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弱虫運び屋の右腕は殺人オートマタ  作者: 久芳 流
第5章 運び屋としての役割

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第44話 オートマタの脅威

『エネルギーの補給が完了しました』


 そう報告し、ライトは右腕を箱から取り出した。


「うわぁ……本当にきれいさっぱりだ」


 箱の中を見てピーターさんは苦笑する。


 ライトが食べている間、ピーターさんにもある程度の事情は伝えた。

 そうしないと、僕の右腕を化物だと思われて撃ちかねなかったからだ。

 ライトがそれを黙認するとは思えないから、ピーターさんを護る意味も含めて伝えざるをえなかった。


『エネルギー補給に不要な物質があります。破棄しますか?』


「うん。そうしよう。あ、でも今日、取り込んだ分だけ、ね」


『……承知しました』


 同意すると、ライトは右腕を前に出して手のひらを拡げた。

 そこから色々と吐き出される。

 ビスケットの袋、薬品の瓶、食料の入った箱、輸血パックの袋、そしてライフルにミサイルランチャーの残骸……。

 栄養に不必要なものがどんどんと山積みになっていく。


 その様子に「うわぁ……」とピーターさんの表情は青ざめ口角をヒクヒクとさせていた。


『完了しました』


「ん。ありがとう」


 そうお礼を言うと僕は右肩を回した。

 ライフルやミサイルランチャーが外されてなんとなく軽くなった気がする。


「ピーターさん、これで大丈夫です」


「そ、そうなんだ? いや、まぁ、よかったけど……」


 エネルギーの補給は終わった。

 ライトも元気。ついでにライトから栄養が送られたのか僕も元気。

 ピーターさんにも怪我はないようだし。

 あとはもうエルガスに帰るだけだ。


「それにしても――」


 そう思っていたのだが。

 怪訝な表情でライトの吐き出した残骸を見るピーターさん。


「どうかしましたか?」


「……いや」


 そう言うとピーターさんは少しだけため息をつき、ケーテン砂漠の方を見ていた。


「大丈夫……だよな……?」


 ひとりごとのように呟くその声に不安が混じっている。

 何を心配しているのだろうか。

 ピーターさんの視線を追うように、僕もケーテン砂漠を見る。


 僕らが野営地から離れてそんなに経っていないから、ケーテン砂漠は実のところまだまだ目と鼻の先。

 肉眼で確認できて、野営地がだいたい人差し指と親指で摘まめるくらいの大きさになっているくらいの距離感だ。


 そんな野営地付近を見ていて、


「――――ッ!」


 気が付いた。


「ライト!」


『承知しました』


 僕が頼まなくてもライトは変形を始め、双眼鏡のような形になる。

 そうであってほしくない、と願いながらそれに目を通すと、


「……なんで……?」


 フェデック製のオートマタが野営地を迎撃しているのが見えた。

 いや、正確には討伐隊の何名かが野営地に入らせないように抵抗しているのを、オートマタが武器を使い攻撃しているのだ。


 さっきまでは避けることに専念していたのに野営地に着いた瞬間、いったいどうして。


『おそらく目的地だからでしょう』


「……え?」


『彼らは目的地以外での戦闘は禁止されていたように見受けられます。

 しかしケーテン砂漠の野営地という()()()に辿り着いたため、戦闘禁止が解除されたと考えられます。

 そのため、野営地への侵入を拒む者がいれば迎撃というプログラムが実行されました』


「シルヴィアさんは!?」


「残念ながら、支部長は野営地にはいない」


 ピーターさんがそう言う。


「支部長はMEランサーの方に行っているはずだ。

 災害級の機械獣のための決戦兵器だ。

 現場で指示するためとそれを護るため。

 討伐隊の最高戦力はMEランサーを優先している。

 オートマタがこんなにも早く来るとは思っていないだろうしね」


「…………そんな……」


 ということは野営地には今、必要最低限の兵力しかいないということか。


「ちなみに聞くけど、ライト……さん?」


 ピーターさんは真剣な表情で僕の右腕を見た。


『なんでしょうか?』


「さっきのオートマタが持っていた武器、あるだろ?

 あれってどのくらいの攻撃力があるか、わかるか?

 ……つまり災害級の機械獣に到達しうるほどの性能を持っているか知りたい」


『先ほど倒したオートマタが所持していた武器は対物ライフル及び対機械獣六連装ミサイルランチャーです。

 他フェデック製のオートマタは個体により様々な武器を持っていましたが、その脅威レベルはどれも殺戮級です。

 ケーテン砂漠内部にいる災害級の機械獣を討伐することは不可能ですが、ダメージを与えることはできるでしょう』


「……射程はどのくらい?」


『およそケーテン砂漠直前からの攻撃で充分届きうる距離です』


 ライトが淡々とそう解説していくたびにピーターさんの顔は青ざめていく。


「……そうか……」


「ど、どういう意味でしょうか? ピーターさん」


「災害級の機械獣は攻撃した奴を標的にするんだ。再起動した今、あのオートマタが災害級を攻撃したらどうなると思う?」


「オートマタを攻撃する……? まさか……!」


「そのまさかだと思うよ。オートマタがもし野営地の直線上から攻撃を始めたら、災害級は野営地もろとも攻撃するだろうね」


 オートマタが持っている武器がまさか殺戮級くらいだとは、とピーターさんは頭を抱える。


 今まさにオートマタは野営地に侵入しようとしている。

 あそこには非戦闘員もいるんだ。

 炊き出し場にいたおばちゃんとか。

 もしオートマタのせいで災害級の機械獣の標的になったりしたら……。

 想定外の脅威だ。


「今すぐ戻らないと!」

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