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第18話 合格発表

 翌日の教室にて、十時を回り中山美咲のスマホが振動した。ロングホームルームの時間だった。授業は横浜市内で高校生が絡む交通事故が急増していたので交通安全の教育ビデオを見ていた。中山美咲はこっそりスマートホンを覘いた。文字を何度も読み返すと泣き始めた。隣に座る海斗は安全ビデオどころでは無かった。陽菜を知る京野颯太のグループも心配をしたのだ。

 真後ろに座る林莉子は気遣った。

「ねえ美咲、大丈夫? ヤダどうしたの?」

 中山美咲は林莉子の声に気付かなかった。海斗は中山美咲の肩を優しく2回叩いた。

「ねえ、どうしたの? 春菜ちゃんの事でしょ」

「……うん」

 中山美咲は涙を手でぬぐった。

「合格だって!」

 小さな声だったが、仲間達は聞き取った。席を立ち、一斉に喜んだ。

「ヤッター! おめでとう!」

 中山美咲は泣きながら、小さな声で読み上げた。

「お姉ちゃん、合格したよ! やったよ、やった、やった、って書いて有ったわ!」

 林莉子も涙ぐんで喜んだ。海斗と颯太のグループが授業と関係無い事で騒いだ。知らない生徒達は首を傾げた。


 勿論、長谷川先生は黙っていなかった。

「コラ、お前ら何を騒いでいるんだ! 誰だ、中山を泣かしたのは!」

 皆が中山美咲に注目をした。海斗は言い訳を探した。

「済みません、今、我が学園の受験発表が公開されたんです。知り合いが合格したので嬉しくなっちゃて、皆に伝えて済みませんでした」

「んー、授業中にスマホか、宜しくないね。でもそう言う事なら多めに見て上げるよ。心配だったね、おめでとう中山!」

 長谷川先生は拍手をすると、海斗はきょとんとしたが、笑顔に変わった。中山美咲は長谷川先生に頭を下げた。

「はい、有り難う御座います。皆も有り難う」


 授業が終わると、仲間は中山美咲に集まりお祝いの言葉を伝えた。感謝を伝えると陽菜宛にメールの返信をした。すると陽菜からメールが入っていた。昼休みに学校に来る事になり、海斗達も昼休みに合流することになった。海斗は葵にもメールで伝えた。


 昼休みになり、海斗達は昼食も取らずに高等部の掲示板に向かった。すると陽菜は入学手続きの封筒を持って、嬉しそうに立っていた。

「お姉ちゃん、やったよー!」

「陽菜おめでとう。大変だったね」

 陽菜は中山美咲に抱きしめると、美咲も優しくて抱き返した。陽菜が離れると海斗は右手を差し出した。

「春菜ちゃん、我が学園にようこそ! 四月からは一緒だね」

「はい、伏見さん有り難う。先日は鎌倉に誘ってくれて、とっても良い息抜きになりました」

 陽菜も右手を伸ばし握手をした。皆は代わる代わる挨拶を交わした。

「皆さん、四月からは宜しくお願いします」


 京野颯太は得意げに答えた。

「ああ、分からない事は何でも聞いてくれ。なんでも! 教えてあげるからね」

 田中拓海も続いた。

「春菜ちゃん、僕にも聞いてね。相談に乗るからね」

 遠藤駿も続いた。

「春菜ちゃん、今の人の名前、覚えている?」

 陽菜は顔を覚えていたが、名前が出てこなかった。

「うーん、顔は覚えていると、でも名前は分かんない!」

 田中拓海は困り、皆は笑った。


 葵は少し遅れて現れた。お祝いを伝え抱き合った。

「キャー! 春菜ちゃん、おめでとう! 四月からは一緒の学校だね」

「葵ちゃん有り難う。とても嬉しいよ。受験勉強が嫌になった時は、鎌倉で撮った写真を見たり、由比ヶ浜で拾った貝殻を並べたりして、とっても良い息抜きになったよ」


 陽菜は一段落すると、鞄からチョコレートを出して海斗と松本蓮に手渡した。

「これは、この間のお礼です。一日遅れたけど受け取って下さい」

 皆は目を丸くした。松本蓮は陽菜を見た。

「ホ、ホント? チョコレートを貰っていいの?」

「うん、義理チョコだよ」

 海斗も続いた。

「春菜ちゃん、変わったねー、この前もしゃべり方の変化に気が付いたけど、女の子らしくなった感じがするよ。春菜ちゃん、俺も貰っていいの?」

 陽菜は恥ずかしそうな仕草を見せた。

「うん、伏見さんのは本命チョコだよ!」


 皆が一斉に驚いた

「えー!」


 海斗は左手で顔を覆った。

「う、嘘!」

 海斗グループは肩を落とした。陽菜は話し掛けた。

「だって同級生の男子は子供みたいだし、伏見さんって物知りだし優しいでしょ」


 佐藤美優は橋本七海に話しかけた。

「ねえ七海、やっぱ姉妹ね。面白くなってきたわ」

「ププッ! 海斗は優しいからねー。きっと鎌倉が思い出になったのね、しかし中学生に惚れられるなんてね」


 海斗は陽菜に答えた。

「春菜ちゃん、有り難う。今は受験で視野が狭くなっているからね。でも高校生になったら、もっと良い男子が現れるから楽しみにした方が良いよ」

 中山美咲は収拾を図った。

「ゴメンなさい、今日の陽菜は合格発表でうかれているから。また落ち着いてから話を聞いて下さい」

 林莉子も続いた。

「ははは、そうよね」


 松本蓮は準備よく、カメラの三脚を立てた。

「さあ、皆で記念写真を撮ろうぜ!」


 皆は合格発表の掲示板を背景にして、陽菜と美咲を中心に入れて記念写真を撮った。松本蓮はいつもの様にSNSのグループに貼り付けた。

 陽菜の嬉しそうな笑顔と仲間達が揃う思い出の写真を撮る事が出来た。森幸乃に続き陽菜も春からの道が整った。着々と環境の変化が起こっていた。海斗も仲間も、将来に向き合う時期が近づいている事を肌で感じていた。

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