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ハリガネベイスボウラーズスリイ!  作者: 椎家 友妻
第四話 真剣勝負!
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14 スタメン発表

 そしていよいよ試合を明日に控えた練習後、

試合のスターティングメンバーが発表される事になった。

日はすっかり暮れて、グラウンドにライトの明りがともる中、

遠川監督は俺達に向かって言った。

 「それでは明日の試合のスタメンを発表する」

 俺達は息を飲んで監督の次の言葉に耳を澄ます。

ここまで皆必死に頑張って来たけど、スタメンに選ばれるのは九人。

その中に自分は選ばれるのか、誰もが不安に思っているはず。

そんな中遠川監督は、メンバー表を見ながら口を開いた。

 「まずは外野だ。レフト向井、センター扇多、ライト(・・・)は(・)()古山(・・)

 その言葉に向井先輩と扇多先輩は

「はいっ!」と返事をしたが、手古山先輩と山下先輩は

「えっ?」と驚きの声を上げた。

その二人に遠川監督は言った。

 「手古山はサードでも打球を怖がらない度胸があるのはいいが、

ゴロをさばくのが苦手だ。しかし意外と足が早いから外野に回した。

そして空いたサードに山下を入れる。

山下は足が速くないから外野を走り回るのには向かないが、

球際の速い打球には強いし、見かけによらず根性もある。だからサードだ」

 「そ、そうですか」

「わかりました」

 遠川監督の説明に納得した様子の手古山先輩と山下先輩。

この人はちゃんと部員一人一人の適正を見てくれているんやな。

と感心する中、遠川監督は続けた。

 「じゃあ残りの内野を発表する。

ファースト千田、セカンド小暮、ショートは東倉だ」

 セカンドはやっぱり小暮か。

赤島先輩には悪いけど、実力の差は歴然やからな。

と思っていると、遠川監督はその赤島先輩に声をかけた。

 「赤島、お前は今回は控えだが、

お前には戦況を適切に判断できる頭脳が備わっている。

だからお前には攻撃時に三塁コーチをやってもらう。いいな?」

 「はいっ!」

 監督の言葉に赤島先輩は力強く返事をした。

ていうかこの人の声を聞いたのは今が初めてな気がする。

どんな時でも無口な赤島先輩に声を出させるなんて、やるなぁ監督。

あ、でも練習の時には赤島先輩も気合の入った声を出してたな。

まあそれはともかく、次はいよいよバッテリーの発表や。

俺は遠川監督の次の言葉に意識を集中させた。

そしてそんな遠川監督の口から次に放たれた言葉はこれやった。

 「では最後にバッテリーだ。ピッチャーは松山、キャッチャーは正野でいく」

 「やった!」

 監督の言葉を聞いて無邪気に喜ぶ碇。

俺も内心ホッとしたが、それと同時に岩佐先輩と近藤先輩の方をチラッと見た。

すると二人は少し落ち込んだ様子でうつむいていた。

あの二人は最初は沙夜さんが監督になる事に反対し、部を辞めるとまで言った。

でもこの二週間、あの二人は遠川監督の猛特訓から逃げ出す事なく最後までついて来た。

その頑張りを見ていただけに、俺は素直に喜びの声を上げる事がでけへんかった。

するとそんな二人にも遠川監督は声をかけた。

 「岩佐、明日の先発は松山だが、お前のクセ球は短いイニングなら十分通用する。

だからいつでもマウンドに上がる準備はしておけ。

そしてそんな岩佐が安心してボールを投げ込めるのは近藤しか居ない。

ピッチャーを代える時はキャッチャーも交代させるから、

近藤もしっかり準備しておけ、いいな?」

 「は、はいっ!」

「頑張ります!」

 遠川監督の言葉を聞いた岩佐先輩と近藤先輩は、

一転して生き生きした表情になった。

この人は選手をやる気にさせるコツも知ってるんか。

まだ大学を出たばかりやのにやり手やなぁと思っていると、

遠川監督は俺の方をチラッと見やり、ニヤッと笑ってこう言った。

 「ところで正野は、意外とお人よしなんだな?」

 「なっ⁉」

 その言葉に声をうわずらせる俺。

何だか心の奥底をいとも簡単に見破られたみたいで、

何とも恥ずかしいようなこそばゆいような気持ちにさせられた。

この人はあなどれん!

 その遠川監督は、再び真面目な顔になって言った。

 「以上が明日のスターティングメンバーだ。

全員明日に向けてしっかり準備しておくように!」

 「はいっ!」

 俺達が元気よく返事を返すと、

遠川監督は「よし!」と言って隣の下積先生に話を振った。

 「それでは下積先生、顧問として一言お願いします」



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