表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/47

第36話 下手な嘘

 パーソナリティーは話を掘り下げた。

「橋本さん、因みにその男子は先ほど聞いた、理想のタイプの人ですか?」

「ええ、優しくて思いやりが有って、クラスの中心に居るF君です」

 海斗はビクッと肩を揺らし、両手で顔を隠した。お弁当どころでは無くなった。


「橋本さんのクラスは……二年B組のF君? ……も、もしかして、ふし」

ブツ! 十五分の制約の為、番組は自動でエンディング曲が流れた。

 校内中に大きなブーイングが響いた。

「エーー!!」


 職員室でもざわ付いた。校長はその続きを想像してお茶を吹き出した!

「ブー! まったく、伏見君は飽きさせないね。確かに雪だるまの時にも一緒にいたからねー」


 放送が終わり橋本七海は教室に戻ると、皆の視線が彼女に向いた。橋本七海は海斗に歩寄った。

「海斗、聞いていた? 三学期も数日で終わるし、私の気持ちも伝えたかったの。返事はすぐに求めないわ、海斗の姿勢を見てれば分かるもの」

 小野梨沙は橋本七海に話しかけた。

「七海は、颯太が好きだったんじゃないの?!」

「だって颯太は幸乃さんに、ご執心なんだもの!」


 橋本七海は中山美咲を見て小野梨紗を見た。

「……別に拘束している訳じゃ無いから、……好きになるのは自由よね!」

 中山美咲と小野梨沙はホッペを膨らましそっぽを向いた。海斗の周りは気まずいムードになり、仲間達は心配をした。


 海斗は考えて考えて、椅子を引きづり席を立った。

「皆に黙っていた事が有るんだ。カミングアウトするよ!」


 皆は海斗に注目をして、ドキドキしながら聞いた。

「俺には好きな人がいます!」

 皆に衝撃が走った。

「……俺の好きな人は松本蓮です! 美優と同じように俺もBLなんだ! だから、こんな事で気まずいムードにならないでよ。折角、出来た仲間なんだ。仲良く終業式を迎えようよ!」

 海斗が言いきると静かになった。松本蓮は照れていた。皆は間を置いてクスクス笑い始めた。

 遠藤駿は額を押さえて言った。

「おい、女子! 海斗が下手な嘘まで付いて、困っているぞ!」

 中山美咲は笑いを止めて海斗を見た。

「海斗ゴメンね、困らせたのね」

 橋本七海も謝った。

「ゴメンね海斗、優しい海斗のそばに居られて二人が羨ましかったのよ」

 小野梨紗も続いた。

「えー、蓮と仲が良いから一瞬、信じちゃったよ!」

 皆は再びクスッと笑うと、佐藤美優は愚痴を漏らした。

「元はと言えば、颯太が悪いんだよ! グループ長なのに五人の仲間に配慮が足りないからだよ。これでホントに大きな会社で沢山の社員と意思疎通が取れるのかしら?! 幸乃さんだって心配だわ!」

 京野グループの仲間は前々から不満を持っていた。海斗グループと遊ぶ機会が増え、その差を実感していたのだ。


 京野颯太は答えた。

「おい、おい、海斗の火の粉が降って来たみたいだ。ホントに俺が悪いのか?!」

 京野グループも海斗のグループも首を縦に振り、鎌倉美月は釘をさした。

「美優の言う通りよ! 颯太は好きな事が有ると、周りが見えなくなくなるのよ。目先の仕事に追われたら、幸乃さんだって困っていても放っておかれるかもね。やっぱり心配だな」

 再び皆が首を縦に振ると、京野颯太は反省するしか無かった。

「ああ、分かった。気を付けるよ」


 海斗は皆に話しかけた。

「ねえ、今年は桜が早いから、終業式の帰りにお弁当を持って桜を見に行かないか?」

 皆に笑顔が戻った。松本蓮は海斗に微笑んだ。

「いいね、楽しそう! それで桜をバックに記念写真を撮ろうぜ!」

 京野颯太も微笑んだ。

「ああ、面白そうだな。二年生の良い思い出になりそうだ」

 林莉子も続いた。

「海斗は楽しくなるアイデアを出してくれるのよね」

 小野梨紗は首を傾げた。

「ねえ海斗、何処で花見をするの?」

「そうだなー、三渓園はしぶいし、大岡川はうるさいし、みなとみらいは人が多すぎる。港の見える丘公園も魅力的だけど。なあ蓮、根岸森林公園はどうかな?!」

「うん、いいね! 良い所を見付けたね。あそこならピクニックのようにシートを敷いて、桜を楽しめるね。平日の昼間なら混雑しなくて良いかもよ。皆は他にお勧めの場所は有るかな?」

 普段から撮影スポットを探している写真部の知識が役に立った。他の仲間からは候補地が上がらなかったので根岸森林公園に決定した。


 橋本七海はスッキリしたような表情を見せた。

「あー、お腹空いちゃった! ご飯にしようっと」

 席に戻り昼食を始めた。皆も話しに夢中で止めていた箸を進めた。誰もが残り少ない学年末を気にしていたのだ。別れが目の前に来る中、花見の計画が皆の気持ちを和らげたのだ。


 放課後になり、海斗のバレンタインのお礼参りは未だ続いた。海斗と松本蓮、鎌倉美月は喫茶「純」に向かった。

 海斗はドアを開けた。

「今日はマスター!」

「やあ、いらっしゃい、海斗君、蓮君、美月さん」

 森幸乃も迎い入れた。

「キャー、来てくれたのー。いらっしゃい皆! 好きな所に座ってね」


 森幸乃は卒業式の後、友人と卒業旅行に出かけ久しぶりの再会となった。店内には京野颯太と稲垣京香、櫻井メイが話をしていた。海斗達は皆と挨拶を交わし席に着いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ