11 遠川監督
翌日の放課後、俺達張高野球部員はいつもの市営グラウンドに集まっていた。
そして集まった俺達の前に、黒のジャージを着た沙夜さん、
否、遠川監督の姿があった。
ちなみに今日は下積先生は来ていない。
今まで後回しにしていた仕事の山を、今日必死に片づけているのや。
頑張ってください、下積先生。
さてそれはともかく、
昨日の出来事と野球の試合の事は俺が皆に説明済みで、
皆もそれに賛同してくれた。
そんな中遠川監督は、俺達に頭を下げてこう言った。
「このたびは私のイザコザに巻き込むことになってしまい、本当にすまない」
するとキャプテンが軽い口調でこう返す。
「そんなの全然構わないですよ。
むしろ今度の試合で勝てば遠川さんが監督になってくれるというなら、
俺らは喜んで頑張りますよ!なあ皆!」
キャプテンのその掛け声に、俺達は「おうっ!」と声をそろえた。
そしてそれを聞いた遠川監督は再び頭を下げ、
「ありがとう、皆」
と言って頭を下げた。
するとその顔にはさっきとは一転して悪魔のような笑みが浮かんでおり、
その笑みで以てこう続けた。
「それじゃあ試合までの二週間、
文字通り死ぬほどしぼりあげてやるから、覚悟しろよお前ら」
その言葉を聞いた俺達はビクンと背筋に悪寒が走るとともに、
にわかに後悔の念が頭をよぎった。
この人に監督をお願いして、俺達は生きていられるんか?
 




