるほど」


 椅子に座り、ライトの話を一通り聞いた後、僕はそう頷いた。


「つまり君は……」


『ライトとお呼びください』


「…………ライトは僕を助けるために右腕になったと?」


 ライトが話しかけてからなんとなく予感はしていたが、やっぱり夢じゃなかったようだ。 


 僕の右腕は切断された。


 そして切断された結果、血を大量に浴びたライトは起動。

 僕をマスターとして認識し、更に僕を助けるために――、


『正確にはマスターと私です』


 (マスター)と自分自身が助かるために、ライトは自身の身体を分解・変質させ、右腕になったらしい。


 ライトの身体を構築している『形状記憶ナノマテリアル』は自分をあらゆる形状に変えられる。

 トラックに轢かれそうになった時に右腕が悪魔のようになったのはその性質を使ったせいだ。

 また微粒子レベルまでその形状を変えられるそうで、僕の血管や神経にも接続されている。

 そこからエネルギーを僕から吸収できるみたいだ。


 便利な材質だ。

 廃棄場の空洞を昇るのも簡単だろう。


 まぁ殺人オートマタと言うんだから、たぶん刃物や銃器になるのが主なんだろうなぁ。

 でもそう考えると、また疑問が湧いてきた。


「どうして僕を助けたの?」


『? あなたがマスターだからです』


「あ、いや、そうじゃなくて。いや、マスターだから助けるっていうのもよくわからないんだけど」


 質問の仕方が悪かった。


「あぁー、つまりライトは殺人オートマタなんだろ?

 そんなオートマタがどうして人を助けられたの?」


 ライトは僕を助け、歪だとはいえ治療もしてくれた。

 殺人という用途とはかなりかけ離れている気がするんだけど。


 そんな疑問をライトにぶつけると、彼女は『フッ』と笑った気がした。


『私はキラーシリーズの中で最高傑作。

 それくらいのこと、できて当然です』


 オートマタなのに何故かドヤ顔をしているように見えた。


『加えて生存戦略機構により検討した結果、私が生き残るためにはマスターを救出した方が確実であると結論が出ました』


 なるほど。

 オートマタ『ライト』が生存し続けるために、損傷した部分を修復するよりも僕を治療し、()()した方が生存確率が上がると判断した。

 そのために僕はこのオートマタに生かされたわけだ。


「理由はわかったよ。助けてくれてありがとう」


 ため息を吐きつつ、僕はそう言うが、懸念点はまだある。


「だけど僕に取りついても、残念ながらライトは生きられないと思うよ」


『? 何故ですか?』


 首を傾げるオートマタに僕は笑みを溢す。


「クビになったんだ。仕事」


『…………』


「だから金がない。金がなかったらご飯も食べれないし、ライトにもエネルギーを与えられない」


 もっとも働き口を探せばいいんだけど、僕は運び屋しかしたことがないからなぁ。

 すぐに働ける仕事先なんか見つからない。

 孤児上がりだし。


 ライトがどれだけエネルギーが必要なのかわからないけど、僕が仕事を見つかるまでには干からびてもおかしくない。

 仮に運良く仕事が見つかったとしても、安月給だろうし、ライトのエネルギーを賄うことはできないだろう。


「そういうわけで残念だけど、ライトを生かすほどの余裕は僕には持ってないんだ」


『マスターの根拠は理解しました』


 どうやら納得してくれたようだ。

 助けてくれたのは感謝してるけど、僕には恩を返すことができない。

 例え僕の右腕がなくなってもライトには次の場所に行くほうが良いだろう。


 …………というのは建前。正直、こんな気味が悪いのをいつまでも着け続けるのも嫌だし。


『生存戦略機構に基づき対応を検討します』


 ライトも同じ意見みたいだ。次の行動を演算しているようで、目を白黒とさせている。


『検討完了』


 ものの数秒で演算が終わったようだ。元の無表情に戻り、僕の顔を見た。

 いったいどんな結論を出したのか、気になって彼女を見ると、


『生存戦略機構による検討の結果』


 ライトの身体が布の外からでもわかるほどグニュグニュと蠢いている。

 そして、はらりと布が落ちる。


「――――!!??」


 大きい乳房が見えてしまうが、そんなのは気にならなかった。

 何故なら、彼女の両腕が殺意が充満した凶器――首を削ぎ落とすのには充分な鋭利な刃物になっていたからだ。


『マスターを殺します』


 冷徹な殺人オートマタの表情は相変わらず無だった。

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