5 五歳児でもできるアドバイス
「で、今日また遠川さんの所に行くんかいな?」
翌日の昼休み、昨日の出来事を一通り俺から聞いた千田先輩は、
そう言って腕組みをした。
ここは千田先輩の所属する二年五組の教室。
(キャプテンと向井先輩もこのクラスらしい)
親の仕事がら、極道の事にも詳しそうな千田先輩に、俺は相談にやって来たのだ。
この前遠川さんの名前を聞いた時も、心当たりがあるそぶりを見せとったからな。
そして案の定千田先輩は遠川組の事を知っていて、そんな千田先輩に俺はこう続けた。
「はい、何か知らないですけど、
遠川さんが植葉って人に婚約解消をお願いする場に、
俺と下積先生も立ち会わなくちゃならなくなったんです」
「あの人が遠川組のお嬢さんやったとはな。
名前を聞いた時にまさかとは思うたけど」
「遠川組って、大きな組なんですか?」
「大阪では樽山組の次に大きな組や。
それが今度植葉の息子を養子に迎えて植葉組を吸収し、
大阪で最大の勢力になろうとしてるんや」
「な、何か凄い話ですね。
そんな所に俺みたいな高校生が首を突っ込んで大丈夫なんですかね?」
「まあ、下手すりゃ殺されるわな」
「ちょっとぉっ⁉縁起でもない事言わないでくださいよ!」
「植葉組の息子と言えば、『ナニワの無頼漢』として恐れられる男や。
自分の気に入らん事があれば、例え部下でもボコボコにするっていう話やぞ」
「あの、その辺り、千田先輩の力で何とか穏便に済ませられないですか?」
「俺自身は極道の人間とは何のつながりもないからな。
俺が出しゃばったところでどうする事もでけへんわ」
「そ、そんなぁ・・・・・・」
「だから遠川のお嬢さんの運命はお前と下積先生にかかってるんや。
あと、張高野球部の運命も」
「重すぎますよ!俺絶対そのご期待には応えられないですよ!」
「心配すんな!葬儀屋はちゃんと俺が手配しとくから!」
「そんなアフターフォーロー要りませんよ!
むしろ俺が無事に生きて帰れるようなアドバイスをしてください!」
「頑張れ!」
「五歳児でもできるアドバイス!」
ホンマに俺、どうなってしまうんやろう?




