表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/47

第2話 嘆願書

 (二年B組にて)

 始業式が終わり生徒達は教室に戻ってきた。遠藤駿は海斗をからかった。

「おい海斗、校長先生に目を付けられているのか?」

 松本蓮は吹き出した。

「プハッ! 面白かったけど、ありゃ、やり過ぎだよ!」

 鎌倉美月も続いた。

「普通、指を指して伏見君じゃないよ、プププって笑うかな~、あはは!」

 橋本七海も笑った。

「私、可笑しかったわ。私もずっこけたわ! あれ、昭和のスタイルよね。それとも吉本新喜劇なのかしら?」

 佐藤美優は答えた。

「だって振った人が昭和だもん、昭和になるわよ!」

 皆は笑った。


 長谷川先生が笑って教室に入って来た。生徒達の話を聞いていたのだ。

「さあ、ホームルームを始めるぞ! その前に大きな声で話していたんだ。伏見に興味の無いクラスメイトにも耳に入ったと思うが、新年早々また伏見は校長先生にいじられていたな。あれは可愛がると言う行為だ。素直に受け止めて欲しい。社会に出たら君達は、若葉マークの新入社員から始まるんだ。その時に目上の上司や先輩から是非、可愛がられて欲しい。親身になって可愛がる人は、自分の成長を助けてくれる人達だ。校長先生に可愛がられるとは私も羨ましい。お前は来年度生徒会に出ると良い。先生達が君の成長を応援してくれるだろう。まあ、コレは私の勝手な話だけどな」


 長谷川先生は仕切り直しをした。

「改めまして、皆さん明けましておめでとう御座います」

 生徒達は繰り返した。

「明けまして、おめでとう御座います」

「さあ、新年になった。いよいよ、進路を決めなければならない年だ。未だ決めかねている生徒も多いと思うが、先生は断言する。将来の職業を早く決めた者ほど、社会人になってからの伸びシロが大きい。多くの生徒は将来やりたい事を高校時代に決められなくて、大学で探すモノだ。そして大学生になっても就職の時期ギリギリまで決められない生徒が大くいるからだ。

 出来れば決めるのは早い方が良い。職種によっては大学では無く、専門学校に行った方が良い場合が有り、その場合には大卒は足かせになるからだ。つまり大学に行ってから決めれば良いと思っていても、遠回りになるんだ。たった十七年しか生きていない君達に、あと数か月で一生の人生を決めさせるのは難しいが、前向きにとらえて欲しい。この学校は皮肉にも同い年の生徒が就職をして行く。普通科の生徒に比べ港湾課の生徒は社会と既に向き合っていて、とても大人びているからだ。皆、将来に向かって真面目に向き合って欲しいから年始の挨拶にさせてもらった。

 さあ、一学期は出会いがテーマだった。二学期は友情を深める事がテーマだった。三学期のテーマは絆だ!」

 長谷川先生は黒板に絆の文字を大きく書いた。

「絆の字の作りは、左側のつくりは糸、右上の字は分ける。右下は牛だ。つまり家畜として飼われた牛が逃げないようにするロープで繋がれた文字だ。普段我々が使うイメージとは程遠く、強制的な意味合いがつくりには有る。しかし今は違うぞ。大事な心と心を繋ぐ例えに使われる漢字です。それは強制力が無く精神的に強く結びつくものだ。是非、三学期は作り上げた友情を固い絆にして貰いたい。君達なら出来るよ! 何て言ったって、アレだけのトラブルを回避出来た仲間だかだ。

 さて普段なら席替えとなるのだが、伏見の仲間と、京野の仲間、そして学級委員長の山田の仲間から席替えの中止の嘆願書が先月届いている。嘆願書なんて知っているのは、誰の入れ知恵か想像が出来るがな。

 クラスの過半数以上が望んでいる事になる。これも絆をかかげた目標に向かった努力であって貰いたいから、受け入れる事にした。よって三学期は席替えを行わないが、反対者の意見が過半数を上回った場合や、弊害が発生した場合は仕切り直すから理解するように」

 生徒達の大半は笑顔になった。長谷川先生は、その他の要件を伝えてホームルームを終了させた。


 松本蓮は海斗に話しかけた。

「なあ海斗、今日はこれで終わりだし、久しぶりに喫茶「純」に行かないか?」

「良いね蓮、年始の挨拶もしないとね。珍しくお昼にナポリタンでも食べようかな」

 鎌倉美月は微笑んだ。

「ああ、良いわね。純のナポリタン美味しいのよね。なんて言ってもナポリタン発祥の味だものね」

 林莉子は興味を持った。

「え、その話し知っている! 山下公園の前に有るホテルNグランドでしょ。もしかしてマスターは、あのホテルで修行していたの、ねえ海斗?」

「ああ、そうだよ。言わなかったっけ? クレーマー事件のお礼の時は、凄い食事をご馳走してくれたんだ」

 中山美咲も思い出した。

「あー、だからパーティーのメニューも美味しかったのね」

 小野梨紗は前のめりになった。

「海斗、私も行く! 私も食べてみたい」

「じゃあ、皆で行こうか!」

 皆はうなずいた。


 すると黙って居られない人がまた。

「伏見君、何で友達を誘わないかなー」

 京野颯太が会話に加わった。すると、遠藤駿も続いた。

「俺も入れてよ! Nグランドのナポリタン食べてみたい!」

 橋本七海、佐藤美優、鈴木萌、田中拓海が続けて加わった。海斗は慌てた。

「ちょうと、ちょっと、放課後の空いている時間じゃないんだから座れるかな? まあ、待てば座れるとして連絡した方が良いよね」

 海斗が確認をすると全員ナポリタンとなった。総勢十二人のご一行となるので海斗は迷惑がかかると思い、先に森幸乃に人数と到着予定時刻をSNSで連絡をした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ