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第40話 根岸森林公園

 長谷川先生は通知表を配り終えると,新学期の登校日と諸連絡を伝え一年を振り返った。

「三学期のテーマは絆でした。君達の様子を見ていれば良く解ります。新学期になって別々のクラスになっても、絆があれば問題解決にきっと役に立つでしょう。学生時代の友達は遠慮が無くて、社会に出た時にきっと役に立ちます。だから三年生になっても、新しい友達の輪をどんどん増やして下さい。

 このクラスは先生に、私にいっぱい思い出を残してくれました。先生の一番の思いでは学園祭です。素晴らしい企画を提案した佐藤、クラスをまとめた山田、解決策の提案をした京野、生徒会に交渉をした伏見、集客に貢献した橋本、さらに皆の協力が有って模擬店の成功に繋がりました」

 長谷川先生は目頭を押さえて声を震わせた。

「二日目の午後はミスコンに皆で応援に行って、橋本も小野も二人とも受賞して先生は大変、感動しました。先生はこのクラスが大スキです。まだまだ全員の成長を見守っていたいのですが今日で終わりです。一年間、私の生徒でいてくれて有り難う御座いました」


 長谷川先生は頭を下げると、皆は拍手で敬意を表した。拍手の中、山田委員長が席を立つと拍手が鳴りやんだ。皆も席を立ち、山田委員長は頭を下げた。

「先生、一年間、有り難う御座いました」

 皆も続いた。

「一年間、有り難う御座いました」

 生徒たちは頭を上げ再び拍手をした。山田委員長が考えた小さな演出だった。長谷川先生は目頭を押さえながら喜んだ。

「もー、先生を喜ばすなよ! 有り難う。それじゃあ、ホントに終わりだ。日直頼む!」

 日直はホームルームを締める号令をかけた。

「気よ付け、礼!」

 最後の礼をすると、生徒たちは教壇に集った。海斗達も集まり、長谷川先生に最後の挨拶を交わした。

 山田委員長は声をかけた。

「松本君、集合写真を頼むよ」

「ああ、まかせて!」


 皆は机を下げて空間を作った。生徒は黒板を背にして並び、長谷川先生は中心に座った。松本蓮は一眼レフを三脚に固定しセルフタイマーをかけた。皆と並ぶとシャッターが落ちた。クラスのSNSのグループに写真を上げると、皆はスマホを見て笑顔になったのだ。もちろん長谷川先生も喜んだ。皆は机を戻し名残惜しく解散となった。


 海斗グループと京野グループが集まると、皆は顔を見合わせると微笑んだ。

海斗は仲間に話しかけた。

「それじゃあ皆、桜を見に行こうか!」

皆は元気よく答えた。

「オー!」


 皆は元町のバス停に向かった。鎌倉美月は森幸乃に連絡を入れた。バス停の到着時間を知らせたのだ。松本蓮はフェリサの二人に、中山美咲は陽菜に、海斗は葵に連絡を入れた。現地集合する仲間達も安心して向かう事が出来たのだ。途中のコンビニで食べ物、お菓子、ジュースを購入し花見の準備を整えた。


 バス停に着くと森幸乃が待っていた。京野颯太は大きく手を振った。

「幸乃さーん!」

 森幸乃は嬉しそうに答えた。

「みんなー、久しぶりー!」

 皆は挨拶をした交わし、自分達の鞄に土産のキーホルダーを見せつけたのだ。北海道のお土産のお礼をすると、森幸乃は喜んだ。

「皆、キーホルダー付けてくれて有り難う!」

 遠藤駿は森幸乃を見た。

「お礼を言うのはコッチの方だよ! クラス替えが目の前の時期に、お揃いのキーホルダーを付けていると、同じチームみたいで安心出来るんだ。しかも小樽じゃなきゃ買えないキーホルダーは特別なんだよ。幸乃さん有り難う」


「そう言ってくれると嬉しいわ。私は、まさかもう一度制服に袖を通すとは思わなかったわ。数週間までは当り前に着ていたのにね、なんだか恥ずかしいわ」

 鎌倉美月もお礼を言った。

「幸乃さん、私達のプレゼントしたバックも持って来てくれたのね、有り難う」

「そう、皆に会うから持って来たの。研修に行く時にも浸かっているのよ。素敵なバックを有り難う」

 森幸乃が加わり根岸森林公園に向かった。


 根岸線森林公園は東京ドーム約四個分の敷地に春夏秋冬の自然を感じ取れる樹木が整備され、芝生の広場や池の有る公園である。この時期は三百五十本の大きなソメイヨシノが開花し、横浜市内でも桜の名所として有名な所である。


 海斗達は根岸森林公園前の、旭台バス停で下りて入園した。大きな樹木が並ぶ道を通り抜けると中央に芝生の広場が広がった。若草色の芝生の先に見事な桜が目に入ると皆は高揚し笑顔になった。

 小野梨沙は海斗の手を取り走り出した。

「わー―!」

 海斗グループでは良く見る衝動だったが、京野グループは驚いた。中山美咲も林莉子も全力で走り出し、松本蓮も鎌倉美月も続いた。


 京野グループも感じ取り、橋本七海は京野颯太の手を取り走り始めた。

「わー―!」

「な、なんだ?! 七海、転んじゃうよ」

 遠藤駿、佐藤美優、田中拓海、鈴木萌も続いて走った。

「キャー、わー!」

 京野グループも走ってみると、楽しかったのだ。


 小野梨沙は芝生広場の中央で足を止めた。息があがって荒い呼吸になった。

「あー、気持ち良い! ハア、ハア、ねえ海斗、とっても良い所ね!」

「ハア、ハア、そうだろう、すばらしい景色だね」

「ハア、ねえ莉子、綺麗ね!」

「うん美咲! とっても良いタイミングね!」

 松本蓮と鎌倉美月は見つめ合い微笑んだ。

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