2 校長の説得方法
という訳でその日の放課後、下積先生と張高野球部員は部室に集合した。
どうすればあの校長が遠川さんを監督として採用してくれるか?
まずはキャプテンが口を開いた。
「さて、それじゃあどうすればあの校長を説得する事ができるか、
何かいいアイディアがあれば言うてくれ」
すると先輩達が次々に自分のアイディアを口にした。
「殴る」
「どつく」
「毛を抜く」
「両まぶたを洗濯バサミではさんで思いっきり引っ張る」
「そして毛を抜く」
「とにかくひたすら毛を抜く」
・・・・・・何か、あんまりよさそうなアイディアはないなぁ。
ていうか何でそんなに校長の毛を抜きたい人が多いの?
まあそれはともかく、これじゃあいいアイディアは出そうにないぞ。
やっぱりあの校長を説得するのは無理なんやろうか?
と、あきらめかけていたその時。
「フッフッフ、お困りのようやね野球部の皆さん」
という声とともに、部室の引き戸を開けて新聞部の鹿島さんが現れた。
するとそれを見たキャプテンがうっとうしそうな顔をして言った。
「またお前か。今俺らは野球部にとって大事な話し合いをしとんねん。
邪魔すんのはまた今度にしてくれ」
「何よ、せっかくあたしが校長先生を説得する為の、
ええ方法を教えてあげようと思うたのに」
そう言って口をとんがらせる鹿島さん。
「何やねん?校長を説得する方法って」とキャプテン。
それに対して鹿島さんは、口をとんがらせたまま言った。
「あの遠川さんっていう人が、直接校長先生の所にお願いに行けばいいんよ」
「はぁ?そんくらいの事であの校長を説得できる訳ないやろうが」
「できるかどうかはやってみればわかるわ。
あと、その時遠川さんはちゃんとおめかし(・・・・)して行った方がええよ」
「おめかし?校長を説得すんのに何でそんな事せなあかんねん?」
「鈍感なヤマちゃんにはわからんやろうね。
じゃあお邪魔なあたしは退散するわ。フンだ」
すっかり不機嫌になった鹿島さんは、そう言って部室から出て行った。
「何やねんあいつ、ようわからんやっちゃなぁ」
キャプテンが頭をかきながらそう言うと、傍らの向井先輩があきれ顔で言った。
「確かにお前は鈍感だよ、東倉」
「はぁっ⁉お前まで何やねん⁉俺のどこが鈍感やねん⁉」
と憤るキャプテンをよそに、下積先生は俺に言った。
「さっき彼女が言った事って本当なのかな?
遠川さんが直接校長にお願いすれば説得できるって」
「まあ、あの人の情報は結構信頼できますから、
試してみる価値はあると思いますよ」




