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弱虫運び屋の右腕は殺人オートマタ  作者: 久芳 流
最終章 英雄の右腕

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第66話 災害の跡地

「ここら辺だと思います」


 青天の砂漠の中央を僕は指差した。

 僕についてきたシルヴィアさんとピーターさんは興味深そうにその中心を見る。


「災害級の機械獣が討伐された場所です」


「そうか。見事に何もないな……」


 シルヴィアさんはその景色を見てため息を吐く。

 穏やかな空気が流れるケーテン砂漠。

 ここに機械獣の群れや災害級の機械獣がいたなんて嘘のようだ。


「討伐をした証として首のひとつでも持って帰りたかったが、さすがにこれだと無理そうだな」


「そうっすね」


 ピーターさんが同意するように首を振る。


「赤外線カメラで一部始終は撮ってありますけど、やっぱり実物がないとですね」


「あぁ。討伐隊本部に偽装だと疑われては敵わんが、仕方がない。

 どうにか認めさせるさ」


 あとに聞いた話だけど、討伐隊は機械獣の討伐報告を本部に伝える義務がある。

 脅威レベルに応じて報酬や補填があって、災害級の機械獣を倒したとなれば結構貰えるらしい。

 だけど意外にも本部はケチらしくて、物的証拠がない限り、何かしら因縁をつけて報酬を出し渋るみたいだ。


 といっても災害級の機械獣をMEランサーで討伐すると決めた時点で証拠は残らないと覚悟していたようだけど。


「メタルイーターはさすがだった。

 尤もそれを最大限発揮できたのは君の右腕のおかげだな」


 シルヴィアさんはそう言うと僕の右肩を見た。


「痛みはあるか?」


 僕は首を横に振る。


「右肩には何も」


 機械獣に噛まれた他のところの方が痛む。

 僕が起き上がる前にシルヴィアさん達が応急処置をしてくれたからそんなには痛まないけど。

 ライトの残滓はあの夢以降、全く動かなくなった。

 叩いても「動け」と命じてもこの右肩は何にも反応を示さなかった。


 そしてライト本体は、もちろん、メタルイーターの餌食になってしまったのだろうな。


「ん?」


 突然、ピーターさんがそう呻いた。

 何かを探すように目を凝らしてケーテン砂漠の中央を見ていた。


「どうしました?」


「いや、なんか光ったような気がして……」


「え……!?」


 僕も続いて目を凝らす。

 周りをゆっくりと見回す。


「! ――あ!」


 見つけた。確かに何かが光っている。

 ……もしかして。


 ゆっくりと前へ。

 近づくたびに確信する。

 徐々に足が早くなる。

 途中バランスを崩しそうになるが、耐えて僕は()()に駆け出した。


 ケーテン砂漠の中央も中央。

 ど真ん中にそれはあった。


 僕は慣れない左手で砂を掻き分ける。

 黒い腕だった。

 その4分の3が歪に破られ無くなっているが、僕は優しく拾い上げた。


「……ライト……」


 もう全く動いていない。もはや全然足りていない。

 だけれどそこには確実にライトの本体が残されていた。

 メタルイーターの猛威の中、ライトは僕の命令を最大限聞き、ボディを残したのだ。

 もしかしたらデータも残っているかもしれない。


 しかも。

 ポロっと何かが落ちる。


「……いったい何が……? ――!」


 シルヴィアさん達も追いついたみたいだ。

 そしてライトが落とした物を見ると驚きの表情を見せ、()()を拾い上げた。


「なんでしょうか?」


 黒いプレート状の鉄だった。

 何度も確かめるように裏返したり触ったりしてシルヴィアさんはその鉄を見る。

 

「優秀だとは思ってはいたが、まさかここまでとは」


「?」


「災害級の甲羅のかけらだよ」


 僕もピーターさんも目を丸くする。


「君の右腕はこの甲羅を、も残してくれた。何故かはわからんが、これで本部にも言い訳がつくな。感謝するよ」


 どんなアルゴリズムでそれを残したのか、今じゃライトにしかわからない。


「君の右腕はまさしく今回の英雄だ」


「……そう……ですね……」


 だけれど、ライトの功績でここで災害級を討伐した証を残せたのだ。

 その証跡は確実に僕やライトが戦いに貢献したことを証明していた。


 くそ。

 もう乾いていると思ったのに。

 僕は右腕を優しく抱き締めた。



「いや〜……素晴らしい景色ですね!」


 そんな中、後ろからパチパチとゆっくり拍手する音が聞こえた。

 みんな後ろを振り返る。


 まさか。


 いるはずもない人物がここにいて目を丸くした。


「貴様……なぜここにいる」


 シルヴィアさんが睨みつける先には、


「ご機嫌よう。支部長さん。気になってね。

 僕も来ちゃいました」


 現フェデック社社長サムエル・フェデックが愉快そうな笑みを浮かべて立っていた。

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