第51話 鉄喰〈てつじき〉の槍
「お疲れ様です」
「あぁ」
シルヴィアさんが戻ってくると、僕は一礼する。
シルヴィアさんは息切れすらしておらず、相も変わらずクールな表情を見せていた。
「無事だな?」
僕は「はい」と頷き、ピーターさんは敬礼をしていた。
「そうか。ならば私は戻る。
あの人形のおかげで、幸か不幸か災害級の機械獣が砲撃してくれたからな」
フェデック社のオートマタが砂嵐に侵入した結果、災害級の機械獣は野外地付近を攻撃した。
オートマタは大破し野外地も悲惨な状態になったが、今までの調査から次に砲撃を開始するのに時間を要する。
たしか3日だったけ?
その間は進み続けるだけ。反撃はされることはないから確かに今がチャンス。
「え、MEランサーはもう撃てるんですか?」
ピーターさんがそわそわと身体を揺らしながらシルヴィアさんに聞いた。
シルヴィアさんは無表情に頷く。
「あぁ。準備も完了。試運転も正常だ。あと10分もすれば発射するだろう」
「うおー! マジか! MEランサーの発射を生で見れるとは!」
「お前はテストを見たはずだろ?」
「テストと本番は違いますよ! やっぱり本物の弾を撃ってこそ! しかも直近で見れるチャンスがあるなんて!」
興奮する様子のピーターさん。
シルヴィアさんが支部長であることを忘れて捲し立てている。
「そうか。ならついでだ。野営地救助の応援をしつつ、そこで見ていろ」
「かしこまりました!」
ピーターさんは笑みを浮かべて敬礼する。
そんな姿にシルヴィアさんは微笑すると「じゃあ」と軽く手を振りMEランサーの発射機に戻っていった。
「さて! 俺らも野営地の救助をしに行こうか!」
嬉しさが隠せていないピーターさん。
ニヤニヤしながら僕に話しかける。
そんなテンションで怪我人の救助とかしてたら怒られそうだ。
でも大股でルンルンと歩くピーターさんの気持ちを冷ますのも悪い気がして、僕はため息ひとつ吐くとピーターさんの後に続いた。
とにかく。野営地の救援も終わっていない。
出来るだけ役に立つことにしよう。
★★★
炊き出し場近くの倒壊しかけの備蓄庫。
そこをライトの力で軽く持ち上げ、見えた手を取り引っ張り出す。
地面を擦る音と同時に微かな呻き声を上げて、炊き出しのおばちゃんが出てきた。
「大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ……なんとかね。助かったよ」
擦り傷や打撲痕が見えるが立ち上がることもできているみたい。
返事も普通に返ってきたし、僕はほっと胸を撫で下ろす。
「よかった……歩けるみたいですね。一緒に安全なところへ行きましょう。皆もいます」
「そうかい……ありがとうね。もうあんたはもう避難もしてたというのに」
「いえ。おばさんにはご飯もたくさんくれたし。こう言う時はお互い様です」
実際、僕はシルヴィアさんやピーターさんの言うことを聞かず来ちゃったしね。
「おーい、レオくーん」
「! ピーターさん」
避難場所へ向かっている途中に手を振るピーターさんに出会った。
「これで全員かい?」
「どう? ライト」
『野営地周囲をスキャンします。危険領域に生存者は存在しません。全て救出できたと報告します』
「――だそうです」
「そうか。よかったよ」
ピーターさんは安堵した表情をする。
その一方、おばちゃんは「あんたの右腕、喋るんかい!?」と目を丸くしてた。
「MEランサーももうそろそろ……いや、もうすぐだな。ほら、見て!」
ピーターさんが興奮したように指を差す。
黒い発射台には既に超巨大な槍が設置され、災害級の機械獣に照準を合わせていた。
蒸気が込み上げていて、ここからでも聞こえるほどのうねりをあげている。
終端からは熱が出ているのか少し赤みを帯びている。
もう発射直前。
「今までの調査から災害級は砲撃をした後はしばらく動かない! 狙いも大きいし、今がチャンスだ!」
槍の後ろは更に熱を帯び、次第にバーナーのように火を吹き始めた。
火が排出されてもMEランサーは固定され発射されず。
やがて火の色がオレンジから赤へ、そして青へと変わっていく。
限界まで力が溜まったロケット。
火も最高潮に達した瞬間。
「発射だ!」
鉄喰の槍は脅威へ向かって飛翔した。




