第60話 いざ頂点へ
空中に浮く足場に飛び移りつつ破壊。
その作業はひとつを残して瞬時に終了した。
機械獣の背中に乗り手綱のように自身を機械獣の首や翼に巻き付けその領域から脱出。
瞬間。
壊れた他の鴎型の機械獣は花火のように次々爆発した。
『処理完了シました』
「よし! そのまま災害級の機械獣の頂上まで行こう!」
『了解』
鴎型の機械獣を操り目指すは頂上。
ここからは更に加速する。
ライトの提案した作戦というのがこれだ。
野営地でライトの赤外線カメラで見た時、災害級の機械獣は上から蒸気のように熱を排出していた。
それは、つまり、排気口が頂上にあるということ。
熱を常に発する災害級だ。
熱を逃すために排気口は常に開けっぱなしのはず。
少なくとも隙間はある。
隙間さえあればメタルイーターを内部に侵入させられる!
途中、機械獣に乗ったのはエネルギーを温存するため。
それにこっちの方が断然早い。
僕らは頂上まで一直線に昇っていく。
しかし。
「熱ッ……!」
上に昇れば昇るほど、気温がえげつないほどに上がっていく。
排気口が近いからだ。
常に熱を放出していて、それが拡散しきれていない。
まるで火口に突っ込んでいるみたいだ。
とはいえ、まだ耐えられる。
鼻で空気を吸い込むと肺まで熱くなるし、少し肌も焼けているような気がするが。
そういえば不思議とライトは全く熱くなかった。
機械ではあるはずなのに右肩の付け根部分はもちろん、足や背中などにもライトはまとわりついているはずなのに熱さを感じない。
そういえば聞いたことはある。
どんなに熱しても熱くならない素材があるって。
ライトにももしかしたらその素材が織り込んであるのかもしれない。
だとしたら背中にあるメタルイーターも問題ない。
ライトに包まれているんだから。
このまま排気口まで進もう。
と思ったのだが。
「ッ! 蒸気!?」
足元から熱い湯気が出てきた。
鴎型の機械獣の体内にある冷却水がこの熱で沸騰したらしい。
それほどまでに熱い温度。
しかも冷却水が漏れ出した今、この機械獣の温度を保つものは何もない。
『警告。機械獣ノ機能が停止シました』
ガクンと推進力が失われる。
(あとちょっとなのに……!)
もう目と鼻の先。ゴーグル越しからも高音の熱が出る甲羅の頂上が見える。
「ライト、大丈夫?」
さっきから少し異音がするし音声も変だ。
保護機構解除の影響がもう出ている。
『ジジ……』
全力全開ではないとはいえ、やっぱり制御不可能な力は負担が掛かるんだ。
『エネルギー残り32%。多少損傷がアリ。
ですが稼働可能範囲です。
作戦完了まで残り30%です。このまま進むノヲ推奨シます』
「……そうか」
思ったよりも消費が激しい。
でももうここまで来たのならどうにもならない。
ライトが壊れた時は僕もおそらく死ぬし、その時点で作戦失敗。
今はライトの力や可能性を信じよう。
「わかった。なら一気にてっぺんへ!」
『了解』
ライトは鴎型の機械獣の両翼を強引に切り奪い取った後に、その背中を強く蹴った。
蹴られた鳥はその衝撃に耐えきれず爆発。
僕らはその爆風を手に入れた翼で掴み上昇する。
頂上にいくにつれて気流があまり安定しない。
吹き飛ばされないように微調整を繰り返しながら突き進む。
昇る。昇る。頂上まで。それを越して更に上へ。
やがて――。
「見えた!」
『目的地付近です』
頂上よりも更に高い位置まで昇ると翼を離す。
下に見えるのは煙突だった。
甲羅の上に建てられ、蒸気がそこから溢れ出ていた。
その煙突の上に僕とライトは着地する。
熱気が凄まじい。
これが災害級の機械獣の熱。
本当に活火山の噴火口にいるようだ。
この熱で着けていたゴーグルの端が溶けていくのがわかる。
一気に作戦を終わらせないとダメだ。
「ライ――」
『やはり……そうでしタカ』
しかしライトはその現場を見るとそう呟く。
オートマタにしてはやけに人間臭い口調。
らしくない。
いったいどうしたのか、と次の言葉を待つと、やがて僕の顔は青ざめた。
『マスター、お別レです』




