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弱虫運び屋の右腕は殺人オートマタ  作者: 久芳 流
第4章 街の脅威に運び屋を

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第29話 そして現在

 そして、シルヴィアさんの依頼から3週間が過ぎた現在。

 僕は涙目でエルガスの北門の前に立っていた。


 かっこよく「わかりました」と言ったはいいものの、いざ実際にエルガスの外に立つともう身体がガクガクと震える。

 やっぱり怖いものは怖い!


 何も障害物がない荒野だからこそ、遠くもはっきり見えて機械獣がうろついているのもはっきりわかった。


「よぉ、レオ。ビビってんのか?」


 そうやって膝をガクガクとさせながら、呆然とエルガスの外の荒野を眺めていたら、後ろからがさつな声が聞こえた。


「タンクさん……」


 後ろを振り返ると、タンクさん、そしてキャリ姉とニコちゃんが立っていた。

 見送りに来てくれたのか。有難い。


「泣くな泣くな。情けねぇ」


 タンクさんは僕の泣き顔を見て呆れたようにため息を吐いた。


「シャキッとしろ。男だろ?」


「そうなんですけど……」


「全く。俺が初めて出た時はもっと堂々としてたぜ。なんなら機械獣の方が逃げていたもんだ!」


 ……それはすごい。

 さすがタンクさんだ。機械獣も恐怖するほどの迫力を持っているなんて。


「何言っているんですか」


 タンクさんがふんぞり返っていると、そうキャリ姉が笑った。


「初めて出た時って首都エムレーンでやった武器万博(ウェポンエキスポ)の時ですよね? メタルイーターを展示した時の。

 タンクさん、その行き帰り、ずっと騒いでいたじゃないですか。

『機械獣が襲ってきたらどうする!』とか『あの足跡、機械獣じゃないのか!』とかなんとか言って」


「てめ……ッ! なんで知ってる!?」


「私も参加してたんですよ。余裕がなくて気がついていなかったかもしれませんけど」


 顔を真っ赤にさせているタンクさんを横目にキャリ姉は笑いながらそう言う。


「てなわけで、あのタンクさんも外出るのは怖かったんだから、レオが緊張するのは無理ないよ」


「ぐっ……余計なこと言いやがって……」


 威厳が台無しだ、とぼやくタンクさんだったが、僕はその話を聞いて少し身体の力が抜けた。


「ところでタンクよ」


 シルヴィアさんが落ち込んでいるタンクさんに声をかけた。


「? なんだ? 支部長」


「すまなかったな。無理を言って。自己破壊時間を伸ばしたメタルイーターの大量生産など……」


「あぁ……いや、こちらこそすまねぇな。3週間も待たせちまって」


 そう。シルヴィアさんから依頼を受けて、3週間経過してしまったのはこのせいなのだ。

 災害級の機械獣を倒すための弾薬として、メタルイーターの大量生産をしなければならなかった。

 その数およそ一万。

 自己破壊時間も伸ばす必要もあったから、その調整と大量生産で3週間掛かったのだ。


 ちなみにMEランサーという討伐隊考案の兵器に関しては、パーツだけエルガスや他の各街で製造し現地――つまりケーテン砂漠で組み立てるらしい。

 メタルイーター以外のパーツは全てケーテン砂漠で既に組み立て済み。

 あとはこのナノマシンの弾薬を持っていけば完成とのことだ。

 弾薬は予備も含めて2発。

 これ以上は時間が足りなかった。


 だけれど、シルヴィアさんは、


「おかげで災害級の機械獣を倒す算段が整ったよ」


とそう言って微笑んだ。

 もしかしたら満足してはいないかもしれないが、そこはタンクさんの働きも労ってのことだろう。


「じゃあそろそろ行こうか。時間ももうあまりない」


 災害級の機械獣が動き出すまであと1週間もない。


 それに機械獣には武器に反応する習性がある。

 もしケーテン砂漠で組み立てたMEランサーが、機械獣に見つかってしまえば、機械獣たちはまっさきにその兵器を破壊しにくるだろう。


 メタルイーターを組み込む前に破壊されれば、もはや打つ手がない。

 できるだけ急いだほうがよいとのことで、今回のメタルイーターの運搬では、シルヴィアさんと僕の2人で行く。


 もちろん僕が運搬役で、シルヴィアさんが護衛だ。

 討伐隊長官であるシルヴィアさんが護衛になるなんて、名誉なことだ。


 とにかく、準備もできたことだ。

 忘れ物もない。ライトもちゃんと機能している。


 僕はシルヴィアさんの方を向くと、「はい」と一言、返事して荷物を背負い直した。


「いってらっはーい」


 そう可愛く手を振るニコちゃんに「うん。いってくる」と手を振り返し、


「行きましょう!」


と僕はシルヴィアさんに言う。


「あぁ、そうだ」


 そんな僕とニコちゃんの様子を交互に見ていたシルヴィアさん。

 思い出したようにキャリーに近づくと、


「これを渡しておく」


と何かが書かれた紙を渡した。


「? これって?」


「ケーテン砂漠にある討伐隊野営地の連絡先だ。

 一応、フリーとはいえ、トランスの運び屋を討伐隊に貸してもらうんだ。

 何かあった時のために必要だと思ってな」


「なるほどね〜。ふふ……相変わらず律儀なんだから」


 キャリ姉はシルヴィアさんの行為に懐かしむように笑みを溢すと、


「まぁ一応貰っておく! 連絡することはないだろうけど」


と渡された紙をポッケの中に入れた。

 シルヴィアさんはその様子を「うむ」と満足そうに頷くと、


「よし。では運び屋レオ・ポーター。ケーテン砂漠まで行くぞ」


「はい!」


 ケーテン砂漠に向かって走り始めた。

 僕もその後を追う。


 出来るだけ迅速に。丁寧に。

 エルガスの危機を救うために。


「――やぁ、君たち。どうしたんだい? こんなところで全員揃って」


 後ろでそんな声がしたのも知らずに。

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