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第21話 雪合戦

 休憩を入れて、双方作戦会議に入った。陣地を交換し二回戦目が始まった。遠藤駿はひたすら走り回り、海斗グループの目線を迷わせた。京野颯太と森幸乃がフラグに向かい、橋本七海と佐藤美優が援護に回った。京野颯太が二回当てられたものの、後ろに付いた森幸乃がフラグを取り颯太グループの勝ちとなった。颯太グループは集まり肩を抱いて喜んだ。


 皆の体からは湯気が出ていた。更に遠藤駿は頭からも湯気が沸いていた。蒸気機関車のような湯気は笑いを誘った。皆はベンチに集まりお互いのプレーを批判したり賞賛したり語り合った。寒さなど忘れて楽しい時間だったが確実に体力を消耗させた。


 三試合目の最後の試合となった。両チームは陣地を交代して作戦会議が始まった。海斗も颯太もメンツにかけて負けられなかった。京野颯太と森幸乃も、いつに無く接近した時間だった。海斗の作戦は陽菜と葵をフラグの守備に配置し、中山美咲と林莉子は右側から攻め、松本蓮と鎌倉美月は左側から攻め、海斗と小野梨紗はセンターから攻める事にした。


 最後の試合が始まった。三回目ともなると疲労が溜まり、腕が上がらなかった。雪玉も予定外の所に飛んでいった。それでも皆は雪合戦を楽しんでいた。

 海斗が中庭のセンターまで来た時だった。中庭の中央に森幸乃が現れた。続けて京野颯太が進むと妙な音が聞こえた。

「パリパリ」

 海斗はすぐ気が付いた。かつて現場検証をした中庭だからだ。京野颯太の後を続けて橋本七海が踏み込んだ。


「七海、そこは池だよ、気を付けて!」

 更に音が聞こえた。「メキメキ!」


 海斗は駆けつけ、橋本七海の手を引っ張った。その瞬間に氷が割れ、京野颯太の片足が池に落ちた。

「うひょー! 冷めてー!」

 京野颯太は叫ぶと、皆の目線を集めた。


 海斗に助けられた橋本七海は海斗に抱き付き付いてお礼を言った。

「海斗、助けてくれて有り難う。危なかったわ」


 海斗は橋本七海から距離を取った。

「七海、落ちなくて良かったね」

 橋本七海は離された距離を戻す様にもう一度抱き付いた。

「うふ、私も優しい海斗が好きよ。私は敵なのに優しいのね」


 場違いな二人を見て両チームとも衝撃が走った! もうゲームどころの騒ぎでは無かった。京野颯太が集めた視線は、二人にに移ったのだ。続け様に雪玉が飛んできた。敵でも見方でも無い、皆の的になったのだ。二人は三発以上当たり退場となった。ゲームは進み、森幸乃がフラグを取って、颯太グループの勝利が決まった。


 生存していた皆はベンチに集まった。既にベンチに居る仲間は、海斗と橋本七海が話題の中心になっていた。

 小野梨紗はホッペを膨らまし腕を組んだ。

「もー、海斗がフィールドの真ん中で、変な事をしたから負けたんだよ!」

 中山美咲も陽菜も同じようにホッペを膨らました。葵も続けた。

「お兄ちゃんが退場するから戦力不足になったんだからね!」


 橋本七海は攻められる海斗を見て、両手を差し伸べた。

「海斗、責められてかわいそうね。私を助けただけなのにコッチにおいで、優しくしてあげるわ」

 海斗は優しい橋本七海を見ると、中山美咲は海斗の上着の裾を引っ張った。


 橋本七海は中山美咲を見て掴んだ裾に指を指した。

「ほら、拘束している! 美咲は解りやすいのよね」

 中山美咲はハットして手を話した。


 森幸乃はフラグを持って歩み寄った。

「あー、楽しかった。あれ?! 海斗君は人気者ね。ププッ! 京野君は濡れた靴を体育館用のスニーカーにでも履き替えて来たら、ね!」

 松本蓮も続いた。

「そうだね、楽しかった。流石、駿は強かったな!」

「そうかー! 蓮もなかなかだったよ。しかし颯太が池に落ちるとはね、ププ」

「忘れていたよ、あそこに池が有ったなんて、じゃあ履き替えて来るよ」

 海斗は皆に話しかけた。

「ねえ、今度はグランドに行って雪だるまを作らないか? 未だ未だ雪を楽しもよ!」

皆は微笑み賛同した。

 

 ここでもグループに別れ二体の雪だるまを作る事にした。皆はグランドの雪を集めた。小さな塊を転がして徐々に大きくして丸い雪の玉を作り上げた。

 雪だるまを配置する場所は、校庭から目立つ場所で生徒達の導線が邪魔にならない所を探した。更にグランドは運動部の邪魔になる事から避け、程よい建物の端を見付けた。

 皆は力を合わせて出来上がった重くて大きな雪の玉を転がして移動させた。いよいよ大きな雪の玉に顔となる玉をのせる段階に入った。女子は男子を応援し、男子は声を合わせて一つずつ持ち上げた。男女で楽しく騒ぐ声が辺りに響いた。

「やったー! 、わー凄い!」


 するとゆっくり窓が開き、黒岩校長先生が顔を出した。目立つ所で導線が邪魔にならない所はグランドを見渡せて生徒の往来が少ない校長室の前だったのだ。皆は驚いて申し訳無さそうに黒岩校長先生を見上げた。


「おー、伏見君と仲間達だね。誰がココを選んだのかな?!」

 海斗はビビリながら頭を下げた。

「ぼ、僕です。勝手に置いて済みませんでした」

「はっ、はっ、はっ! 私を喜ばせてくれて有難う。こんなプレゼントは初めてだ。目の保養になるよ。それと斎藤教頭先生から聞いたよ、みんな校門の雪かきをしてくれて有難う」

 校長先生は生徒をねぎらい、窓を閉めた。


 海斗達は顔を見合わせホッとすると、また笑い出した。

 遠藤駿は笑った。

「ププ、また朝礼で言われたりして! ヤダなあ、全校生徒から注目されるよ」

 松本蓮は校長先生のマネをした。

「おーい、二年B組の伏見君は居るかな? 雪かきご苦労さん!」


 皆は笑い、再び雪だるま作りを続けた。仕上げに雪だるまの化粧を始めた。汚れた部分は削り取り新雪を足し、中庭から持って来た枝を腕代わりに刺した。瞳は黒い玉石、鼻は木枝、口角の上がった口は指で彫り込んだ。こうして二体の雪だるまが完成した。

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