第46話 絶望の野営地 後編
ケーテン砂漠にある討伐隊の野営地は見るも無残な姿になっていた。
全てのテントは崩壊し、炊き出し場や備蓄庫にあるものは散乱。
テントの下敷きになった者や吹き飛んだ物に直撃した者がその場に倒れ、生き残った人達が叫びながら救助活動をしていた。
着弾したわけではないのだが、その爆風だけで破壊するほどの威力。
僕の顔は自然と歪んだ。
フェデック製のオートマタ――残り8体も砲撃の余波でそこそこのダメージを負っていた。
野営地から離れた場所に座り込み、破損した部分からバチバチと漏電している。
だが、野営地に向かおうとする気は変わらないらしい。
『ダメージ率29%。任務続行可能。目的地ニ向カイマ――』
これ以上は邪魔させない。
そう考えて、野営地に着く前に8体全ての首を刎ねた。
人間ではないとはいえ、少し気分が悪い。
「う……」
僕は込み上げてくる思いを押し込むように口元を抑えて、野営地の様子を見続けた。
『プッ……――プッ……本……誰……るか……』
そんな中、右側から機械で出したような雑味のある声が聞こえてきた。
途切れ途切れだが、誰かを呼び掛けている。
声がする方を見ると、すぐに理解する。
僕が立っていたのは野営地の作戦本部があった場所だ。
瓦礫が積み重なっている中で、黒く光る通信機が落ちていた。
そこから、さっきの声が聞こえてくる。
『聞こ……か? 応答……ろ……?』
周りには誰もいない。
急いで瓦礫をどかし、通信機器を取り出した。
少し調整して周波数を整えると、
『作戦本部! 誰か反応しろ!』
シルヴィアさんの声が鮮明に聞こえてきた。
「シルヴィアさんですか?」
『その声はレオか? どうして君が?
いや、そんなことは今はいい。無事か?』
「はい。僕も今、戻ってきたところなので。野営地は……正直ひどいです」
『…………………………そうか』
僕の少ない言葉で察してシルヴィアさんの口調は重くなった。
シルヴィアさんもMEランサーの発射地点から見ていただろうから、どういう惨状かは予想がついているはずだ。
『生存者はいるか?』
だが、シルヴィアさんは僕に聞き続ける。
きっと現状を正確に把握したのだろう。
「……えっと……」
『野営地周辺をスキャンしました。生存者数263名。内重傷者数147名。死者数は11名です』
僕が周りを見渡していると、ライトがそう冷静に報告する。
『つまり……半数以上があの攻撃で被害を受けたわけか』
半数以上。着弾地点ではないのに、そんなに……。
僕がオートマタに会ったのはそのちょっと前。
殺戮級の機械獣を相手にしていたとはいえ、オートマタの脅威にもっと早く気が付いていればこんなことには……。
僕は左拳をギュッと握る。
『とにかく負傷者の救出が優先だ。レオ、君の右腕は周辺のスキャンも出来るようだな。手伝ってくれるか?』
「! もちろんです」
『ならば――』
『脅威レベルが更新されました』
シルヴィアさんの言葉を遮るようにライトがそう報告する。
脅威レベルの更新? つまりここに脅威が迫っているということか?
こんな時にいったい……。
『災害級の機械獣により砲撃された機械獣がこちらに迫ってきています』
そうか。忘れていた。
ケーテン砂漠にいる災害級の機械獣は機械獣を弾にして撃つのだ。
『チッ……凶悪だな』
そうシルヴィアさんは舌打ちをする。
二次被害まで計算に入れたような砲撃の仕方。
まるで破壊するためだけに出来たかのようだ。
『脅威レベル:殺害級。形状:熊型です』
ライトが淡々と報告する間、確かにケーテン砂漠から地鳴りのような音が聞こえてきた。
今、討伐隊は救助で精一杯。
更にこれに気が付いているのは僕しかいない。
『レオ……――』
「僕が倒します」
シルヴィアさんに頼まれる前に僕はそう言う。
『お、おい。違――!』
これ以上、被害を拡大させるわけにはいかない。
『ライト!』
「承知しました」
僕はライトの鎧を纏うと、熊型の機械獣に向かって一直線に飛んだ。




