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第27話 甘 酒

 鎌倉美月は気が付いた。

「やだ蓮! こんな甘酒で酔ったの? ちょっと、海斗どうしよう? やだ美咲も梨紗も赤いわよ!」

 海斗はピンと来た。

「やっぱりなー! ちょっかいが強くなっていたんだ。ププ、笑っちゃうね」

 林莉子は席を立った。

「甘酒二杯で酔っちゃうなんて、いま水を持ってくるわね」


 小野梨紗と中山美咲は海斗に寄りかかり、松本蓮は鎌倉美月に寄りかかった。林莉子が戻ると、甘酒を回収して水の入ったグラスを配膳した。

「良かった、海斗と美月は大丈夫そうね」

「うん、前に飲んだ甘酒は米麹から作られていたのよ、自宅で作るなら酒粕から作る事が多いいでしょ。だから味の違いが分かったのよ、なのに酔う何てね」

「へー、甘酒って二種類の作り方が有るんだ。しかし、この二人重いなー」

「私も……、ちょっと蓮、起きなさいよ!」


 林莉子は微笑みスマホを使い写真を撮った。そして一人ずつ水を飲ませて回った。

「良い写真が撮れたよ、ププ、後でSNSに上げるわね。しかし甘酒で酔うようじゃ、成人式の日に飲む、余市のウィスキーは飲めないわね」

酔ってない三人は顔を見合わせて笑った。以前修学旅行でウィスキー工場を見学した時に決めた話だった。


 鎌倉美月は足がしびれて限界となり、松本蓮を押し離した。すると松本蓮は前のめりにジェンガに向かって倒れていった。

「ゴツン、ガラガラ!」

「あー、痛テテテ! うん? 何で倒れたんだ?」

 中山美咲も目を覚ました。

「やだ! 海斗ゴメン。寝ちゃったみたい」

 小野梨紗も目を覚ました。

「あれ? 今寝てた?」

 三人が目を覚ますと林莉子は、今、撮ったばかりの写真をSNSのグループに上げた。皆はスマホを覘くと、寝ていた三人は驚いた。まさに記憶が飛んでいた証拠写真を見せられたのだ。


 海斗は松本蓮をからかった。

「おい蓮、すごい寝言を言っていたよ。みづきー、愛しているよー、だってさ!」

「えー、嘘だろー、そんな恥ずかしい言葉を皆の前で言ったのー?!」

 林莉子も続けた。

「ホントよー、もう、何回も言うからコッチが恥ずかしくなったわー!」

 松本蓮は頭を抱え赤くなった。すると鎌倉美月は困った顔をじっくり眺めてから答えた。

「嘘よ、海斗がからかっているのよ」

「もー! 海斗めー、恥ずかしいだろ!」


 鎌倉美月も仕掛けた。

「でもね、梨紗は困ったものよ。何回も繰り返して言ったわ!」

「え? 私、何か言ったの?」

「海斗に寄りかかって、クラス替えするのヤダーって、駄々をこねていたわ!」

 小野梨紗は普段から思っていた事だった。無意識に出ても可笑しくは無かったのだ。

「だって、もうすぐクラス分けでしょ。だから言っちゃったんだよ、きっと」

 鎌倉美月は笑った。

「梨紗、ププッ! これも嘘よ」

「もー、美月ったら、ホントに言ったのかと思ったよー!」

 中山美咲は心配そうに林莉子を見た。

「ねえ莉子、私は大丈夫だった?」


 林莉子は口に手を当てた。鎌倉美月も口に手を当て、海斗は肩を落とした。

「え、何、何なの? ヤダー、海斗に何か言ったのねー」

 三人は一斉に笑い海斗は答えた。

「ププッ! これも嘘だよ。何も無かったよ、安心して」

「もー!」


 林莉子は酔った三人に言い聞かせた。

「いーい、成人式の時は皆でウイスキーを呑むんでしょ。こんなので酔ったらホントのお酒は飲めないわよ。甘酒で徐々にならさないとね!」

 酔った三人は返事をした。

「はーい」

 

 梨紗は思い出した。

「あっ、莉子の部屋、未だ見ていなかった! 莉子見せてよ」

「あ~あ、思い出しちゃったの? それじゃあ、案内するわね」

 林莉子は皆を連れて二階に上がった。


 部屋に入ると小野梨紗はビックリした。

「わー! 大きなテレビねー」

 林莉子の部屋は白のカーテン白い壁紙、そして白い家具と机。白を基調にコーディネートされていた。極めつけは五十インチのテレビが有ったのだ。


 海斗は部屋を見回し感想を伝えた。

「お洒落で清潔感が感じられる部屋だね。流石、お嬢様だ」 

 鎌倉美月は腰高の家具の上に並べてある、多くの写真立てに目を向けた。

「わー! 写真がいっぱい有るねー!」


 皆は写真立てに集まった。写真立てには海斗達の思い出の写真と並び、京野颯太の写真も並んでいた。

 林莉子は堂々としていた。

「私の好きな写真を並べてあるのよ。皆も写っているけど颯太のも有るでしょ。昔はあこがれの存在だったのに、今はファーストネームで呼び合うのよ。この間はチョコレートも渡せたし、ウフッ、これも海斗のお陰かな」

 中山美咲は微笑んだ。

「そうね、あの颯太とも少しずつ親しくなったわね」

 松本蓮が気が付いた。

「おっ、テニスの写真が有る。へー格好良いじゃん! でも、なんで中学で止めちゃったの?」

 林莉子は一呼吸おいて話した。

「実は中学の時にアキレス腱を痛めちゃって、それで断念したのよ」

 皆は肩を落とし、松本蓮は下を向いた。

「ゴメン、つまらない事を聞き出しちゃって」

「ううん、これも運命なのよ。……だから気にしないで。だって今、とっても楽しいのよ」

 林莉子は微笑むと皆も安心をした。


 小野梨紗は目線を動かした。ベッドのヘッドボードに有る伏せた写真立てを見つけ走り取った。

「見っけ! あれあれ? 莉子、毎日お休みのキスでもしているんでしょ」

 そこには京野颯太の顔写真が入っていた。小野梨紗はめざといのだ。

「もー! キスなんてする訳ないでしょ。梨紗は何で探すかなー!」

 林莉子は慌てて奪い取った。

「もう、長居するとイタズラさせるから客間に戻りましょう」


 皆は部屋から追い出され、ぞろぞろと客間に戻った。客間にはビニールの手提げ袋にキャベツが、一玉ずつ入り置いてあった。自分の畑から収穫されたキャベツだったのだ。お母さんはお土産に持たせたかったのだ。  


 夕方まで遊び帰る時間になると、皆はお母さんと莉子にお礼を言って駅に向かった。帰り道は今日一日が話題となった。ひな人形と食事、ジェンガに甘酒の酔っ払い、笑いながら帰路についた。

 海斗は今まで縁が無かった雛祭りだったが、雛人形を見るだけの予定が林莉子のおもてなしにより、雛祭りの文化に触れ、美味しい食事をご馳走になった。雛祭りの過ごし方を初めて知った一日となった。

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