3 人気選手と、そうでない選手の扱いの差
そんな場面で登場したのは二番バッターの小暮。
そして小暮が打席に入ると、一塁ギャラリーの女子生徒達から声援が飛んだ。
「キャーッ!小暮く(・)ー(・)ん(・)!」
「小暮君頑張ってーっ!」
どうやらギャラリーの女子生徒は、小暮の事をいまだに男やと思っているらしい。
まあクラスや学年が違えば、小暮の性別を知らんでもおかしくはないか。
その小暮は右のバッターボックスに入り、静かにバットを構えた。
ここ一番での小暮の勝負強さは一級品や。
できればここで決めてくれ小暮。
でも欲を言うなら俺に活躍の場を回してくれ。
と、そんなやましい事を考えていると、
キィン!
小暮が植葉の初球を打ち返した!
打球は二遊間を抜けてセンターへ!
二塁ランナーの山下先輩は三塁を回るか⁉
しかし三塁コーチの赤島先輩がそれを止めた!
その間にセンターからの返球をセカンドがキャッチ!
あのまま山下先輩がホームに突っ込んでたら、
タイミング的にアウトになってたやろう。
ここは赤島先輩の好判断やったな。
しかもこれでワンナウト一塁三塁。
サヨナラのチャンスは更に広がった訳や。
次のバッターは三番の碇。
その碇がバッターボックスへ向かうと、
ギャラリーの女子生徒達から再び声援が飛んだ。
「松山くーん♡打ってーっ♡」
「頑張れーっ♡」
キャーキャーキャーキャーうるさい女どもやでホンマに。
キャーキャー言うなら小暮か碇のどっちかにせいっちゅうに。
もしくは俺にもキャーキャー言うてくれっちゅうに。
と、そんなみみちい事を考えていると、
カキィン!
碇が植葉の第二球を打ち返した!
打球はライナーで植葉の脇を抜けた!
かと思いきや、
バシィッ!
植葉はグローブを目一杯のばしてその打球をもぎ捕った!
「っしゃあっ!」
雄たけびを上げる植葉。
あれが抜けていればサヨナラ勝ちやったけど、植葉の奴も必死や。
これでツーアウト一塁三塁。
泣いても笑っても次のバッターで勝負が決まる。
そしてそこで登場するのが、
四番!主役!俺!
いや~、流石に作者、じゃなくて、神様はわかってるね。
この緊迫した試合にケリをつけるのは、やっぱり主役である俺しか居らんのや!
俺はネクストバッターサークルで立ち上がり、
バットを二回振って打席へと向かった。
するとその時、一塁側ギャラリーから女子生徒達の声援が、
シ~ン・・・・・・。
うぉおおおおい⁉
何静まり返っとんねん⁉
ワシがこの試合の最後のバッターやねんぞ⁉
勝つか引き分けかはワシにかかってるんやぞ⁉
ワシ主役やぞ⁉
少しくらいキャーキャー言うたらどないやねん⁉
と、俺が打席に向かいながらブチ切れていた、その時やった。
「昌也くーん!かっ飛ばせーっ!」
と、俺の背中に声援を送ってくれる女の子の声が聞こえた。
その声に振り返ると、一塁ギャラリーに居た伊予美が、
笑顔で俺に手を振りながら声援を送ってくれていた。
その光景を目の当たりにした俺は、全身の細胞が一気に覚醒した。
ブォッフゥッ!(細胞が覚醒する音)
よっしゃやるぞぉっ!
例え他の女子生徒がキャーキャー言うてくれんでも、
俺は伊予美が応援してくれたらそれでええんや!
見ててくれ伊予美!
俺は必ず打つ!
そしてこの勝利を君に捧げよう!
そう決意した俺は、ゆっくりと右の打席に立った。
そしてジッと植葉を見据え、バットを構えた。
さあ来い植葉。
俺は必ずお前の球を打ち返す!
と、その時やった。




