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ハリガネベイスボウラーズスリイ!  作者: 椎家 友妻
第四話 真剣勝負!
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6 再び遠川さんち

 という訳でその日の夕方、俺と下積先生は再び遠川組の屋敷にやって来た。

 まるで昔のお城のように立派な門の前に立ち、俺は隣の下積先生に話しかけた。

 「あの、また来ちゃいましたけど、ここで引き返すのもアリだと思うんですよね」

 それに対して下積先生。

 「こ、ここまで来て何を言ってるんだ!

僕達は沙夜さんを救う為、そして張高野球部の未来の為にここまで来たんだ!

ここで引き返すなんて絶対にありえない!」

 しかしそう言った下積先生も両足はガクガクと震えていた。

ちょっと押したらその場に尻もちをついてしまいそうな状態や。

こんなんでホンマに大丈夫かいな?

俺の不安は募るばかりやったけど、確かにここまで来て引き返すわけにはいかへん。

 俺は気を持ち直して下積先生に言った。

 「それじゃあ、インターホンを押しますね」

 「ああ!押してくれ!」 

 下積先生の言葉を受け、俺は門の傍らにあるインターホンをポチッと押した。

するとしばらくしてから門の傍らにある通用口の扉がガチャッと開き、

そこから沙夜さんが姿を現した。

今日の沙夜さんはいつもの黒ジャージ姿ではなく、

上品な水色のワンピースを身にまとっており、

いつも後ろでひとつに束ねている長い髪も、今日は自然におろしている。

 その普段とは違う雰囲気に俺も思わずドキッとなったが、

隣の下積先生はそれだけで顔が真っ赤になっていた。

そんな俺達に、沙夜さんは申し訳なさそうな顔で言った。

 「このたびは本当にすみません。

私の個人的なイザコザに巻き込んでしまって・・・・・・」

 それに対して下積先生は、声を上ずらせながらこう返す。

 「いっ、いえっ!どうか気になさらないでください!

僕らは沙夜さんのお役に立ちたくてここに来たんですから!」

 「でも・・・・・・」

 下積先生の言葉に、それでも沙夜さんは浮かない顔をするので、俺は話題を変えた。

 「ところで沙夜さん、今日はいつもと全然違う雰囲気ですね」

 すると沙夜さんはバツが悪そうに頭をかきながら言った。

 「本当はこんなヒラヒラした服は着たくないんだが、

婚約者と会う手前、仕方なく着ているんだ。

自分でもこんな格好、似合わないとわかっているんだが」

 「そ、そんな事ないですよ!」

 沙夜さんの言葉に下積先生が間髪入れずにそう言い、両こぶしを握ってこう続けた。

 「とってもよく似合ってますよ!沙夜さんのイメージにピッタリです!素敵です!」

 「そ、そうですか?あ、ありがとうございます・・・・・・」

 下積先生の真剣な訴えに、沙夜さんは思わず顔を赤くしながらそう言った。

そして自分が言った言葉にハッと気がついた下積先生も、

顔を真っ赤にしてうつむいた。

すると沙夜さんはぎこちない笑みを浮かべて言った。

 「い、いやぁ、お世辞とはいえ、面と向かって言われると照れますね・・・・・・」

 それを聞いた俺は

『今や下積先生!そこで

「そんな事ないですよ!僕は本気で言ってるんです!」

って言うんや!』

と下積先生にテレパシーを送ったが、

そんな下積先生が次に言うた言葉はこれやった。

 「で、ですよね!変な事言ってすみません・・・・・・」

 あかんわこの人。

何でそこでもうひと押しでけへんのや。

昨日はあんなに度胸があったのに、

やっぱり沙夜さんの前やとヘロヘロになってしまうんやなぁ。

 そう思いながらため息をついていると、沙夜さんは踵を返して言った。

 「じゃ、じゃあ屋敷の中へどうぞ。もうすぐあいつ(・・・)もここへ来ると思うんで」

 沙夜さんに(うなが)され、俺と下積先生は再び遠川組の屋敷に足を踏み入れた。

もうすぐ沙夜さんの婚約者もやって来るみたいやけど、

はてさて、どうなる事なら・・・・・・。



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