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第23話 将来の夢

 橋本七海は写真を見ながら疑問が湧いた。

「ねえ駿、何で早く来て校門の雪かきをしたの?」

 女子は不思議に思い遠藤駿を見た。

「それがさあ、海斗の作戦だったんだよ! 男子は理由もなく集合時間が一時間早まったんだ。てっきり皆の集合時間が早まったと思っていたら、男子だけなんだよ!

 ここからは流石、海斗だよ。教頭先生に校門の雪かきを名乗り出て、教頭先生から感謝されると、後で雪で遊んでも良いですかって聞いたんだよ。もちろん答えは一つ返事さ。それで雪遊びのお墨付きを貰ったんだぜ!」

 女子はうなずき、幸乃は驚いた。

「普通は担任に許可を貰うものよ。いきなり教頭先生なのね、驚いたわ! 女子に気を使えるのも流石ね、んー、でも私も一緒に誘って欲しかったな。こんな写真を見ちゃうと余計よ、海斗君」

 小野梨沙も続いた。

「そうだよ、私も一緒にやりたかった!」


 女子は海斗に目線を動かすと、海斗は困った顔をした。

「おい颯太、こう言う時の女性の扱い方は、どうすれば良いんだ?!」

「俺に振るなよ! でもさ、フカフカの新雪に寝転んで見た青空と、白い景色は良い思い出になったな。今度は皆で汗をかこうよ!」

 女子は更に羨んだ。京野颯太は理解に苦しんだ。

「……あら? 俺、良い事、言ったハズなのに?!」

 女子に羨ましい言葉を付けたしたので逆効果だったのだ。

 京野颯太は続けた。

「んー、こう言う時は謝るのが一番だ! ほら男子は一緒に頭を下げるぞ」

「ごめんなさい」

 女子は怒った顔から笑い出した。マスターは、その様子を見て苦笑した。

「おーい、出来たよー。悪いけど手伝っておくれー!」


 皆はカウンターに行き、ナポリタンを持ってテーブルに着いた。久しぶりに目の前にするナポリタンは食欲をそそる見た目と香りだった。

 皆は顔を見合わせたて、マスターに向けて声を合わせた。

「頂きます!」

 香りを楽しんでから食べる者、がっつく者、皆はナポリタン楽しんで食べた。葵と陽菜は初めて裏メニューのナポリタンを口にして感激をした。

「ねえ葵ちゃん、とっても美味しいね。裏メニューと言う事は普段は食べられないのかな?」

「そうかもね陽菜ちゃん、きっと手間がかかるから裏メニューなんだよ」


 森幸乃は二人に答えた。

「安心して、裏メニューは常連さんだけだけど、海斗君が常連さんだから一緒に来れば食べられるよ」

「ホント! なら春菜ちゃん、食べたい時はお兄ちゃんと三人で来ようよ!」

「葵ちゃん、有り難う」


 中山美咲は陽菜に釘を打った。

「来る時は、お姉ちゃんも誘わないと許可しないからね」

「何でお姉ちゃんの許可がいるのよ!」

「だってお姉ちゃんも食べたいもの」

 すると小野梨沙も続いた。

「海斗、私も食べたい!」

 遠藤駿も続いた。

「海斗、俺も!」

 橋本七海も、佐藤美優も、次々と賛同すると、最後の京野颯太が言った。

「海斗、俺もいいかな?」


 マスターは目が点になって笑った。

「は、は、は、それじゃあ、食べに来るときは、また団体さんだね」

 皆が笑うと、冗談混じりにマスターは続けた。

「こんなに皆が食べたいのなら、海斗君がウチで修行してお店を開くと良いよ」

 京野颯太も調子に乗った。

「ああ、それが良い! 羽衣商事が出店まで協力してあげるよ。そうだな、喫茶「羽衣」なんてどうだろう?」

 森幸乃も続いた。

「じゃあ私がウェイトレスで、羽衣商事から出向してあげるわ!」

 遠藤駿は笑顔になった。

「それなら遠慮しなくて、食べられるね!」

 話は海斗の意思とは関係なく、勝手に盛り上がっていった。


 盛り上がる会話をよそに、海斗は席を立った。

「ちょっと、ちょっと、話を膨らませないでよ! 未だ誰にも話をしていないけど、将来の夢を決めたんだ。俺、横浜山手の先生になる! 学校が好きなのか友達が好きなのか未だ分からないけど、幸乃さんが横浜を好きな様に、俺も横浜に携わりたいんだ。黒岩校長先生も、斎藤教頭先生も、長谷川先生も人間味が有って好きだよ。俺もああ言う先生に成りたいんだ!」

 話し終えると静かになっていた事に気が付いた。海斗は周りを見渡した。

「あれ? 変な空気になっちゃった? 場違いだったかなー」


 すると皆は拍手をして応援をした。松本蓮が嬉しそうに話しかけた。

「海斗、凄いよ! 将来の夢を見付けたんだね」

 鎌倉美月も喜んだ。

「うん、海斗に向いているよ」

 橋本七海も続いた。

「海斗は優しいし、友達作りも上手だし、きっと良い指導が出来るわ」


 森幸乃は笑いかけた。

「海斗君、将来の夢が決まって良かったね」

 京野颯太も続いた。

「ああ、良い夢を見付けたな。でも喫茶「羽衣」も捨てがたいよな、プププ」

 京野颯太が笑うと皆が笑った。すると松本蓮が席を立った。

「俺は新聞社を目指して、カメラマンに成るよ!」

 皆から歓声が上がった。小野梨紗も席を立った。

「私はパティシエになる! 焼き菓子もチョコレートもやってみると面白かったわ。料理も良いけど、お菓子作りを仕事にしてみたいな!」

 橋本七海も席を立ち夢を語った。

「私はヘアーカットもメイクも好き、だから美容師になるわ!」

 田中拓海も続いた。

「俺は和食の料理人になる! 駿の所で学んだ経験を元に、いろんな和食を作って見たいんだ」


 将来の夢を決めたものから次々と目が輝いた。

 遠藤駿も語った。

「皆、将来の事を決めて凄いね。こんなにふうに聞けるとは思わなかったよ。家業が有るから、俺は考えた事もなかったしね。……ねえ、颯太も同じでしょ?」

「うん、駿と同じように実家で働いているからね。家業を継ぐ事だって悪くはない。むしろ好んで働いているからね。でも自分の代で小さくなったとか言われるのがプレッシャーなんだよ」


 マスターは微笑み皆に話しかけた。

「皆、すばらしいね! 皆が金の卵に見えるよ。勇気を出して語ってくれて有り難う。おじさんも聞いていて嬉しくなっちゃった。言い出せなかった子も焦らず真剣に考えてね。良い話を聞かせてくれたから、コーヒーをご馳走しようかな」

 皆は喜んだ。マスターにお礼を伝えると、この後もコーヒーをお飲みながら将来の夢を語り合った。


 残された三学期もあと少しとなり、雪かきですら貴重な時間に思える仲間達だった。雪合戦に雪だるま作りも貴重な思い出の一ページになった。喫茶「純」ではナポリタンの話からから将来の夢を語り合ったのだ。

 海斗は夢を口にした事で踏ん切りが付いた。将来を発表した仲間も同じ思いだった。そして仲間達の間には少しずつ絆が育まれていた。


 因みに、翌日の海斗達は全員が筋肉痛だった。そして全校朝礼では黒岩校長先生は嬉しい話を礼に上げ「二年B組の伏見君と仲間達は居るかな?」といじり、全校生徒から注目を浴びた。やっぱり校長先生は生徒達をイジる事が好きなのだ。

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