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弱虫運び屋の右腕は殺人オートマタ  作者: 久芳 流
第6章 最後の命令

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第59話 運び屋ロケット

 地面が抉れるほどの強い蹴り。

 瞬間。僕の身体は宙を真っ直ぐ跳んだ。


 端的に言えば、ライトによる垂直跳び。

 その高さは人間はもちろん、いつものライトの跳躍よりも遥かに高い。

 前方からの空気抵抗はライトが頭上で鳥の嘴のような形を作ってくれたから僕には全く影響がない。

 だが、その分、加速も大きい。

 覚悟の上だが、きつい。


「ググ……!」


『身体への負荷大。このまま続行しますか?』


 機械的な質問で一応は僕のことを心配してくれているみたいだ。


「大丈夫! ライトは問題ない?」


『エネルギー残り87%。今のところ損傷もありません。問題なしと判断します』


「なら進もう!」


『了解』


 ドン! という音を奏でて真っ直ぐ上に加速する。

 ライトの足が空気を蹴ったのだ。

 やがて下向きの力――重力に従って減速するが、更に空気を蹴ることで高く上昇する。


 これが保護機構(プロテクター)を解除した最高峰のオートマタの力だ。


 速度が落ちる前に加速。

 その度に強い衝撃音が鳴るが、前に進む僕らにはすぐに聞こえなくなる。

 どんどんと速くなり頭上の嘴も熱を発するのか赤い。

 だが、気にせずライトは宙を蹴り、やがて僕らは音を置き去りにした。


 激しい衝撃。

 音の壁に突入したことにより、僕らの周りには雲ができる。

 頭上の嘴がなかったら空気の摩擦によって燃えていたかもしれない。


 身体の不調はもちろんある。

 気圧の急激な変化による耳鳴り。頭もズキズキ痛む。

 人間が普段経験することのない加速度による負荷。

 正直、気持ち悪くなってる。


 だけど、ここで弱音を吐いても意味がない。

 僕の不調なんて、キャリ姉達が死ぬことよりマシだ。

 ライトによるロケット跳躍を黙って耐え忍ぶ。


 やがて――。


『目視で確認』


「見えた!」


 頭上に見えるのは宙を舞う鴎型の機械獣。

 災害級の機械獣の冷却のためにやってきた彼らは何体かが連携して交互に水を噴出させていた。


『ターゲットをロック』


 その1体に目星をつける。

 直立姿勢を崩し、へそを空に向ける。

 強くなる空気抵抗を我慢して、右手を射出した。


 鉤爪となった右手は勢いよく鴎型の翼に向かう。

 まさかこんな空高い自分のテリトリーで襲われるとは思っていなかったのだろう。

 避けることもなく、容易にライトの右手に捕まった。


「上がれぇ!」


 右腕を引くのと同時に、強い回転音と共にワイヤーが高速に巻き取られる。

 更なる加速を感じ、鴎型の機械獣よりも高く飛ぶ。


 しかし鉤爪は離さない。

 僕らの目的は飛ぶのではなく、()()()ことだから。


 機械獣も異変に気がついたのか、バタバタと翼を羽ばたかせ、暴れている。

 だが、ワイヤーの巻き取りは止まらず。

 抵抗する機械獣に向かって一直線だ。


「着いた!」


 そして、金属音を奏でて着地する。

 降り立ったのは機械獣の背中。


「おっと、暴れるなよ……!」


 振り落とそうと機械獣はもがいているが、ライトは翼の付け根や首に巻きつく。

 足も背中に固定する。

 これでちょっとやそっとじゃ動かない。


『第一段階完了』


 ライトの報告を聞いて安堵する。

 ここまでは順調。

 少し息をつく。――のも束の間。


『脅威レベルが更新されました』


「!!」


『傷害級の機械獣が我々を脅威と認定したようです』


 僕らの周りに鴎型の機械獣が囲む。

 一様に目を赤くし威嚇するように吠えている。


『脅威を排除しますか?』


「もちろん……1匹残して全部ぶっ壊して」


 次のプランの邪魔になるし、これ以上災害級の機械獣を動かしてなるものか。

 冷却装置となる鴎型は1体残して殲滅だ。


『了解』


 ライトがそう言い終わると、乗っていた鴎型の機械獣を離し破壊した。


『処理を開始シます』

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