13 地道な練習の積み重ね
そしてそのミーティングの後、いよいよ本格的に練習がスタートした。
俺が野球を始めてからかれこれ十年近く立つけど、
その中でただひとつわかった事は、野球がうまくなるには、
日々の練習の繰り返ししかないという事や。
毎日目一杯走って、バットを振って、ボールを追っかけて、声を張り上げる。
そして更に遠川監督が言うみたいに心も磨いて、
自分は何をするべきなのかを考えながら練習を積むしか、
野球がうまくなる道はないんや。
という訳で俺達張高野球部員は試合までの二週間、
必死のパッチで遠川監督の猛特訓にくらいついていった。
監督が特訓のメインにしたのは基礎体力作りと守備力向上で、
練習のほとんどは走る事と筋力トレーニング、そしてノックに費やされた。
最初のうちは脱落者が続出したケツ叩きランニングも、
日を追うごとにその数が減っていき、
一番遅い方だった山下先輩や近藤先輩も、
脱落せずに五十周走りきれるまでになった。
そして守備練習の方は、個々のポジションのノックはもちろん、
ダブルプレー、バント処理に応じた守備隊形等、
チームとしての守備練習も、毎日日が暮れるまで行われた。
そのおかげで最初はエラーばかりしていた先輩達も次第にその数が減っていき、
守備の連係もだいぶとうまくいくようになってきた。
そして少ない時間での打撃練習では、
送りバントとゴロを打つ練習を徹底して繰り返し、
走塁練習では、ひとつでも先の塁を狙う走塁、
そして状況に応じた走塁を繰り返し練習した。
どの練習も至って平凡で地味な練習ばっかりやったけど、
これらの特訓は確実に俺らの野球のレベルを引き上げていった。
やっぱりこの人に監督をお願いしたのは正解やったな。
練習は死ぬほどキツかったけど、俺は心からそう思えたのやった。
 




