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弱虫運び屋の右腕は殺人オートマタ  作者: 久芳 流
最終章 英雄の右腕

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第67話 社長談義

「いやぁ。空気も乾いてて気持ちがいいですね」


 サムエルさんは手を広げ気持ち良さげに鼻から息を吸う。


「こんなところに災害級の機械獣がいたなんてね……いや、本当にいたんですか?」


 相変わらずの嫌味な笑みを浮かべているサムエルさん。

 シルヴィアさんは眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をしていた。


「貴様には関係ない。

 それよりここは気になったからって気軽に来れるようなところじゃない」


 確かに。ケーテン砂漠はエルガスから討伐隊が歩いて3日かかる。

 常人が1日、2日で来れるような場所ではないはずだ。

 それなのにサムエルさんはこの場にいる。


「いったいどうやって来た?」


「関係ないって……それはないでしょう。

 我が社だって災害級の討伐に関わらせていただいたんですから」


「――いいから答えろ」


「………………あれですよ」


 サムエルさんはため息を吐くと後ろを顎で差す。

 そこにはフェデック製オートマタが1体いた。

 そのオートマタは通常の奴らとは違う。

 背中に両翼が取り付けられ前方にはベルトや落ちないようなストッパーなどの部品が備わっていた。


「文字通り飛んできました」


「!!」


 僕らは全員目を丸くする。

 フェデック製オートマタがここまで進化しているとは思わなかったからだ。

 あのオートマタは人を前に抱えて飛ぶことができるらしい。


「試作品につき少々振動が激しかったですが、まぁ、本来なら荷物運搬用。

 スピードも申し分ないですし許容範囲内です」


 愉快げに笑うサムエルさん。

 でもこれ一体作るのにどれほどの予算を費やしたのか。


「このオートマタも増えれば、我が社の信用も回復。

 すぐに契約も取り戻せるでしょう。

 レオ・ポーターに盗られた契約を、ね」


 そう言ってサムエルさんは真一文字に黙る僕を見た。

 その表情は張り付いた営業スマイルで、だけれど目が笑ってはいなかった。


「レオ。君のせいで我が社がどれほどの損害を被ったかわかるか?」


「…………」


「あぁ。わかってる。皆まで言わなくていい。

 そもそもエルガスは自由商売。

 たまたま競合がいなかっただけで君がフリーランスとして運び屋業を立ち上げてもなんら罪ではない」


「…………」


「だけどひどいじゃないか。元は仲間だったろう?

 潰そうとするなんて。恩を仇で返された気分だよ」


「…………」


「だから僕も君の真似をさせてもらった。

 だけれど肩書きに似合わない(きみのような)ただの跳躍じゃない。

 文字通り『空飛ぶ運び屋』を造ったんだ」


 サムエルさんは手を広げやけに自慢げにそう語った。

 それが飛行型のオートマタを造った経緯か。


「これで我が社の利益は元に……いや、更に伸ばすことになるだろう!

 もう君が出る幕はない!

 これからはスピードと飛翔を兼ね備えた僕のオートマタが業界を引っ張る。

 君はお役御免だ! ヒントをくれて感謝するよ。

 さっさと辞めて別の職を探すことをおススメするよ!」


 さっきまでの張り付いた営業スマイルから一変。

 目をギラギラとさせて不気味な笑みを僕に向けてきた。

 どうやらサムエルさんは本気で僕を潰したいらしい。


 僕はゆっくりと息を吐き、サムエルさんをもう一度見てこう言った。


「……そうですか」

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