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第20話 お墨付き

 朝日が昇ると真っ白な雪が照らされた。雪合戦にはもって来いの快晴になった。海斗は男子全員に更に一時間早く、登校するように連絡を入れた。

 朝食を終えると海斗は葵のジャージを持たせ自宅を出発した。石川町の駅を降り足元の悪い中、二年B組の教室へやってきたのだ。海斗と葵が一番乗りだった。海斗はジャージに着替え廊下に出ると、葵は教室内でジャージに着替えた。二人は教室で待機すると、松本蓮、田中拓海、遠藤駿、最後に京野颯太が教室に現れた。皆は挨拶を交わし、彼らもジャージに着替えた。


 海斗は皆に話しかけた。

「やあ皆、時間を早めて悪いね。この雪合戦を合法化する為に、今から校門前の雪かきをするよ」

 京野颯太は真っ先に言った。

「えー! 俺が、雪かきを? 家の雪かきだって、やった事が無いのに!」

 松本蓮はにやりと笑った。

「あーなる程、雪かきをすれば、雪で遊ぶ口実が出来るからね」

 遠藤駿も賛同した。

「颯太! なに事も経験だよ。これだけの新雪の雪かきをする機会なんて無いから、きっと楽しいよ」

「えーお兄ちゃん、私はどうするの?!」

「大変だからね、見ていて良いよ。そうだ! スマホで写真を撮って、後で見せてよ」

「え? そんな簡単な事で良いの」


 海斗は皆を引き連れ、職員室に向かった。

「斉藤教頭先生、お早う御座います」

「海斗君、それと君達はどうしたんだい? 今日は休校だよ」

「教頭先生、前に言っていましたよね。雪が降ると生徒が滑って心配だって、私達で事故が無いように、校門周りの雪かきをしようと思いまして登校しました」

 斉藤教頭先生は驚いた。

「生徒会でも雪かきを進んで行わないのに、わざわざ休みに登校をしてやるなんて何てありがたい生徒なんだ。お願いしても良いかな」

「はい喜んで。それと校門周りが綺麗になったら、雪で遊んでも良いですか?」

「ああ、いくらでも遊んで良いよ、今日は休校だからね。雪かきの道具は用務倉庫室に有るから、それを使って下さい」


 海斗達は廊下に出ると微笑んだ。仲間同士でハイタッチをしたのだ。葵は海斗の話し方に感心をし

た。用務倉庫室から道具を取り出し校門に向かった。


 校門に到着すると、海斗と松本蓮は顔を見合わせた。新雪は太陽が当たり輝いていた。踏み荒らされていない雪はフカフカのベッドのようにも見受けられた。二人は大の字に背中から倒れた。

「ウヒョー! 蓮、気持ち良いいな!」

「ああ、気持ちいい! なあ海斗、こんな事するの何年ぶりかな」

 すると京野颯太も遠藤駿も田中拓海も大の字に寝転んだ。

 田中拓海は言った。

「うわー! こんな事をしたの初めてだ! 颯太、冷たいけど気持ちいいね」

「ああ、青空の下で、いつもの学園が青と白の世界が見える。とっても素晴らしい光景だ!」

 遠藤駿も続いた。

「颯太、初っぱなから良い事あったね!」

 葵は皆が楽しそうに寝転ぶ写真を撮った。


 海斗達は立ち上がり雪かきを始めた。最初は楽しかったが腰が痛くなり、飽きて疲れてきた。しばらくすると斉藤教頭先生が、暖かい缶コーヒーを持って来た。

「皆、お疲れ様。もう、こんなに片付けてくれたんだね。有り難う」

 斉藤教頭先生は労って帰って行った。腰を下ろし暖かいコーヒーを飲んで休憩をしていると森幸乃が校門にやってきた。

「えー、凄いじゃん! ねえ海斗君、皆で雪かきしたの?」

「ええ、頑張りました」

「スコップなんて持った事の無い、颯太も頑張ったのね!」

「幸乃さん、頑張りました。僕を颯太って呼んでくれたんですね」

「ウフ、頑張った時はね!」

 森幸乃が微笑むと、京野颯太の疲れが吹っ飛んだ。


 男子は達成感から爽やかな顔をしていた。遠藤駿は京野颯太を見た。

「颯太、疲れたけど楽しかったんじゃない?」

「ああ、たまには良いかもね」

 次々と女子がやってきた。最後に来たのは中山美咲と陽菜だった。

 海斗は陽菜を見つめた。

「お早う、春菜ちゃん! 一緒に雪合戦をしようね」

「はい伏見さん、宜しくお願いします」

 女子も教室に行きジャージに着替えた。海斗達は残りの雪かきを仕上げて道具を片付けた。

 男子は集まって何処で遊ぶが考えていた。真っ白なグランドも捨てがたいが、隠れる所が無いのはゲーム性に欠ける。そこで樹木の多い中庭を選んだ。女子はジャージに着替え校門に集まると皆は中庭に向かった。


 中庭に入る通路で鎌倉美月は指をさした。

「ほら、あの防犯カメラだよ! 誰かさんが撮られたのは」

 皆は防犯カメラを見付けた。森幸乃は京野颯太を見つめた。

「ああ、十二月に迷惑を掛けた、誰かさんが撮られたカメラね!」

 皆はこそこそ笑った。歩きながら京野颯太は両手を合わせて謝った。

「ホントゴメン! 皆、あの時は迷惑を掛けた!」

 京野颯太が謝ると皆は声を出して笑った。中庭に入ると問題となったベンチはすっかり新しくなっていた。


 海斗はルールを発表した。

「ルールは海斗グループと颯太グループに分かれます。葵と陽菜ちゃんは海斗グループに入ってね。幸乃さんは京野のグループに入ります。長方形の中庭の両端にそれぞれのグループが立ち、スタートします。スタート位置には両陣営のフラグが有り、敵陣のフラグを奪ったチームが勝ちとなります。その途中、自己申告で敵の雪玉が三回当たった者は、退場しベンチに移動します」


 いよいよ雪合戦が始まった。皆はそれぞれの陣営に立ち、ワクワクしながら雪の玉を握りしめた。

 海斗は声を掛けた。

「おーい、そーたー、始めるぞー!」

「おー! カイトー、望むところだー」

「カウントダウンでスタートだ!」

 海斗がカウントダウンを始めると、仲間も声を揃えた。

「5・4・3・2・1・スタート!」


 海斗は作戦を立てていた。葵と陽菜にとにかく玉を作らせた。そして海斗は乱れ打ちをした。以外や以外、当たるのだ! 松本蓮と鎌倉美月は二人で行動をした。鎌倉美月は男子に負けないくらいの速球を投げた。京野颯太は森幸乃の後を追った援護射撃をしていたが、むしろ雪玉に当たっていた。遠藤駿は機敏だった。流石、体育会系だ。しかし目立つので三回当てられ退場となった。

 皆は樹木を巧みに使い姿を隠した。そして一回目の勝負は小野梨紗がフラグを取って海斗グループの勝ちとなった。海斗グループは集まり肩を抱いて喜んだ。

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