14 どうしても受けられない
という訳で俺と下積先生は、またまた坂石バッティングセンターへやって来た。
今日も遠川さんは来てるやろうか?
もう日も暮れかけてるから、帰ってしもうた可能性もあるけど。
と不安に思いながら入口の所まで行くと、
まさに今から帰ろうとする遠川さんにバッタリ出くわした。
「わわっ!遠川さん!」
「え?下積先生、と、正野君?」
俺達を見てちょっと驚いた様子の遠川さんと、
その遠川さんに会って声を上ずらせる下積先生。
この人はいまだに遠川さんの前では緊張するみたいやな。
しかしそんな事には構わず、俺は遠川さんに軽く頭を下げて言った。
「昨日は本当にありがとうございました。
ウチの部の皆も、遠川さんの特訓は凄く為になったと喜んでいました」
「そうか、そう言ってもらえると私も嬉しいよ。
私の方こそ昨日は有意義な時間を過ごさせてもらった。本当にありがとう」
遠川さんは少し照れくさそうにしながらそう言った。
その遠川さんに、俺は真剣な口調で言った。
「それで、あの、改めてお願いなんですけど、
何とかウチの部の監督になってもらえないでしょうか?」
しかしそれを聞いた遠川さんは、申し訳なさそうな顔をしてこう返す。
「すまない、私も高校野球の監督をしてみたいという思いはあるが、
それはできないんだ」
「ど、どうしてですか?もしかして、僕がまるっきり野球の素人だからですか?」
下積先生は取り乱しまくりながらそう言ったが、
遠川さんは慌てて両手を横に振ってこう続けた。
「違いますよ!そうじゃなくて、
私には監督になれない事情があるんです・・・・・・」
そんな遠川さんに、俺は遠慮気味に尋ねる。
「あの、もしよかったら、遠川さんのその事情ってやつを、
教えてはもらえませんか?
もしかしたら、俺達にも何か協力できる事があるかもしれないし」
すると遠川さんはうつむいて口をつぐみ、
しばらく考え込んだ後に頭を上げてこう言った。
「ここじゃあ何だから、場所を変えて話そうか」




