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弱虫運び屋の右腕は殺人オートマタ  作者: 久芳 流
第5章 運び屋としての役割

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第47話 想定外の弱点

 ケーテン砂漠に向かうと、途中で熊型の機械獣が走っているのが見えた。

 肩幅が広く大きな背中の四足歩行。

 足は太く肩や背中には鎧のように硬い甲殻を身に纏っていて、棘が何本も甲殻に生えていた。

 災害級の機械獣の弾にされたというのに、この機械獣には目立った傷はない。

 多少、甲殻が汚れているだけだった。


 機械獣は僕を見つけると、スピードを変えずに身体を丸めると転がってきた。


 なるほど。

 あの機械獣はああやってボールのように身体を丸めることで、砲撃の衝撃に耐えたのか。

 しかも地上にいる時は甲殻に生えた棘がスパイクのようになって加速する。

 まるでこの平坦な荒野で効率よく逃げる生物を追うように出来たみたいだ。


 まったく。機械獣はどこまでいっても僕ら生物に優しくない。


「ライト! 倒せる?」


『余裕です』


 右腕が変形する。五本の指先が尖り、手のひらが穴開きになって広がっていく。


『まずはスピードを殺します』


 そう言うと、ライトは指を左側の地面に突き刺すと、右側に飛ぶ。

 網状になった手のひらが転がる機械獣(ボール)を捕まえるみたいにそのまま拡大する。


 熊型の機械獣はその変形に気が付いていない。

 一直線に網へと突進していく。


「! 捕らえた!」


 その瞬間、右腕からアンカーが生えて地面に刺した。

 転がる重量級を抑える。刺したアンカーが地面に食い込み抉る。


「がんばれぇぇえええ!」


 僕も足を踏ん張り、必死に制止させる。

 5メートルは進んだか。


「…………――!? 止まった……?」


『静止を確認。変形を解除します』


 ライトは右腕を元に戻す。

 熊型の機械獣は動かないとわかると、身体の丸まりを解除して四足歩行になろうとしていた。

 それをライトは見逃さなかった。


 僕の足に纏ったライトのブーツが勝手に地面を蹴る。

 熊型の機械獣に飛び掛かる。

 機械獣はボールから戻った直前。

 それも機械獣の意図しないタイミングでスピードを殺されたわけだから、機械獣は仰向けになってしまっていた。


『外皮が硬い機械獣は相対的に内部が脆いです』


 右腕は出刃状になると、熊型の機械獣の腹に刺す。

 そして、そのまま頭側に向かい、頭を真っ二つに切り裂いた。

 熊型の機械獣はあっさりと沈黙した。


★★★


「倒した……」


 額に滲み出た汗を左腕で拭って一息つく。

 熊型の機械獣の目からは光が消えていて、ピクリとも動かなかった。

 こんなにも簡単に倒せてしまうとは。

 いや、効率化していると言った方がいいのだろうか。

 オートマタのくせして。この機械右腕(きかいにんぎょう)は成長もするのか。


「……ライト?」


 そうやって感心しつつ右腕を見ると、ライトはまだ出刃の形状を保ったままだった。


「どうしたんだ?」


『脅威レベルが下がりません』


「なんだって?」


 機械獣は沈黙したはずだろ。こんなにもガタイの良い熊型の腹から頭にかけて真っ二つに両断した。

 機械獣は基本的に首や頭を破壊すれば停止する。

 この機械獣ももう機能停止しているはずだろ……?


『更にこの熊型の機械獣ですが、殺害級にしては脆弱と判断します』


「――!?」


『武器も少なく戦闘能力も低い。脅威レベルとしては傷害級が妥当でしょう』


 あっさり倒せたのはこいつが傷害級だから、ということか。

 でもライトの判定では脅威レベルは殺害級だった。

 つまり、これが意味しているのは――。


「……もう一体……いる……?」


 その瞬間――。


『脅威を認識。緊急回避を実施します!』


「!? うわっ!」


 急にライトが横に飛んだ。

 僕らがいたところに液体が降ってくる。

 ジュッ、という音を立てて煙を出しながら地面が溶けた。

 驚いて液体が降ってきた方向を見ると、


「……あれも……機械獣……?」


 熊型の機械獣の腹の上に、赤い粘液状の物質が身体の大半となっている蠢く何かがいた。

 上部にはふたつの突起がついた蓋。下部はバケツのような容器になっていて、リズミカルにジャンプしている。


『解析終了。どうやらあれも機械獣のようです。

 熊型の機械獣の内部に収納スペースの存在を確認。

 あの機械獣は粘液状物質を下部の容器に詰め蓋をされ、熊型の機械獣にここまで運ばれたようです』


 そして、熊型の機械獣が倒された今。

 あの粘液状の機械獣が起きて、あの形態になったってことか。


 しかもあの粘液はおそらく強い酸性。

 殺傷能力が高く、人ひとり殺すには充分。

 つまりこいつが――。


『脅威レベル:殺害級です』


「ライト。あいつを倒すんだ!」


『承知しました』


 この時、僕は想定していなかった。

 ライトはこれまで殺人オートマタを超えたすごい能力を発揮してくれたし、粘液型の機械獣は殺害級。

 殺戮級の機械獣を倒したライトだったら今回もあっさりと倒してくれると思っていた。

 なのに。

 ライトにあんな弱点があったとは、僕は全く想定もしていなかった。


 ――ジュウ……!


「! ライトォ!?」

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