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第7話 内定祝いの準備

 店を出る間際に海斗は、森幸乃に大事な話をした。

「幸乃さん、明日はクラスの用事が有って部活は休むからね。それと四日後の放課後、時間空いているかな?」

「うん、別に予定ないけど……」

「写真部で和泉部長が蓮に相談したい事が有るって言うんだ。一緒に聞いてから喫茶「純」でお茶をするから、時間を空けておいてね。まあ、前日に言っても良かったんだけどね」

 森幸乃は微笑んだ。

「どんな相談をするのかしら……蓮君、もしかして部長の相談かもよ?!」

 松本蓮は海斗の話法は上手だと思って聞いていたが、自分に振られるとは思ってもいなかった。

「あっ、ああ、部長の相談かもね。どうしよう?」

「なんか、やる気がなさそうね」

 鎌倉美月は話題を変えた。

「幸乃さん、就職先からは定期的に連絡は来ていますか?」

「ええ、この前も来たわ。就職するまでに事故や不祥事を起こさないようにだってさ。細かい会社ね」

「やっぱ、大手ね。それで就職前に研修は有るの?」

「それが、来月有るのよ。そこで始めて同期の顔合わせが有るの。ちょっと楽しみだわ」

 森幸乃は社会人への準備を順調に進めていた。幸乃の話を聞いて、海斗達は店を後にした。


 (幸乃の内定祝い当日)

 放課後になり皆は、海斗の机に集まり行動の確認をした。写真部の三人は森幸乃を一時間ほど待機させて、その間に残りの仲間は喫茶「純」で内定祝いの準備をする事となっていた。そして行動に移した。


 海斗達は森幸乃と合流し写真部に居た。予定時刻になるまで、待機しなければ成らなかった。四人は来るハズのない和泉部長を待っていた。三十分が過ぎた頃、本当に和泉部長が顔を出した。松本蓮は泣きそうな顔をして鎌倉美月を見つめた。

 鎌倉美月は眉間にシワを寄せ、怒った顔で返した。まるで男だろ、自分で何とかしろと言わんばかりだ。

 すると和泉部長は松本蓮に歩み寄り話しかけた。

「ちょうど良かった松本君、君に相談したい事が有って、ちょっと良いかな」

 松本蓮は、おどおどして答えた。

「は、はい、何でしょうか」

「実は次期写真部の部長の後継をお願い出来ないかと思ってさ、写真にかける情熱や技術を考えると君しかいないんだ。もう三学期が始まっただろ、そろそろ動かなくてはいけないんだ。推薦してもいいかな」

 皆の目が輝いた。松本蓮は本当の話になってビックリした。

「えっ、俺でいいんですか?」

「ああ、君に継いで貰いたいんだ。今すぐ返事をしなくて良いよ。良く考えてから教えてよ」

 和泉部長は離れ、他の部員と話し始めた。

 森幸乃は喜んだ。

「ほら、言った通りじゃない! でも相談の割にはあっけないのね」

 海斗も美月も驚いた。

「なあ蓮、素直に喜こぼうぜ!」

「そうよ、喜びましょう。私も驚いたわ」

 海斗達は予定時刻を遅れ、学校を出発した。鎌倉美月は出発したことをSNSで連絡を入れた。


 (喫茶「純」にて)

 京野颯太は皆を引き連れ、喫茶「純」のドアを開けた。

「マスターこんにちは! 今日はご馳走になります。」

「やあ、いらっしゃい。皆!」

 皆はマスターと挨拶を交わした。店は既に貸し切りになっていたので、早々に壁を飾り付けを始めた。正面の壁には「幸乃さん内定おめでとう」と書かれた模造紙が張られた。マスターは飾り付けられる店内を見て、目頭が熱くなった。

 飾り付けが終わると皆は、席に着いて到着を待った。席では数人の仲間がクラッカーを持って待機した。


 海斗達は少し遅れて喫茶「純」に到着すると、いつもなら海斗が先に入るが、海斗はドアを開けると、森幸乃を先に通した。

「幸乃さん、お先にどうぞ!」

「変な海斗君、ただ今、お父さん!」


「幸乃さん、内定おめでとう! パン、パン!」

 仲間は一斉にお祝いをした。クラッカーがなり、森幸乃は口に手を当てて立ち止まった。海斗は森幸乃の背中を押して、店内へ案内した。

「幸乃さん、内定おめでとう。マスターから内緒にするように頼まれていたんだ」

「皆、有り難う、有り難うお父さん、とてもビックリしたわ。それに、とっても嬉しいわ!」


 森幸乃は仲間を見て、店内に目を移すと、飾られた壁に祝う文字が目に入った。すると涙がこぼれた。京野颯太は迎入れるように席を立ち両手を広げた。感動した森幸乃はヨタヨタと歩きながら京野颯太に歩み寄った。だがしかし百八十度回転して海斗の胸に飛び込んだ。

「海斗君、私、嬉しい! 君達と出会えてホント良かったよ!」

 仲間達は京野颯太がスカされた事でクスクスと笑らった。

 京野颯太は海斗に言った。

「海斗、レディーをいつまでも立たして置かないで席に案内しなよ」

 遅れて合流した仲間も席についた。目の前には手の込んだオードブルが並んでいた。


 海斗は進行役となった。

「それではマスターの計らいで、本日森幸乃さんの内定のお祝いの会を開きます。幸乃さん、内定おめでとう御座います。皆の知っている通り、颯太の会社にお世話になる事になりました。思い起こせば幸乃さんと颯太の出会いは最悪でした。だが颯太の熱意ある対応で、めでたく今日の日を迎えました……」

 遠藤駿がチャチャを入れた。

「おい海斗、結婚式のスピーチみたいだぞ!」

 皆は笑い、海斗は仕切り直した。

「エヘン、まあ出会いはさておき、社会人の颯太の力は凄いな。お陰で幸乃さんの夢である、港に関係する仕事に就く入り口に立ちました。またマスターには手の込んだ料理をご馳走して頂き、有り難う御座います。それでは乾杯をしましょう」


 皆は席を立ちグラスを持ち上げた。

「幸乃さん内定おめでとう御座います。乾杯!」

「カンパーイ!」

 一口付けると拍手をして席に着いた。拍手をして、しばしご歓談になった。森幸乃はカウンター越しにハンカチを持ちながらマスターと話をしていた。

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