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ハリガネベイスボウラーズスリイ!  作者: 椎家 友妻
第一話 張高野球部、本格始動!
5/82

1 黄色い声援に対する、昌也の紳士的対応

 キィン!

 乾いた金属音とともに、鋭い打球が地を這うように転がって行く。

それをユニフォーム姿の小暮がしっかりとグローブで掴み、

無駄のない動きで一塁に送球。

そしてそのボールは、一塁手の千田(せんだ)(どう)次郎(じろう)先輩の構えるミットにスパァン!

という小気味よい音を立てて突き刺さった。

その後も続けざまに放たれる打球を、小暮は鮮やかな身のこなしでさばいていく。

 今朝は他の運動部が学校のグラウンドを使わないという事で、

俺達張高野球部はここで朝練をしていた。

ちなみに今は俺がバットを持ち、ついこの前入部したばかりの小暮にノックをしている。

その小暮はさっきも言うたように、見事な動きで俺の放つ打球をさばいていく。

流石は全国優勝したチームでレギュラーをはっていただけはある。

あいつがこのチームに入ってくれたっちゅうのは、ホンマに頼もしい限りや。

 そやけども俺は、小暮が入部した事にある不満も感じていた。

それは何かと言うと・・・・・・。

 キィン!

 「きゃーっ♡」

 カァン!

 「小暮君カッコイイ♡」

 コォン!

 「こっち向いてーっ♡」

 近頃何人かの女子生徒が野球部の練習を見学するようになり、

事あるごとにキャーキャー騒ぎおるのや。

しかもその対象は、碇と小暮だけ。

いや、俺は何も、碇と小暮しかキャーキャー言われへん事が不満なんとちゃうで?

一人でもええから俺にキャーキャー言うてくれとかそんなんとちゃうんやで?

そうやなくてさ、やっぱり練習中はしっかり集中してやりたいやん?

それやのに周りでキャーキャー騒がれたら、みんなの気が散るやん?

それって、よくないやん?

なので俺は野球部のためを思い、決してヤキモチとか妬みとかではなく、

極めて紳士的かつ倫理的かつおだやかな口調で、

キャーキャー騒ぐ女子に注意を(うなが)す事にした。

 「キャーキャーうっさいんじゃボケ!練習の邪魔やからどっか行けコラ!」

 すると俺の言い方の何がいけなかったのか、

女子達の顔がいきなり鬼のようになり、俺に凄い罵声(ばせい)を浴びせ始めた。

 「うっさいのはあんたやろ!あんたの方こそどっか行け!」

 「なっ⁉」

 「ウチらはあんたなんか眼中にないんや!」

 「ぐっ・・・・・・」

 「このヘボキャッチャー!」

 「うぬぬ・・・・・・」

 「主人公代われ!」

 「・・・・・・」

 何でそこまで言われなあかんねん。

何か、ホンマにヘコんでしまいそうやぞ。

 するとそこに小暮がやって来て、俺の肩に手を置いて言った。

 「少しくらいいいだろ。あの人達は、野球部の応援に来てくれてるんだから」

 「そ、そやけどこいつら・・・・・・」

 俺が反論しようとすると、今度は碇が俺の近くに駆け寄って来て言った。

 「僕は全然気にならないよ?むしろ応援してくれた方が張り合いがあるし」

 「いや、だからその・・・・・・」

 俺は尚も反論しようとしたけど、その声は女子どもの黄色い声にかきけされた。

 だあああっ!もおおおおっ!



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