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第6話 キタムラ屋

 翌日、海斗は昼間のうちに森幸乃へ、放課後の写真部を休むメールを入れた。放課後になると仲間と元町商店街にやってきた。

 鎌倉美月は松本蓮と並んで歩いていた。

「ねえ蓮、やっぱ平日ね。とっても空いているわ」

「ああ、そうだね。寂しいくらいだね。こんな時に入店すると店員に張り付かれないのかな?」

 林莉子は答えた。

「蓮、店員だって暇じゃ無いわ。下見に来たって言えば大丈夫よ!」

「そっか、買わない学生に張り付くほど暇じゃ無いか。そう言えばあの店、キタムラ屋とキタムラ屋K2が有ったよね? 確かどっちも同じロゴだよ。前から不思議に思っていたけど、何が違うんだ?」

 中山美咲は松本蓮を見て答えた。

「確か兄弟で経営しているって、お母さんから聞いた事があるわ。事情が有ったようだけれど。のれん分けの様なものじゃないの。それとキタムラ屋K2の方がカジュアル向けと言う人がいるけど、どちらも同じ様なものが並んでいるわよ」

 皆は関心をした。松本蓮は気軽に質問をした。

「同じ様な物が並んでいるなら、どっちの店に行こうか?!」

 女子は松本蓮を睨んだ。鎌倉美月が代表して答えた。

「どっちもよ! 折角、近所に有るんだから両方見るのよ!」


 松本蓮は腑に落ちない顔をした。海斗も松本蓮に同感だったが、買い物となると女子との温度差が生まれる事は函館で買い物をした時に学んでいたので口を挟まなかった。


 しばらく商店街を歩いていると、小野梨沙は小綺麗な小さい水栓に目が止まった。

「ねえ海斗、アレなーに?」

 海斗は小野梨沙に微笑み答えた。

「あー、あれね。ワンちゃん用の水飲み場なんだよ。珍しいよね、この商店街はペットに優しいんだ」

「えー! 珍しいわね。本町はワンチャンに優しいのね」

そして皆は到着をした。


 どちらの店でもプレゼントを見終えると、自分たちに興味のある物に手を伸ばした。むしろ、その時間の方が長かった。海斗も松本蓮も退屈をして店外で待機した。

「なあ海斗、函館の修学旅行を思い出さないか?」

「ププ、俺もそう思っていた。やっぱり女子の買い物は長いね」


 二人は暇を持て余していると、女子は満足げにお店を出て来た。

 鎌倉美月は男子に報告をした。

「値段も手頃で良いものが有ったわよ。荷物も沢山入る手頃なトートバッグが見つかったわ。在庫を聞いたら定番商品だから心配は無いそうよ」

 松本蓮は本題が耳に入って来なかった。

「美月、俺もう待ちくたびれたよー」

 すると鎌倉美月の表情が変わった。

「蓮、なに言ってんの? 待ってるだけで疲れるの? 変な事言わないでよね!」

 林莉子は思い返した。

「ねえ、このくだり、どっかで見なかったかしら?! ヤダ、デジャヴね!」

 中山美咲は笑った。

「ププ、函館の時に同じ事が有ったのよ! 二人とも変わらないのねー」

皆は笑った。松本蓮と鎌倉美月も顔を見合わせて照れ笑いをした。


 海斗は近所の有名店を思い出した。

「ねえ、折角だから、食パンを買って帰らないか?」

松本蓮と鎌倉美月はピンと来た。他の三人は首を傾げた。

「日本で最初に食パンを出したお店が、この近くに有るんだよ!」

 小野梨紗は目が点になった。

「日本で最初のパン屋さんって事? えー!」

「ああ、そうだよ。明治時代に外国人が多く居た横浜だから出来たんだろうね」

「海斗、行って見たい!」


 皆はウチキパンに到着をした。店構えはそれ程大きなお店ではなく、親しみ易いお店だった。イングランドと言う食パンを一斤ずつ購入した。小野梨紗に限っては二斤買っていた。彼女の家庭はご飯を炊く習慣が無かったので多めに買ったのだ。皆は発祥の味を楽しみして帰宅した。


 後日海斗は教室で、京野グループに購入予定のバックの写真と金額を提示した。皆の了解を得て改めで買い求めた。


 (内定祝いの四日前・喫茶「純」にて)

 海斗達は写真部で、森幸乃と合流し喫茶「純」に向かった。

「マスター、今日は!」

「やあ、いらっしゃい、海斗君、蓮君、美月さん。お帰り幸乃」

皆は驚いてから微笑んだ。マスターも親しくなりたかったのだ。

「私もファーストネームで呼ばして貰うよ! 良かったかな?」

 海斗は答えた。

「もちろんだよマスター! 宜しくお願いします」

 鎌倉美月は照れた。

「マスターにファーストネームで呼ばれると、親戚のおじさんに言われているようね。親しく感じるわ!」

 マスターは笑った。皆は席に向かい、海斗はマスターに小声で話した。

「あと四日ですよ。予定通り全員参加で変更は有りません。それと明日、幸乃さんへ内定祝いのプレゼントを買いに行く予定です。今から幸乃さんの喜ぶ顔が楽しみです!」

 マスターは遠慮をした。

「ええ、わざわざ悪いよ。気を使わないでくれ」

「マスター、気にしないで下さい。皆の気持ちですから」


 海斗も遅れて皆の居る席に着いた。森幸乃は海斗を見つめた。

「ねえ、お父さんと何を話していたの?」

「やあ、ちょっとね。……そうそう、蓮が面白い動画を蓮が撮ったんだよ。とっても可笑しいんだ。きっと見て大笑いをするよ」

 森幸乃は微笑み松本蓮を見た。

「蓮君、見せて、見せて!」


 松本蓮は書き初めの、京野颯太の動画をポリュームを上げて再生した。

「キャー! 面白いわ。えっ何々、購買に行っちゃったの?! やだー、瞼がパチパチしているー! コレ可笑しいね!」

 森幸乃はテープルを叩いて笑った。彼女は松本蓮からスマホを借りて、マスターに見せた。マスターも大きな声で笑った。

 海斗が状況を話した。

「颯太が居眠りしている所に、蓮が書き入れたんだ」松本蓮も続いた。

「あいつ、静かに寝ていたから言うの忘れちゃって、そのまま昼休みに入ったんだ。ご飯を食べ始めたら海斗に怒って来たんだよ。面白いから撮っちゃった。これ傑作動画だよね!」

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