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第13話 バレンタインデー

 男女ときめく告白イベント、バレンタインデー。意中の彼にチョコレートを渡すか否か、または貰えるのか。この日にかける生徒達の思いは強かった。因みに海斗も松本蓮も昨年は鎌倉美月からの義理チョコが一個だった。今年の海斗はどんなバレンタインデーを迎えるのであろうか。


 海斗、松本蓮、鎌倉美月は放課後の写真部に居た。鎌倉美月は海斗に話しかけた。

「ねえ海斗、明日はバレンタインデーね。貰い方を注意しないとダメよ」

「え、貰い方なんて有るの?」

「それはそうよ! 二学期の始業式に持ち上げられた時が、そうだったでしょ。沢山手紙を持って教室に来たら、美咲だって梨紗だって気分を悪くしたじゃない!」

「ああ、あの時は美月も空気が悪かったもんね」

「私の事はいいの! だから注意するのよ。よそ見をしている蓮も同じよ!」

「え、俺も! 俺も幾つかチョコを貰えるのかな~、エヘ、ちょっと楽しみだな」

「ゴツン!」

 鎌倉美月は松本蓮の頭にゲンコツをお見舞いした。

 海斗は冷やかす様に二人を見た。

「蓮は義理チョコから本命チョコになるのか。美月は大きなチョコをあげるのかな?」

「ウフ、今年は本命チョコを蓮に用意してあげるよ」

「ホント美月?! 楽しみにしているね」

 松本蓮と鎌倉美月は見つめ合い微笑んだ。海斗も二人を見て答えた。

「はい、はい、ご馳走様です。二人はラブラブでいいね!」


 海斗は教室を見回した。

「なあ美月、幸乃さんは来ないのかな?」

「今日と明日は、羽衣商事の研修会よ」

「あ、そうか。同期と初めての顔合わせって言っていたよね、緊張するだろうね」

 松本蓮は笑った。

「ププ、幸乃さんなら大丈夫だよ! あの人、物落ちしないし気も強いからね」

 鎌倉美月も笑った。

「ププそうね、気に入らない人がいたら、手を上げるかもよ」


 皆が笑っていると、和泉部長がやって来た。

「やあ、話をしても良いいかな? 松本君、先日話した部長推薦の話、考えてくれた?」

「は、はい、是非、やらせて下さい」

 海斗と鎌倉美月は、松本蓮を見て微笑んだ。和泉部長も笑顔になった。

「そうか、受けてくれるのか、有り難う。根回ししておくから、今度の部会で話し合おうね」

 海斗達は和泉部長から、部長の仕事について聞いてから部室を離れ帰路についた。


 (海斗の自宅にて)

 海斗はいつもの様に玄関を開けた。葵がバタバタと玄関ホールに駆け寄った。葵からは甘いチョコレートの香りがした。

「お兄ちゃん、お帰り! 今日は早かったのね」

「ああ、たまにはね」

 海斗はリビングに向かうと、葵は立ちふさがった。葵にも事情が有ったのだ。海斗はピントきて、自分の部屋に向かった。

 一方、葵は明子と一緒にキッチンに立っていた。明子もチョコレート作りをしていのだ。親子揃って笑いながら作る姿は微笑ましいのだ。残念ながら正太郎にも海斗にも、その姿は見る事は出来なかった。


 さて、他の女の子も四苦八苦して作っていたのだ。小野梨沙はエレンに指導を受けていた。湯煎の温度管理が出来ずに、チョコレートが白く粉が吹いたようになり、何度か作り直していた。中山美咲は陽菜と作っていた。陽菜は受験も結果待ちとなり、時間を持て余していたのだ。陽菜は解っているくせに、美咲に誰に渡すのか追及をしていた。美咲は名前を出すと面倒になるので笑って答えなかった。陽菜も美咲のマネをして幾つかのチョコを作り上げた。林莉子は京野颯太に本命チョコを作っていた。どんな顔をして食べてもらえるのか、妄想が先行してドキドキしながら作っていた。ようやく作り上げた所でラッピング材を買い忘れた事に気付き、慌てて買いに出かけた。女の子は、それぞれの思いをチョコレートの形にして作り上げた。


 (バレンタインデー当日)

 海斗は目覚めると、いつものように制服に着替えてリビングに降りた。葵がニコニコしてプレゼントを差し出した。

「お兄ちゃん、私のチョコレート受け取って!」

 海斗は照れながらチョレートを受け取った。すると明子も正太郎にチョコレートを手渡した。正太郎も恥ずかしそうに受け取った。海斗も正太郎も右手にチョコレートを持ち、左手は照れ隠しに自分の後頭部を触った。

 明子は二人を見て笑った。

「正太郎さんも、海斗さんも、同じ照れ方をするのね」

「ププッ! お兄ちゃんも、お父さんもシンクロして可笑しいよ」

 四人は顔を見合わせて笑った。今度は明子から海斗に、葵から正太郎にチョコレートを渡した。

「お母さん、葵、有難う。帰って来てから大切に食べるね」

「明子さん、葵ちゃん有難う。今日は特別な朝になったよ。これで人の三倍は働けるね、頑張るぞ!」

明子と葵は照れる二人を見て満足げに微笑んだ。


 葵は海斗に話しかけた。

「お兄ちゃん、お返しは山手でフレンチのフルコースでいいわ!」

 明子と正太郎は目が点になった。海斗はすかさず返した。

「フランス料理は無理だけど、中華街で江戸清の豚まんなら、ご馳走するよ」

 正太郎と明子は笑った。正太郎は家族に話しかけた。

「中華街に行くなら、家族で行こうよ。お父さんも二人にお礼がしたいんだ。だから葵ちゃんには、美味しいお菓子を用意してあげてね」

「お兄ちゃん、ホワイトデーを楽しみにしているね」

 明子は葵をしつけた。

「葵、調子を乗っちゃうダメよ!」

「はーい」

 海斗と葵は朝食を済ませ、学校に向かった。

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