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第35話 ホワイトデー

(ホワイトデー当日)

 海斗は目覚めると、いつものように着替えリビングに降りた。葵はテーブルに着き、海斗に微笑みかけた。

「お兄ちゃん、おはよう! 今日は三月十四日だよ!」

 葵は両手を差し出した。

「ちゃんと用意をしているよ、身だしなみを整えていたからね」

 海斗は用事を済ませ席に着いた。鞄からクッキーを取り出し手渡した。

「あー、コレもしかしてエレンおばさんのレシピで作ったのー?!」

「ああ、颯太の家に集まって作ったんだー。葵、いつもありがとう」

「わー、嬉しい! 大切に食べるね。有り難う」


 正太郎はバレンタインのお返しに、中華街でお礼をしていたので海斗の様子をニンマリ笑って見ていた。明子が配膳の為にテーブルに近づくと、海斗は明子にも手渡した。

「お母さん、いつもありがとう」

「まあ、男の子に手作りクッキーを貰うなんて初めてだわ、海斗さん有り難う」

 葵も明子も喜んで受け取った。海斗はバレンタインのお礼参りが始まったのだ。朝食を済ませると葵と学校に向かった。


(二年B組にて)

 男子はいつもより早く登校していた。自分の作ったクッキーを早く渡したかったのだ。女子も男子のクッキーを楽しみにして早く登校した。橋本七海と小野梨紗の下駄箱には、知らない男子からお菓子と手紙が入っていた。

 小野梨紗は両手に持って教室に入ってきた。

「海斗! これ気持ち悪いー」

「おはよう梨紗、あー、梨紗も人気者だねー!」

「そんなのは嬉しく無いの。知らない人から食べ物を貰うのって、困るよー」

 橋本七海は慣れたもので手提げ袋に入れて持って来た。

「梨紗も入っていたのね。正直、扱いに困るでしょー?」

「うん、困る。それで無視をすると、こう言う人が廊下でいきなり告白するのよ。人前で断ると私みたいに、告白を振りまくるとか言われるから気を付けてね。このお菓子、それこそ手作りのクッキーだったらどうする?」

「えー! 手作りは悪いけど、食べられないよ」

「バレンタインの海斗の気持ちも分かるでしょ? 貰っても困るし教室でも責められたのよ。今度は優しくしてあげてね」

「う、うん」


 一方男子は自分達の作ったクッキーを照れながら渡すと、女子は喜んで受け取った。

 海斗も自分のグループの女子から渡し始めた。

「美月いつも見守ってくれて、有り難う」

「ププ、そうね。こちらこそ、有り難う」


「莉子、ひな祭りでは御馳走様でした。いつもありがとう」

「やだ海斗、改まって! こちらこそ」


「美咲、いつも気にかけてくれて有り難う」

「うん、有難う。楽しみに食べるね」

「それとゴメン、陽菜ちゃんに渡して上げて。義理だからね」

「わかっているわ、気を使わせてゴメンね」


「梨沙、このグループを明るく楽しくしてくれて、いつも有り難う。それとエレンおばさんの分、渡してあげてね」

「うん、楽しいのは海斗が気を回してくれるからだよ。お母さんも喜ぶと思うよ、有り難う」


 海斗は颯太グループの女子にも手渡した。

「はい、七海ん、いつも颯太達を見守ってくれて有り難う」

「えっ、私の事? 今何て言ったの?」

「口が滑っちゃった。ななみんだよ、コレも可愛ね」

「ウフ、そうかもね。有難う」


「美優、颯太グループの面倒を見てくれてありがとう」

「海斗は隣のグループなのに良く見ているのね。有り難う」


「萌は、縁の下の力持ちだね、グループの足りない所を補っているんだよね。それと拓海の面倒を見てくれて有り難う」

「やだ、そんな事ないよ。有り難う海斗」

 海斗は一言ずつ、お礼の言葉を付けてクッキーを渡した。お約束とは言え、女子もクッキーを貰い喜んだ。


 あっと言う間に四時間目が終わり昼休みとなった。教室のスピーカーからオープニング曲が流れ、校内放送が始まった。海斗達はいつもの様に机を並べ昼食を始めた。

 遠藤駿は席を立ち教室内を静かにさせた。

「みんな! シー!」


 放送部は昼休みに校内放送を利用して、十五分の番組を制作し放送していた。番組内では催事の連絡や、大会優勝者の発表、校内の有名人をゲストに呼び、生放送で対談する番組を放送した。年度末最後の放送は、リクエストの多かった橋本七海がゲストとして呼ばれた。彼女のファンと二年B組の生徒は興味深く聞いていた。


 オープニングテーマが終わるとパーソナリティが話し始めた。

「今日は三学期最後の放送となります。最後のゲストは我が学園のアイドル橋本七海さんです。さすがミスコンを二年連続で優勝した実力者。今日も、とてもお美しいですね。本日は宜しくお願いします」

「お褒め頂き有り難う御座います。ウフッ、今日はお手柔らかにお願いします」


「放送時間が短いので早速本題に入ります。男子から多かった質問です。橋本さんの理想のタイプを教えて下さい」

「そうですねー、清潔感が有って優しくて、思いやりの有る人です」

「もしかして、自分かなと思った男子! あなたかも知れませんよ-!」

 校内から地響きのような男子の反響が聞こえた。

「うぉー!」


「続いて女子に多かった質問です」

「橋本さんは肌が綺麗ですが、普段はどんなスキンケアをしていますか?」

「私はマメに洗顔をしています。後はニベアだけなんですよ、ウフッ」


「ウフッなんてとっても可愛いー! 美しさの秘訣はマメな洗顔とニベアなんですね。男子にも流行るかも知れませんねー。今度は男子が気になる質問です。今日はホワイトデーですが、橋本さんはバレンタインデーで校内の男子にチョコレートは渡しましたか?」

「……はい、渡しました」


「おーっと! ミスグランプリの橋本さんから貰った男子が羨ましいですねー」

 遠藤駿は教室で喜んだ。

「イェー!」


「さて、気になる質問です。その男子とは、お付き合いはしていますか?」

「いえ、未だです。でもその彼から、今朝クッキーを貰ったんです」


 パーソナリティーは驚き興奮をした。

「えー! えー! えー! それは、も、もしかして、返事と言う事ですかー?!」

 橋本七海は少し間を置いて答えた。

「いえ、未だ分かりません。でも彼ったら私の事を「ななみん」って呼んで、渡してくれたんです」

 再び校内から地響きのような反響が聞こえた。

「うぉー!」


 海斗との箸が止まった。仲間達は海斗に視線を向けた。海斗は顔を左手で覆い固まり、松本蓮はご飯粒を吹き出した。

「ブー! 」

 鎌倉美月は慌てた。

「蓮、汚いよ!」

 続けて中山美咲、林莉子、小野梨紗、遠藤駿はホッペを膨らました。

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