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弱虫運び屋の右腕は殺人オートマタ  作者: 久芳 流
第3章 街を跳ぶ運び屋

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第21話 原因調査報告

「……来た」


 工場の屋根から見渡すと、ちょうど()()()が踊りながらこちらに走ってくるのが見えた。


 壁や車、人にぶつかりそうになる度に彼はパフォーマンスとも言えるほどの激しい動きで避けてみせた。

 高精度なセンサーと無制限の能力のおかげだ。

 トップスピードで走行し続ける彼には障害をギリギリで感知できる機能が備わっている。


 まぁこれは僕の知識ではなく、ライトの分析だけど。


『私にもあれくらい可能です』


と何故か淡々とした口調で対抗心を燃やしていたのは面白かった。


「あとどれくらいでタンクさんの工場に着きそう?」


『あの速度ならおよそ10秒後には到着します』


「そうか」


『カウントしますか?』


「いや、いいよ」


 そう言って、僕は立ち上がる。


「タンクさんのところの荷物を受け取ったら、追いかける」


『承知しました』


 ライトが言い終えるかどうかのタイミングで、運び屋は武器工場フィラメントにたどり着いた。

 砂埃が高く舞うほどのドリフトをしつつ工場の中へ。

 工場の中には専用の受け渡し棚がある。

 運び屋はその棚にある梱包済み荷物を問答無用で受け取る。

 荷物に書いてあるバーコードをスキャンして住所を確定すると、運び屋はすぐさま工場を去っていくのだ。


「出てきた! 行くよ」


『承知』


 短いやり取りをすると、僕たちは屋根から飛び降りた。

 その瞬間、ライトは腕を伸ばす。

 伸びた腕の先が屋根を掴むと、僕らは円弧を描いて飛び、運び屋を追いかけた。


 運び屋はライトと同じように形状が変形する。

 荷物を前に持つと、荷物を包むように腕が膜状になりガッチリホールドしている。

 そう簡単には落ちることはない。


 だけど、運び屋の動き自体が激しい。

 荷物を持っていても、障害をギリギリで避けてアクロバットを決めている。

 あれで荷物が無事である方が不思議だ。

 タンクさんの工場で製造した精密機器なら特に。


 確かタンクさんの工場で造ったやつの中で、すぐに壊れる超精密な爆弾(?)もあったはずだ。

 爆発しても人には全く影響がなくて周りの機器を壊すとのことで、確かタンクさんは特許を取ってたはずだ。

 もしかしたらオートマタが激しく動く中、それが壊れたか誤作動したのかもしれない。


 僕は苦虫を噛み潰したような顔でその運び屋を追いかけ続けた。


 あの運び屋の名はフェデック製配達兼戦闘オートマタ。

 僕の前いた会社が開発したオートマタであり、僕が解雇された要因でもあった。


★★★


「――最終的にはこのような状態になってました」


 戻ってきた僕は、フィラメントの事務室で回収した荷物の中身をタンクさんに見せた。

 案の定、例の爆弾が壊れていた形跡もあった。

 泥団子が衝撃で崩れ落ちてしまったように、外郭が崩れて中身もボロボロと砂のように崩れていた。


「お客様も手を触れていません」


 タンクさんが疑っているトランスの従業員が確認して武器工場フィラメント(ここ)まで持ってきたんだけどね。

 まだ信じられないなら、タンクさん達が確認しにいけばいい。


 だけど。


「そうか……」


 タンクさんは顔を両手で覆う。


「やっぱりか」


 そうぼやいているということは薄々勘付いていたのか。

 運び屋会社フェデックは先代社長の頃から付き合いがあるタンクさんだ。

 そう簡単には信じたくはなかったのだろう。


「あの……それで、どうされるおつもりですか?」


「あ……?」


 タンクさんは疲れたような目で僕を見る。


「そうだな。とりあえずフェデックとの契約は打ち切りだ」


「そう……ですよね」


 原因がフェデックなら、そうせざるを得ない。


「だが、そうなると俺たちが届けなきゃいけなくなる」


 運び屋会社はエルガスではフェデックのみ。

 それ以外となると街外の会社になるが、当然今までよりも遥かに――おそらく7〜8割ほど高くなる。

 エルガス内のみで出荷するのにそんなバカ高い金は払えない。


 だったら自分達で届けた方がいいのだが――。


「うちのバカどもは製品造るだけで手一杯。

 それに礼儀もなってない。とてもじゃないが、荷物を届けさせるなんて無理な話だ」


 顰めっ面をしてタンクさんは困ったようにソファに深くもたれた。


「チッ。エルガスには、なんで運び屋会社がひとつしかないんだ!」


 舌打ちをして悪態をつくタンクさん。

 僕もその気持ちがよくわかる。

 クビにされた時、フェデック以外の同じ職がなくて路頭に迷いかけたから。


 幸いキャリ姉が雇ってくれたからよかったけど。

 それがなかったら今頃、のたれ死んでいたかも。


「それじゃあ僕はこれで」


 原因はわかった。

 タンクさんにも報告したし、その証拠も運んだ。

 一応、和解もできたし、もうここにいても僕ができることはない。

 冷たいけど、あとはタンクさん達が決めることだ。


「あぁ。まぁ……今回はありがとうな」


 力無くタンクさんは手を挙げて礼をする。

 それを見届け、僕は事務室を出ようとした――、


「工場長、いますか?」


 ところでノックもなく扉が開き、一人の青年が入ってきた。

 作業着姿で油臭い。どうやら武器工場フィラメントの従業員みたいだった。


「バカヤロウ! ノックぐらいしろ! 客が来てんだぞ!」


 すぐさまタンクさんは顔を真っ赤にしてそう怒鳴る。

 青年は直立して


「は、はいぃ!! すみませんでした!」


と頭を下げ、事務室から出ようとするが、


「あれ? レオくん?」


と目を丸くして僕を見てきた。


「え? あ、そうです」


「集荷しに来た時、話した以来だね!」


「はぁ……」


 はて。誰だったけ?


 武器工場フィラメントも運び屋として僕が担当していた。

 けれど集荷に行く時に会う人はまちまちで、正直覚えていられない。


「てめぇ! いい加減に――」


「工場長、またレオくんに戻すんですか?」


「あ?」


 タンクさんの怒鳴りを遮るように、嬉しそうに青年がそう話しかけると、タンクさんが止まった。

 ……嫌な予感がする。


「あのオートマタは味気ないですからね!

 世間話もせずに受け取ったらバイバイって感じで。

 やっぱり人の暖かみというか。

 荷物を渡す時もそういうのが必要というか」


 これはもうすぐにでも立ち去った方がいい!


「じ、じゃあ僕はこれで――」


「そうか! でかした! テメェ!」


 挨拶しようとしたところで、ガッチリと左手首をタンクさんに掴まれた。

 その顔はとても満面の笑みで、獲物を捕らえた狩人のような目をしていた。


「い、いやぁ……あの、タンクさん?

 僕は、あの、キャリ姉の……」


「お前が俺たちの荷物を運べばいいんじゃねぇか!」


「……ひぃぃ……っ」

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