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第37話 「純」でもクッキー

 鎌倉美月は森幸乃に話しかけた。

「幸乃さん、数日ぶりなのに長く感じたわー。会いたかったよー」

「美月さん嬉しいわ! 放課後はいつも一緒に居たからね。私も会いたかった。海斗君も蓮君も元気そうね」

 松本蓮は森幸乃を見た。

「幸乃さんも元気そうで良かった。……ん? 幸乃さん太った?」

「エヘ、バレた。北海道は食べ物が美味しくて、食べ過ぎちゃった」

 海斗は鞄を開けた。

「北海道の話を聞く前に、これバレンタインのお返しです。それと稲垣さんと櫻井さんにも用意してあるからね。まずは幸乃さん、いつも楽しい時間を有り難う。就職しても体に気を付けて下さい」

「海斗君、有り難う、このクッキーとっても美味しかったわ。海斗君がこんなに美味しいクッキーが作れるなんて知らなかった」


「稲垣さん、また写真を撮りに行こうね」

「有り難う伏見君」


「いつも明るい櫻井さん、また楽しい時間を過ごそうね」

「はい、楽しみにし頂きます。有り難う」


 松本蓮もお礼を伝えクッキーを手渡した。女子も嬉しそうに受け取った。

櫻井メイはクッキーを大事そうに持っていた。

「いーなー、皆で作ったんでしょ。京野君に聞きました、私も行きたかったなー!」

 松本蓮は答えた。

「ホントはね、男子だけで作る予定だったの。それが誰かが漏らすから皆で作る焼き菓子教室に変更になっちゃたんだ。初めからそのつもりだったら、いつもの様に声をかけたんだけどね」

 海斗も続いた。

「でもさ、稲垣さんと櫻井さんには、本来の渡し方が出来て良かった。クッキー作りに参加した女子はホワイトデーらしくなかったからね。とっても美味しいクッキーだから楽しみに食べてね」

 櫻井メイは羨ましいそうに海斗を見つめた。

「それでも一緒にクッキーを作りたかったのー! それにホワイトデーのクッキーも手渡して欲しいの。女の子はそう言うものなのよ、ねえ幸乃さん!」


 森幸乃は海斗を見つめた。

「そうよ、前にも私が同じ事を言わなかったかしら。女の子は欲張りなのよ、海斗君?!」

 海斗は頭を掻いた。

「そうでしたね。そうだ! また何か作ろうよ。颯太の家は大きいから二人増えても問題ないだろ?」

 京野颯太は答えた。

「ああ、いつでも言ってくれ! 客間が空いている時ならいつでも良いよ」

 稲垣京香と櫻井メイも喜んだ。稲垣京香は言った。

「やっぱり横浜山手の友達は楽しいよね」

 櫻井メイも続いた。

「伏見君がアイデアを出すのよね。男女で調理をするなんて楽しみだわ」


 森幸乃も続けた。

「颯太君の家はビックリするぐらい大きいのよ!」

 鎌倉美月も続いた。

「そう、しかも高級住宅街で駅に近いの!」

 松本蓮も続いた。

「お母さんは、お洒落で普段から着飾っているんだぜ!」

 稲垣京香と桜井メイは驚いた。

「えー、すごーい」

 海斗も続いた。

「そのお母さんから、颯太ちゃんって呼ばれているんだよ! ププッ!」

 海斗達が笑うとフェリサの二人も笑った。稲垣京香は京野颯太を見た。

「ププ、可愛いー! 未だ未だ、お子ちゃま扱いなのねー」

 皆が笑うと、京野颯太がハスを向いた。

「もー、バカにするなよ!」


 森幸乃は京野颯太を見た。

「あら、だってギャップが有りすぎで意外だったのよ。社会人の一面を持つ颯太君が、お子ちゃまな呼ばれ方をしていたのよ。でもね、君の成長に役立つから、からかう友達も大切にしなさい。普通なら自ら中学生ぐらいに気付いて直すものよ。気付かずに大人になった時に、ガールフレンドが颯太ちゃん、なんて聞いたらドン引きされるからね!」

 鎌倉美月も続いた。

「そうそう、幸乃さんの言う通り。私もそう思うな」

 稲垣京香も櫻井メイも、大きくうなずいた。またしても京野颯太は受け入れるしか無かった。

「ああ、分ったよ。今日はなんだか、責められるなー」


 海斗は森幸乃に話しかけた。

「ねえ幸乃さん、北海道は如何でしたか?」

 森幸乃は目を輝かせた。

「それがねー、すっごく楽しかった! ビール園のジンギスカンは美味しかったなー、路面電車にも乗ったし、時計台もテレビ塔もラーメン横丁も行ったわ。トウモロコシにソフトクリーム、味噌ラーメンも美味しかったわー」


 京野颯太は困った顔をして森幸乃を見た。

「幸乃さん、それは太りますよ」

「ウフ、そうよね。小樽も良かったわ、独特の街の雰囲気と沢山のお土産屋さんが有って、ときめいちゃった。どうしても長居しちゃうわね。美月さんの気持ちが分かったわ。前に見せて貰った蓮君の写真が旅先の参考になったのよ。あ、ちょっと待っていてね」


 森幸乃は二階に上がりお土産を持って来た。小樽で買ったガラス細工のキーホルダーを一人一人に手渡すと、皆はお礼を言って受け取った。森幸乃は内定祝いをしてくれた友達の分も買っていた。

「ねえ美月さん、今いない友達に渡してあげて欲しいの」

「ええ、有り難う御座います。きっと喜びますよ」

 松本蓮も続いた。

「嬉しいけど、こんなにお土産を買ったら、お土産代だけでも大変だったね」

「ウフ、お父さんがお小遣いをくれたからね。君達と付き合うようになってから人付き合いが多くなったの。それでも楽しい友達が増える事は有難いものよ。もう、学生時代の友達は作れないのだから」

 森幸乃は小樽運河に架かる橋で撮った集合写真を皆に見せた。

 海斗も覗きこんだ。

「あー、懐かしいなー! 幸乃さんもココで撮ったんだー。情緒が有って良い場所だよね」

「そうよねー、良い記念写真になったわ……まあ、私の話はこの辺で。ねえ、それで君たちの今日は、どうだったの? どんなトラブルが有ったの?」


 海斗は顔を左手で覆い、松本蓮と鎌倉美月はうつむいた。京野颯太はそっぽを向いた。稲垣京香と櫻井メイは心配そうな顔をして、森幸乃は口角を上げた。

「そーねー、そっぽを向いた京野君に教えて貰おうかしら、やっぱり美月さんの方が、主観が入らないで聞けるから良いかもねー、ねえ教えて!」

京野颯太も顔を覆い、マスターは聞き耳を立てた。

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