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弱虫運び屋の右腕は殺人オートマタ  作者: 久芳 流
第3章 街を跳ぶ運び屋
19/80

第19話 全ての演算は殺人に通ず 後編

 僕の右腕はもう感覚がない。

 ぐにゅぐにゅと歪に変形し、殺意ある形状に形を変えていた。

 親指、人差し指、中指が重なり、薬指、小指が融合する。

 二本になった指はそれぞれ鋭利な鎌となり、腕からも――攻撃が外れた場合の――保険の刃が何本も出現した。

 その間、コンマ2秒ほど。


 危険性を認識したのはそのすぐあとだ。


「避けて!!」


 僕が必死に叫ぶのと同時にライトはタンクさん目掛けて発進。

 タンクさんとキャリ姉も僕の叫びで気が付いたようで、その()()をぎょっとした目で見ていた。


 ライトは冷徹にタンクさん目掛けて命を刈り取ろうとする。

 伸びる右腕を僕は左手で掴む。


「いぃぃぃ外れろぉぉおお!」


 軌道を逸らそうと竿を引くように右腕を持ち上げる。

 キャリ姉もタンクさんの胸を思いっきり押した。


「いて! なにするん――!!??」


 尻餅をついて悪態をつこうとしたタンクさん。

 その目の前を刃物が通り過ぎた。


「うぎゃあぁぁあ!」


 悲鳴を上げてタンクさんは鼻先を抑えた。

 どうやら刃が掠めたようだ。

 だけどまだ死んでいない!


 とはいえライトはまだ命令を遂行していない!

 軌道が外れたとわかると、ライトは先端の進行方向を変えタンクさんに照準を合わせる。


「ひ、ひぃぃぃいい!」


 その殺気に気が付いたのか、タンクさんは顔を真っ青にしてライトから逃げるように後ずさる。

 ライトのスピードが一気に上がる。

 速度ゼロから予備動作なしの加速。

 ライトのブレードがタンクさんに向かって迫ってきた。

 

 間に合え!!


「ライト、攻撃中止! 殺すな!!」


「あ、あぁぁぁああああああ! し、死ぬぅぅうう!」


 ――――――――。


 静寂。

 ささやかな空気の流れる音が聞こえるほどの静けさがこの場を包んだ。

 ライトはタンクさんの目の前で静止していた。


「あ、あぁぁ……」


 タンクさんの声。どうやらまだ生きている。


『――攻撃中止命令を受け付けました。直ちに中止プロセスを開始します』


 ライトのそんな声が聞こえ、右腕から飛び出た刃物が縮小していった。

 元の右腕の形に戻ろうとしているみたいだ。


 よ、よかった……。


 僕は安堵の息を吐き、キャリ姉も安心したように壁に背をついた。

 自分の命が助かったとわかると、タンクさんは僕らを見回し、そして、僕の右腕を恐ろしいものを見るかのように観ると、

 

「な、なんなんだ……お前ら……? え? こ、殺される!? ひぃぃぃいいい!」


 錯乱したように声を上げ、立ち上がろうとして躓きつつ慌ててこの場から去っていった。

 その気持ちはわからなくもない。

 僕だって逆の立場なら同じ反応をすると思う。


 とにかく、人の命を奪わなくてよかった。


「レオ……?」


 しばらくして、キャリ姉がそう話しかけてきた。

 キャリ姉も薄っすら冷や汗をかいていた。


「なに? キャリ姉……」


「とりあえず、酒場に戻る?」


「……そうだね」


 酒場にはニコちゃんを残してしまった。

 タンクさんも軽い怪我だけで、命に別状はないんだ。

 とりあえず落ち着くためにも、ご飯を食べて一息つこう。

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