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第17話 洞察力

 森幸乃は二階に上がり手提げ袋を持って来た。

「はい、バレンタインよ。海斗君! 蓮君! それとお父さん!」

三人は喜んで貰ったのだが、浮かない顔が一人居た。森幸乃は京野颯太を見た。

「冗談よ! ちゃんと用意して有るわ。京野君には就職のお礼を兼ねて特別なのよ」


 森幸乃は一回り大きい特別な箱を用意していた。実は海斗だけが特別なチョコレートで、他は中身の一緒のチョコレートだった。流石、歳上の女子は違う。


「ゆ、幸乃さん、僕には特別なんですね。有り難う御座います」

 京野颯太はご機嫌になり、森幸乃は苦笑して席に着いた。 


 海斗は森幸乃に話しかけた。

「幸乃さん、二日間の研修は如何でしたか?」

「それがさー、大変だったわ! 知らない人同士でグループに分かれるのよ。問題を定義されて、解決策をディスカッションして発表するのよ。課題はそれだけで無くて、グループの中で案を出す人、肯定する人、否定する人もチェックされているのよ。集団行動の際にどのポジションに居るか見ているのね。

 最後はグループの代表が発表をして、どのグループが最善策なのか順位まで決めるのよ。グループのリーダーは、大学生の男性がやっていたけどね。

 ププッ! 美月さん、女子高生だからって、私を冷やかすのよ。大学生の男性って女性の扱い方が上手ね」


 京野颯太がすかさず反応をした。

「えー、そんな失礼な大学生がいましたか! 即、内定取り消しですね! その人の名前は覚えていますか?」

「えっ?!」

 森幸乃は引いた。海斗は間に入った。

「颯太、そのぐらいで焼き餅を焼いていたら、幸乃さんの同期が居なくなるよ。パワハラは止めてくれよ。だいち教育係じゃないんだろ!」

 皆は笑い、京野颯太は困った顔をした。

「京野君、羽衣商事は大きな会社ね。ウチの学校からは四人も居たわ。研修は疲れたけれど楽しかった。今から就職が楽しみよ」

「幸乃さん、有り難う御座います。宜しくお願いします」


 森幸乃は話題を変えた。

「ねえ海斗君、今日君達は喧嘩した?」

 仲間は見透かされている様で驚いた。

「えっ、何で知っているの?!」

 森幸乃はニコッと笑った。

「ププッ! やっぱりねー。ラブレターの一件が有ったから、女の子達が我慢出来ないと思ったのよ。それで、怒ったのは美咲さんかしら?」

 更に皆は驚いた。鎌倉美月は空いた口が塞がらなかった。

「流石、幸乃さんね。凄い洞察力ね、驚いたわ!」

「それで海斗君は幾つチョコレートを貰ったの?」

 流石森幸乃だ。要点をついて来た。海斗は苦笑して答えた。

「僕は仲間内と少しですよ。みんな義理チョコですけどね」

「ふーん、義理チョコだって言われたの?」

「……」

「ほら、海斗君はモテルのねー。ププッ! 美咲さんが焼き餅焼くのも解るわ」


 鎌倉美月は森幸乃に話し掛けた。

「幸乃さん実はね、七海から聞いて驚いたのですが、手紙を破いてから海斗のグループは女子が海斗を拘束しているって、噂が有るらしいの。知っていますか?」

「あら、今頃耳に入ったのね。海斗君は学校の有名人よ。一緒につるんでいれば話題にのぼるに決まっているじゃない。美月さんに関しては放課後までも一緒に居るからね-。でもホントの事を知っているから、私はそんな噂に振り回されないわ」


 鎌倉美月は肩を落とし、かなりヘコんだ。

「えー、そんな話が有ったなら早く、教えて欲しかったなー」

「こんな有名な話、てっきり気にしていないのかと思ったわ」

 松本蓮はピントきた。

「あ~、それで昼休みに突然、謝ったのかー」

「うん、そう言えば海斗も蓮も雑に扱っていたかもね。ゴメンね」

 森幸乃は笑った。

「ププツ! 何か想像が出来たわ。朝、喧嘩して昼休みに仲直りをしてお弁当を食べたのね」

 桜井メイは羨んだ。

「いーなー、怒ったり笑ったり、みんな仲がいいのねー!」

 その後も海斗達は、しばらくお喋りを続けて後にした。


 (海斗の自宅にて)

 海斗は帰宅し玄関を開けると、葵が玄関ホールに飛んで来た。

「お兄ちゃん、お帰り! 今日は何個貰ったの?」

 葵は海斗の鞄を奪ってチャックを開けた。

「えー! うーそー! 何でこんなに貰っているのよ! バカじゃないの」

 葵はそのままキッチンに鞄を持って行った。


 海斗は慌てて、靴を脱ぎ追いかけた。葵は明子の前に立った。

「ねえ、お母さん、お母さん、お兄ちゃんバカなんだよ!」

 葵は鞄を広げと、明子は鞄の中を覗いた。

「まあ、海斗さんはモテるのね。葵、海斗さんにバカなんて言っちゃダメよ!」

 明子がチョコレートの数に驚くと、海斗は顔を手で覆った。海斗は鞄を葵から奪い取りチャックを締めた。


「ふーっ、ねえ葵、明日は春菜ちゃんの合格発表だね」

「うん、私も緊張しちゃうの。鎌倉に連れ出しちゃったし大丈夫かな?」

「まあ、大丈夫じゃない。合格祈願の鎌倉は良い息抜きだったしね。明日の十時に高等部の掲示板に合格発表が掲示されるんだよ」

「へー、そうなんだ。春菜ちゃんも来るのね」

「美咲の話だと、十時にネットでも発表されるらしいよ。だから自宅で見るみたい」

 明子は感心をした。

「今時は、みんなインターネットなのね。確かに便利だけど、掲示板を見るのも良い思い出になるのにねー」

海斗は話が落ち着くと二階に上がった。

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