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第38話 三人も行きませんか

 鎌倉美月は話し始めた。

「幸乃さんには敵わないわ。なんで解るのかしら? それじゃあ、私が話すね。今朝は男子が女子にクッキーを渡して仲がよかったのよ。お昼休みになって、放送部の番組が流れるでしょ。今日は三学期最後の放送でリクエストの多かった七海が生放送に呼ばれ、対談をしたのよ」

 森幸乃は目を輝かして聞いた。

「へー、ミスコン優勝者をゲストに呼ぶなんて、放送部もやるわね!」

「パーソナリティーは男子だから、好きなタイプとか色々掘り下げて聞いたの。そうしたら七海は、好きな人はクラスの中心にいるF君って言ったのよ! パーソナリティがそれはフシまで言ったら、放送時間の制限でエンディング曲が流れたのよ!」


 稲垣京香と桜井メイは歓声を上げた。

「キャー!」

 森幸乃は面白くて手を叩いて笑った。

「キャー! 校内放送で生告白したのね! ププ、京野君は振られちゃったのー! あー、私も放送を聞きたかったわ! 君達は面白すぎよ!」


「それからが問題なの。教室に戻った七海が机を並べて昼食を食べている私達に歩み寄ったの。海斗に今の放送聞いていたのか聞くと、七海は海斗の事が好きだって言ったのよ。それで美咲も梨紗もホッペを膨らませて会話が止まったの!」

稲垣京香と桜井メイは、空いた口を手で覆った。


 森幸乃はニヤリと微笑んだ。

「軽い修羅場ねー、キャー、それで、それで!」

「そうしたら困った海斗が席を立って、俺は好きな人がいるんだ。俺はBLで蓮が好きなんだって言い放ったのよ!」


「えー!!」

事情の知らない仲間はのけぞって驚いた。マスターは口に手を当てた。


 鎌倉美月は続けた。

「皆は目が点になったの。すると駿が見かねて、海斗が下手な嘘まで付いて困っているぞって言ったら、皆が笑い出したのよ!」


 森幸乃はテーブルを叩いて興奮をした。

「プハハ! キャー! 面白い! もー、勘弁してー!」

 海斗は真っ赤になった。

「でも何で橋本さんは京野君を止めて、海斗君を好きになったの?」

「それがねー、最近の颯太は幸乃さんにご執心で、グループ内の面倒見が悪くなっていたの。一緒に行動する事が多くなったウチのグループ長に憧れがあってね、つまり七海が颯太に愛想を尽かしたのよ」

 森幸乃は口に手を当てて興奮をした。

「ヤダー! 私は客観的な立場に居ると思っていたのに、微力な私も要因なのね。ププ、私って悪女ね-! プ、は、は、は」


 鎌倉美月は真剣な顔で答えた。

「幸乃さんは微力じゃ無いわよ。しっかり影響しているんだから!」

 京野颯太は困った顔で答えた。

「そうですよ幸乃さん、楽しそうにヤダーじゃないですよ。それで僕は皆に責められたんですからね。今日はお昼に面倒見が悪いと責められ、またココでも責められたんですよ」

「ププ、京野君は責められる日なのね。それで海斗君はどうやって事態を収拾したの?」


 海斗は頭を掻いた。

「もー、幸乃さんはお見通しなんだね。この仲間は仲が良くてクラス替えを目前にピリピリしているんだ。だから皆で過ごす時間を作ろうと思ったんだ。今年は桜が早いから終業式の後に、皆で桜を見に行く事を提案したんだ。皆でピクニックのように、お弁当を持って花見をしたら、楽しいかなって思ってさ」

 松本蓮が続けた。

「花見の計画をしたら七海はスーと力が抜けて、お腹すいちゃったって言って席に着いたんだ。ピリピリした空気が和んで、美咲も梨沙も中断した食事を始めたんだよ」


 森幸乃は微笑んだ。

「流石、海斗君ねー! 皆の気持ちが分かっているのね。ねえ京野君、何で空気が変わったと思う?」

「それは皆で過ごす花見が決まったからでしょ?」

「それも有るけど、橋本さんだって喧嘩を仕掛けている訳じゃ無いのよ。美咲さんだって梨紗さんだって、そのつもりは無いわ。引きぎわと言うか、解決方法を同時に探っていたのよ。君達が仲が良いのは、ココを大事にしているからよ。そのタイミングに提案するのが海斗君なの。だから空気が和らいだのよ!」

 鎌倉美月は感心をした。

「凄い! 幸乃さん。その通りです」


 京野颯太は海斗を見た。

「ホント? 海斗はそこまで考えて言っているのか?!」

 海斗は口を尖らせた。

「颯太だって喧嘩をしたく無い相手と争った時は、同時に落とし処を探すだろ?」

「ああ、確かに」

「そこに助言をする人が居れば助かるよね。颯太は多くの人の上に立つ人だから、ちゃんと考えないとね」

「今度は海斗から説教か!」


 森幸乃は両手を挙げて伸びをした。

「あー、君達は面白いなー! 青春しているねー。まさか海斗君のそばに居たい女の子が、また現れるとはビックリしちゃうわ。ねえ京野君、私もお花見行ってもいーい?」


 京野颯太は海斗を見た。海斗は答えた。

「颯太らしくないなあ、遠慮するなよ!」

 海斗は森幸乃、稲垣京香、桜井メイを見回した。

「終業式の放課後なんですが幸乃さんも、稲垣さんも桜井さんも、一緒に桜を見に行きませんか?」

三人は顔も見合わせて喜んだ。

「ヤッター!」


 マスターはカウンター越しにニッコリ笑った。鎌倉美月は海斗を見た。

「ねえ海斗、葵ちゃんと春菜ちゃんも呼んであげたら?」

「美月、有り難う。恐らく呼ばなくても来ると思うけど、ププッ! あの二人は耳も感も良いからね」

 皆は笑った。


 この後、お花見の時間と場所の詳細を確認した。フェリサの二人は同じ日に終業式だったので現地集合となった。お弁当持参で行う花見は皆の楽しみになった。

 海斗グループが六人、京野グループも六人、森幸乃、フェリサの二人と葵と陽菜、合わせて十七人の大所帯で花見をする事になったのだ。簡単なレジャーシートを用意するつもりだったが、間に合う大きさでは無かった。海斗と松本蓮はホームセンターに行き、大きなブルーシートを買い求め花見の準備を進めた。


 その日の夕食の時に海斗は、葵に花見の誘いをすると喜んで参加する事になった。もちろん陽菜の耳にもすぐ入り参加となった。

 海斗達が学校帰りに花見をするので、二人も学生服で参加するのだ。そう、春菜ちゃんの制服デビューが決まったのだ。海斗は翌日、皆に伝えると、森幸乃の服装が話題となった。鎌倉美月が事情を連絡すると森幸乃は悩みながら結論を出した。彼女も制服で参加する事となったのだ。

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