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弱虫運び屋の右腕は殺人オートマタ  作者: 久芳 流
最終章 英雄の右腕

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第65話 夢の世界での邂逅 後編

『私の本体はもうこの世には残っていないでしょう』


 はっきりとライトはそう言っていた。

 その口調はいつもの冷静で淡々としたものだった。


『メタルイーターの捕食と増殖スピードは想定よりも遥かに上でした。

 本体は真っ先に食い尽くされているはずです。

 残っていたとしても、一部分と推測します』


「…………じゃあどうして会話できているの?」


『右肩に一部残された残滓があるからでしょう。

 いわば残留思念というべきでしょうか。

 ここには表に出られるほどの意識は残されてはいません。ですが夢の中でなら対話可能なようです。

 ……それも今回が最後でしょうが』


「え……?」


『少し意識が遠のいていく感じがあります。プログラムの限界のようです。

 私はこれから深い眠りにつきます』


「! そんな……!」


 せっかくこうして話せた、というのに。

 またお別れを言わなきゃいけないのか。

 こうして会えたのにまた。


『心配はありません。私がいる前の元の生活に戻るだけです』


「元の生活って……そんなのもう無理に決まってるだろ!」


『いいえ。大丈夫です』


「ライトは僕の右腕なんだ! ……ライトがいなきゃ僕はもう何もできない」


『そんなことはありません。マスターは強い方です。

 きっとそのうち慣れていくでしょう』


 ライトは優しい口調でそう言う。


『それにキャリー・トランスやシルヴィア・スターリングなど数多くの頼れる方がいます。

 だからきっと私のことは忘れるでしょう。いえ、忘れてください』


「……そんなことできるわけないだろ!」


『毎回同じように。この夢でのことを忘れるように。

 きっといつかこの数ヶ月も夢だった、と思える時が来るから』


 ライトの身体が徐々に薄れていく。


『もう時間がないようですね。これで最後です』


 僕は手を伸ばそうとするが、動けない。


「待ってくれ。僕はまだ君にお礼のひとつも言えちゃいないんだ!」


『心配ありません。私はただのオートマタ。代わりはいくらでもいる。

 いつかまた私の後継機に会ったらよろしくお伝えください』


「ライトォ……!」


 ライトの身体はなくなり、顔だけになる。

 その表情は今までに見たこともない優しい笑みを浮かべていた。


『さようなら。今までに感謝を』


 その瞬間、僕の身体も遠くへ引き寄せられた。


★★★


「ようやく目が覚めたか」


 ゆっくりと目を開ける。

 ぼんやりとしているがすぐに焦点が合い、シルヴィアさんと目が合った。

 僕が目を覚ますとわかると、どこかほっとしたような表情をしていた。


「レオくん! あぁ! よかったよ! レオくんが死んだら俺はもう!」


 そのすぐ横で叫ぶピーターさんは大粒の涙を浮かべて僕を見ていた。

 辺りを少し見渡して状況を観察する。

 ここはケーテン砂漠だと思う。


 思う、というのは僕が見ていた景色とは遥かに違うからだ。

 砂嵐は止み青い空が見えていたし、機械獣の群れもいない。

 気温も全く熱くなくて、むしろ清々しい風が吹いていた。


「……あ」


 ゆっくりと起き上がる。

 起き上がろうとしたところで右に身体が傾いてしまう。


「おい。無理はするな」


 シルヴィアさんが支えてくれた。


「あ……りがと……ございま……す」


 少し喉が焼けているのか、ガラガラとして声が出しづらい。

 だけれど気にしない。

 僕は無い右腕を思い右肩を押さえて、悔し紛れにこう言った。


「忘れるわけ……ないだろ……」

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