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第43話 探 索

 小野梨紗はベンチの座り、お母さんに寄り添った。海斗と松本蓮はドーナツ広場とモーガン広場を探した。

「なあ海斗、大変な事になったな、早く見つかると良いね」

「ああ、一生懸命探そうよ」


 一方、京野颯太と森幸乃は担当エリアまで走っていた。

「幸乃さん、折角、楽しい時間だったのに。ホントに見つかるかなー?」

「そうね、本来なら楽しい一日のハズがね。でも、そんな日も有るのよ。何事も無ければ良いのだけれど」


 遠藤駿と田中拓海も走っていた。

「ハア、ハア、ねえ駿、待ってよ! なんで俺達一番遠いんだよ」

「ほら、文句言わずに走れよ、男だろ!」


 葵と陽菜はスイレン池に到着した。

「ねえ葵ちゃん、もしエマちゃんが溺れていたら、どうしよう?」

「やだー、私も怖いのよ。早く安心したいわ、でも一見そんな感じはしないわね」

 陽菜は一人の少女を見つけた。二人は恐る恐る掛けよると日本人だった。


 海斗達は自分の探索エリアを探し終え、うつむいてベンチに戻った。梨沙は海斗を見つめると海斗は顔を横に振った。海斗のしぐさを見てお母さんは両手で顔を覆い泣き出した。

 梨紗は友達が公園全体を、まだまだ探している事と伝え励ました。皆も必死になって自分のエリアを探した。先程まで笑っていた事が真逆になった。お母さんのスマホからタイマーの時間が成った。インスリンを打つ時間になったがSNSから情報は上がって来なかった。お母さんは泣きじゃくり少年は母を慰めた。


 海斗はいたたまれなくなって松本蓮を見つめると松本蓮も見つめ返した。

「蓮、やっぱり入るか?!」

 松本蓮も力強く返した。

「おー!、やるしかないだろ!」

 海斗と松本蓮は、立ち入り禁止のフェンスをよじ登り、目の前に有る建物に忍び込んだ。


 この建物は旧一等馬見所と呼び、競馬場だった頃のスタンド席が現存した。明治時代に建てられた八階階程の高さの建物はコース全体を見渡す事の出来るのだ。まさに迷子探しには打って付けの建物だった。しかし建物は保存管理をしないまま高いフェンスに囲まれ進入禁止の看板が掲示されていた。


 海斗達は入り口を見付け最上階まで駆け上った。やはり公園全体が見渡せた。本牧の海から磯子の海までも見渡せる見晴らしの良い場所だった。

 松本蓮は望遠レンズを使い公園中を探した。公園内には必死で探す仲間達の姿も見る事が出来た。

「あー! 小さい女の子が見えた! 馬の博物館の入り口の門から北側に百メートルぐらいの所、芝生に小さな女の子が倒れていよ! なあ海斗見てくれよ」

 海斗もレンズを覗いた。服装も同じ、それらしい子供が一人でも芝生に倒れていたのだ。海斗はカメラを蓮に戻して、SNSに位置情報を載せた。京野颯太と森幸乃が担当するエリアだった。二人はSNSを確認して乗馬場から至急現地に向かった。

 京野颯太は横たわる少女を発見した。森幸乃も見付け、口に手を当てた。

「えー、嘘! 颯太君、女の子が倒れているわ!」

「幸乃さん、冷静になりましょう」

 京野颯太はエマの肩を優しく叩いた。

「アーユー、エマ? アーユーオーケイ?」

 エマは小さな声で答えた。

「イエス アイム エマ」

「アイムシック、ヘルプ ママ」

「オーケー」

 京野颯太は森幸乃を見つめた。

「やっぱりエマちゃんだよ。調子が悪い、助けてママだって」

「颯太君、英語が出来るのね、見直したわ!」


 京野颯太は照れながら、SNSに書き込んだ。

「見付かったよ! お母さんに助けを求めている、今から抱きかかえて行くからインスリンの準備をしてくれ!」

 京野颯太は森幸乃を見つめた。

「それと駿を呼んで下さい。俺、体力続かないからきっとバテるよ!」

 京野颯太は女の子をおんぶして走り出した。森幸乃は遠藤駿に電話をかけ、事情を話して後を追いかけてもらうようにした。


 小野梨紗は発見した事をお母さんに伝えると、お母さんは安心したが手が震えていた。梨紗は落ち着かせてインスリンの準備をさせた。皆は探索を止め、母親の居るベンチに向かった。

 海斗と松本蓮もベンチ戻った。すると遠藤俊と森幸乃が走ってきた。遠藤駿は背中からエマを降ろすと、既に意識が無くなっていた。

 お母さんは冷静にエマのお腹にインスリンを打った。仲間達は続々と戻り事態を見守った。お母さんは注射を終えると、エマに何度も呼びかけた。


 皆は息を呑んだ。するとエマが目を冷ました。

「マ・マー」

 エマは目をゆっくり開けると、お母さんはエマを抱きしめた。皆は一斉に歓声を上げた。

「キャー、ヤッター、うぉー!」

 仲間はお互いの肩を抱き喜んだ。


 エマの様態が落ち着くと、お母さんは梨沙を通して仲間にお礼を言った。

「皆さんのお陰でエマを救う事が出来きました。本当に有り難う」

 皆は嬉しくなった。小野梨紗はエマを見た。

「エマ、良かったわ。でも、どうして一人で離れたの?」

 エマは小さな声で答えた。

「私、お馬さんが見たかったの、お兄ちゃんもお母さんも忙しそうだったから、一人で会いに行ったの。近くまでいったら、体が動かなくなって芝生で休んだの」

 お母さんは再びエマを抱きしめた。

「もー、私の可愛いエマ、あなたが死んだらどうするの! 今度は言ってね、お母さんが連れて行ってあげるから。ホント、皆さんが居てくれて助かりました」

 梨沙は通訳し、皆も感動をしていた。


 橋本七海は言った。

「ねえ海斗、私は見つけられなかったけど、力になれたのかな?」

「ああ、もちろんだよ! 皆が計画的に探索をしたから見付ける事が出来たんだ。誰が発見者になっても可笑しくないからね。ホントに良かった」


 京野颯太は首を傾げた。

「なあ海斗、お前達はどうやって、見付け出せたんだ?!」

 海斗は、目線をスタンドに向けた。

「強引に上がったんだよ。この建物はコース全体が見渡せるように設計されたスタンドなんだ。解決策が有るのに使わない手は無いだろ。最上階まで上がって、蓮が望遠レンズで倒れている女の子を発見したんだよ!」

 皆は一斉に言って驚いた。

「えー、入ったのー!」

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